【RS:lyrics】豊饒の海 ―Sirent Sapphire―

昔の楽曲の歌詞を書き残していこう企画の第九弾!

今回は、2013年11月27日に発売した1st Album『My treasure』から『豊饒の海 ―Sirent Sapphire―』をご紹介します。

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この曲のタイトルを見て、「あれ?前にも似たようなタイトルの曲があったよね?」と気づいて下さる方がいたら、正解です。こちらは、3月に紹介した『光の速度 ―Aqua Marine Requiem―』の姉妹曲となります。

私が書いている(永遠に完成しない)近未来SF小説『SiRent』において、作中に登場する音楽家兄妹の楽曲が『光の速度』。いわゆる挿入歌ですね。

一方、『豊饒の海』は、主人公の少年と、ヒロインの少女をイメージして書いた主題歌になります。

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『SiRent』という小説のはじまりは、ひとつの壁掛け時計でした。

小学6年生のころ、親に買ってもらった時計で、見た目はアンティークだけれど、中身は最新式のデジタル時計でした。

何より気に入っていたのは、一時間おきにジブリの名曲のオルゴールアレンジが流れ、時を知らせてくれる仕掛けがついていたこと。収録楽曲は全6曲で、夜8時から朝8時は鳴らない設定でした。

毎日、毎時間聴いているうち、特に心に残ったのが久石譲さんの『海の見える街』でした。『魔女の宅急便』でキキが暮らす街のテーマソングです。

映画の物語に浸りながら一瞬だけ聴くのと、曲だけを味わうのは、まったく違う体験でした。

カチッと時計の針が動く音がして、オルゴールが鳴り始めて、それが『海の見える街』だったら、全ての作業を止めて目を閉じる。

そんな習慣がついて、しばらく経ちました。いつからか、まぶたの裏に、きらきらしたイメージが浮かぶようになりました。

青く輝く海を臨む、レンガの壁に囲まれた庭園。その中央に、真っ赤なバラを手にした少女がいるのです。綺麗な長い金髪をハーフアップにまとめて、リボンのついたロココドレスを着た、青い瞳の美少女です。

『魔女の宅急便』とはまるで関係のない映像ですが、私には、もはやその映像の方がしっくりくるようになってしまいました。

毎日のように、彼女と海を眺めていました。

ある日、ふいに少女が振り返りました。海の反対側には灰色の街がありました。そして、細い道の向こうから、漆黒の髪の少年が歩いてきました。

彼はくたびれた白いシャツを着て、よろよろした足取りで、とても疲れた顔をしていましたが、少女と目が合うと微笑みました。

彼は彼女の隣に辿り着き、二言三言、会話をしました。彼女は初めて笑いました。以降、ふたりは並んで海を眺めるようになりました。

その景色から、私は『海の見える街』という名の物語を書き始めました。

しかし、既にある楽曲のタイトルをそのまま使うのも芸がないかなと思い、笑、内容を煮詰めていくなかで『SiRent』というタイトルに変えました。

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物語の筋書きがまとまりはじめたのは、中学3年生のころでした。同じ時期から、私はこんな鼻歌をうたうようになっていました。

愛し合うためじゃなく
奪い合うためでもなく
ただ、そばにいてくれた
君は 僕の光だった

当時は作曲方法を知らないどころかピアノも弾けませんでした。ただ、このフレーズがぱっと閃いて気に入って、繰り返しうたっていました。

それから何年も経って、オリジナル曲を作り始め、宝石シリーズにしようと決めた時、サファイア=青=海=SiRent、と連想したのは、私にとって当然のことでした。

1番は彼から彼女に宛てて、2番は彼女から彼に宛てて、3番はそれぞれの祈りを込めたデュエットになっています(私は一人なので、仕方なく一人で歌っていますが…本来はデュエット曲なんです)。

では、聴いてくださいませ。

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1.
生まれて初めて触れた世界は
驚くほどに冷たくて
過剰な人との付き合いは
いたずらに 僕を削り取る

明日を求め 彷徨う身体
休めることはできないけれど
諦めようともしないだろう
僕が僕であるかぎり

愛し合うためじゃなく
奪い合うためでもなく
ただ、そばにいてくれた
君は僕の光だった。

2.
生まれて初めて触れた世界は
驚くほどに冷たくて
静寂に溺れるだけの日々は
いたずらに私を削り取る

通りすがりの貴方だけが
眠る私を 呼び覚まし
全ての痛みを引き受けて
導こうとしてくれた

人みなの平和を祈り
目の前の花を愛して
ただ がむしゃらに生きた
貴方に勇気をもらったの

3.
君はどうか幸せになって
貴方も どうか幸せになって
またいつか この海へ
ふたりで 来られるように

人みなの平和を祈り
目の前の花を愛して
己の願いは持たない
貴方に 何か 返したくて

愛し合うためじゃなく
奪い合うためでもなく
ただ、そばにいてくれた
君は僕の光だった。

「ただ、それだけ」が 何より

君は 僕の 光だった……。

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いかがでしたでしょうか?

『SiRent』のあらすじは、よかったら過去記事をごらんくださいませ。

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722字
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