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【SSW06:WORKS】孤独感に寄り添う、哀調を帯びた王道ギターロック

ギター弾き語りシンガーソングライター、久保田 有貴(くぼた・ゆたか)。彼の曲作りへのこだわりと、2020年中にリリースを予定している新たなミニアルバムについて訊いた。

自分らしさで勝負するための曲作り

久保田がオリジナル曲を作り始めたのは、15歳の終わりごろだ。

「中学時代に『バンドをやるならオリジナルが欲しい』ってなって。でも、他のメンバーが『こんな曲を思いついた』って聴かせてくる曲が、ぼくは全然好きじゃなかったんですよ」と苦笑する。

「だから『自分で作ろう』と。そいつらはELLEGARDENとかをリスペクトしてて『疾走感のあるダークな曲がカッコいい』と言ってたから、初めてつくった曲はそういう曲調でした。自分の曲を気に入ってもらって、一緒に演奏したかったんです」。

現在も、コード進行から曲を作ることが多いと言う。

「開放弦が多いコードが好きなので、Aadd9やDadd9をよく使います。メジャーとマイナーの間というか、悲しくも明るくも聞こえる響きに惹かれるんですよ。メジャーセブンス、特にAM7も好きで、そこから曲全体を組み立てることがあります。ただ、好きすぎて手癖みたいに弾いちゃうんで、似た曲調ばかりにならないよう、抑制していますね」。

40曲ほどあるオリジナル曲のなかで、ファンからとりわけ好評を得ている代表曲が『アイディライト』だ。

「ソロでやるようになってから特に、『ミスチル離れしたい』という課題感があって、でも、なかなか脱却できなくて。逆にもう恐れずやってみよう、と考えてつくった曲です。精神的なMr.Childrenのカバーとも言えますね」。

その開き直りが、逆に彼のオリジナリティを引き出したのかもしれない。思い通りにならない現実に立ち向かおうとする歌詞の内容と、思わず口ずさみたくなるサビのメロディが印象的な一曲だ。

ライブは月に2、3回ほど行っている。

「ボイトレの先生にも言われたんですけど、ライブってまとめる作業ですよね。お金をもらって、30分なら30分の舞台を見せる。だけど曲づくりは、自分の世界を広げていく作業。あんまりまとめすぎると、広がらない気がします。もっとライブ数をこなしている人もいるけれど、ぼくの今の実力、スタンスだとこの頻度が精いっぱいです」。

キャッチーなメロディづくりにもこだわりがある。

「ぼくは地声が低いんで、低音を生かした曲を書きたいですね」。

高音を得意とするアーティストが世に増えている昨今、自分らしさで勝負したいと彼は言う。

「ぼくの書く歌詞は、ちょっと暗いというか、寂しさを大事にした内容になっています。毎日が楽しくてハッピーな人たちに向けて歌っているつもりはないんです。それは他の人がやればいいかなって。ぼくと同じように、孤独感を抱えて生きている人に寄り添う曲を作っていけたらと考えています」。

一人でも多くの人が、久保田の歌で救われることを願う。

2nd mini Album『VisionS』について

バンド時代は独学でギターボーカルを担当していた久保田だが、ソロ活動を始めて以降、ボイストレーニングに通っている。

「バンドをやっていた頃、特にプロを目指してない頃だと、爆音に紛れて、あんまり自分の歌が聞こえてなかったんですよね。ソロになって、自分のライブの録画を見て『こんなに歌えてないんだ』とショックを受けました。『へたくそだな』と」。

自分の歌に対する厳しい姿勢は、アルバム制作にも表れている。

18年8月に発売した1st mini Alubum『LANDMARK』は、本来、17年12月のワンマンライブでリリースする予定だった。

「納得いく歌が全然録れなくて、半年以上延期してしまいました」。

本作は、完全に独力で制作した。

「ギターとベースはぼくが演奏して、ドラムは打ち込みで作りました。プロデューサーがいるわけじゃないので、良し悪しを判断するのも自分しかいないんですよね。苦しんで苦しんで、ようやく出せました。お待たせしたお客さんには申し訳なかったです」。

現在もまた、20年2月に予定していた2nd mini Album『VisionS』の発売が保留となっている。

「今回、自分はギターと歌に徹して、他の楽器はワンマンなどを通じて知り合ったミュージシャンの皆さんにレコーディングしてもらいました。あとは歌を録るだけなんですが、やっぱり難しいです」。

日々、録音しては、ダメ出しを繰り返している。

「今回は色んな人の手を借りているだけに、どこに出しても恥ずかしくない音源にしたいんです。それこそミスチルさえ上回りたい。そういう意識でやらないとダメだなって」。

審美眼や判断力が磨かれてきたからこそ、葛藤も強まっている。

「最近、音楽の聴き方が変わってきて、自分の理想の歌が分かるようになったんです」。

外国語のリスニングの勉強を続けると、ある日突然、意識しなくても意味が分かるようになる現象に近いという。

「ぼくはどんなアーティストも、ライブを見ないと実力が分からないと思っています。それは自分にも返ってくることだから、もっともっと上手くなりたい。理想と現実のギャップが苦しいですね」。

ワンマンハンドマイク

「たとえばMr.Children、スピッツ、King Gnu、あいみょんが新譜を出しました、っていうとき、そのラインナップに久保田 有貴がいなきゃいけない。自分にそういうハードルを課しているので、また合格点が出せません。

だけど納期を守るのもプロだよな、って思いもあるので。早めに出せるようにしたいです」。

収録される楽曲は、『夕空の星』や『共犯者』など、ソロ活動を始めてから作った曲がほとんどだ。前作の『LANDMARK』はバンド時代の楽曲のアレンジも多いことを考えると、真の『ソロの久保田 有貴』が聴ける初のCDとも言えるだろう。

自分自身という最大の壁を乗り越えた彼の作品を、ぜひ視聴したい。

text:Momiji,Tsubasa Suzuki edit:Momiji

INFORMATION

2nd mini Album『VisionS』(全8曲・¥2,500)の予約受付中!そのほか各種CD・グッズもOfficial Websiteにて販売中。

2020.07.26(Sun)
Kubota Yutaka Band One Man Live 2020 【仮】
[会場] 西新宿MELODIA Tokyo(中野区弥生町1-9-3 B1F)
※詳細はOfficial Websiteにて発表!

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