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医療経営者に捧ぐ必読書100選が     5分でわかるnote [Vol.004]

[Vol.004] Simplify(シンプリファイ) 
 How the Best Businesses in the World Succeed
リチャード・コッチ/グレッグ・ロックウッド 著 ダイレクト出版

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アップル・グーグル・フォード・イケア・マクドナルド・ウーバー・アマゾン…
今、世界を席巻している企業は、なぜ短期間に成功したのか?


「人生を変える80対20の法則」の著者でもあり、
起業家・投資家としても大成功を納めている著者が、
「成功する企業を見分けるポイントは、シンプル化に成功したか否か?」に
焦点を当てて解説している著書だ。

「成功をもたらす経営戦略の根幹を決めるために、一体何を以て決定すべきか?」に、迷うことなく一石を投じている。
医療分野においても、今後起こりうる市場変化やマネタイズ戦略を練る上では、
必須となろう。

本書は価格戦略についても多く語られており、
「公定価格である保健診療をしている医療機関においては役に立たないんじゃ?」
とお思いかもしれない。
しかし、もはや医療分野においても
セーフティネットありきの価値観に縛られている限り、
将来はないと私は感じる。

今回は、医療経営者にとって役に立ちそうな部分を抜粋して紹介する。
企業分析を「シンプル化」という定性的観点と、
企業成長率を用いて定量的観点で分析された良本であるため、
気になる方はぜひ手にとってみては。


シンプルが有用な最大の理由は何か?

著者であるリチャードコッチは、
ペンシルバニア大学のウォートン・スクールでリベラルアーツ
(古代ギリシャ起源。自由7科:文法・修辞・論理・算術・幾何・天文・音楽を基本とする”人を自由にする学問")を専攻。25歳でBCG(ボストンコンサルティンググループ)に入社。

コンサルティング経験の中から導かれた結論は、
「シンプル化を極めると、高成長かつ高収益(高い利益率)になる」。

このことを証明するために最も有効簡便な方法は?
シンプル化に成功した企業をリサーチすることだった。
著者は以下の法則に従い、数多の企業を分類することで
優良企業を振るい分けした。


STARの法則

著者は、優良企業の定義を明確に示している。 

<スター>
 高成長市場におけるリーダー 
 少なくとも年10%以上の成長を継続している、  
 ニッチ市場でNo.1。利益が多い。
 
<問題児>   
 高成長市場における二番手以下
 
<金のなる木> 
 低成長市場におけるリーダー
 
<負け犬>   
 低成長市場における二番手以下


シンプル化の戦略は、2つしかない


著書では、世に名高い企業の成功実例が詳細に語られている。
その企業を、2つの「シンプル化」という観点で分類している。

①価格のシンプル化 


 価格を半額以下にする=市場が急激に拡大する


②プロポジション(商品価値の提案)のシンプル化

  実用性・有益性・外観の美しさを兼ね備えているために付加価値がつき、
 結果的に市場規模が拡大する
  顧客に”使う喜び”をもたらす

この2つの戦略のいずれか、または同時にか、を徹底して達成すること。
企業の戦略はここにしか存在しないと著者は語る。
この考え方もまた、シンプルで軽妙である。
それぞれのシンプル化における教訓は、何か。


価格のシンプル化の教訓
・製造コストと提供コストの両方が大幅に低いものをつくること。
・顧客が必要性を感じない「金のかかるサービス」を削減すること。
・コストのかからない”サービス"を増やし、代わりにコストがかかる無駄なサービスを削ること。

プロポジションのシンプル化の教訓
・めざすべき最終結果は、顧客主体のシンプルさと有益性を飛躍的に向上させること。
・シンプル化を利用して生産コストが低い商品をつくる、あるいは少なくとも余分なコストがかからないサービスを追加すること。


この2つの方策の妥協点は、
特定の顧客セグメントに納得してもらえるような妥協点を見つけ、
彼らが断然ほしがる商品を提供すること。

「価格のシンプル化」という戦略には、
 商品のつくりやすさに主眼が置かれ、
 驚異的低価格で商品を提供することで大衆市場を創出する。

「プロポジションのシンプル化」という戦略には、
 「使う喜びをもたらす商品」ー「利便性・有益性・芸術性」が高い商品を生む。
 どちらの戦略で成功するにしても、うまく妥協しなくてはならない。

競合他社が真似できない戦略を選び、
それがどうすればうまく遂行できるかを考える。

さて、どう、選ぶの?


様々な事例を通して、シンプル化が有用なことは理解した。
では、自社にどう活かすのか?


自社が得意とする戦略はどちらなのかを理解するために、
会社の適正を問う簡単なテストがついている。ここは著作権上割愛する。

そのエッセンスとしては、
・会社の姿勢ー方針と文化ーに合っているのはどちらか?
・競合他社は、望んでいるポジションをすでに確保しているか?
・そのポジションを奪い取る手立てはあるか?
・選択した戦略を遂行するのに必要なスキルを持った人材がいるか?

といった具合。

単純に、「カギ」は何か?


もっとも端的に、「シンプル化」のカギとなる部分についても触れておこう。

「価格のシンプル化」のカギは、コストのせめて半分を削ること。

 より優れた価格戦略は?
 1.商品設計の見直し
   機能の減算
   商品ラインの縮小
   低コストサービスの付加

 2.ビジネスシステムの見直し
   オートメーション化
   組織化
   セルフサービス
   顧客への直接販売
   よりシンプルな技術の活用

 3.事業規模の拡大
   国際的な事業規模の拡大


「プロポジションのシンプル化」のカギは、
利便性・有益性・芸術性を向上させることによって「使う喜び」をもたらす商品サービスをつくること。

  プロポジションのシンプル化で、成功するには?
  iPhoneを例にとってみる。


  利便性の向上
  ・無駄がない。
  ・直感的で簡単。
  ・スピーディ。
  ・小型で軽量。携帯性に優れている。
  ・購入しやすい。

  有益性の向上
  ・性能を変える
  ・品質を改善する
  ・利便性に悪影響を及ぼさない新機能を追加する
  ・商品ラインを豊富にする
  ・カスタマイズを可能にする

  芸術性の向上
  ・作り手のメッセージを、直接的かつ直感的に伝え、他に余計な説明は一切不要になるような芸術性を目指す。
 

あなたはどう活かすか?

 この著書の優れている点は、
 単にシンプル・イズ・ベスト という解釈だけを
 ねじ込んでいるに過ぎない主張とは違う点だ。

 シンプルにすべき本質とは何かを明確にして、
 その本質ごとに大別している点に、この本の価値がある。
 主な本質は2点。「価格のシンプル化」か、もしくは「プロポジションのシンプル化」か。
 読者の解釈すらシンプルにしているところが、大変洗練されている。

 かつ、事例には、シンプル化に「成功」したものだけでなく、「失敗」したものも含まれている。

 もちろん、業態によってこのメソッドが通用するか否か、その親和性は別れる。
 親和性が高いとされるのは、インターネット・家電・ソフトウェア・小売・メディアといったITを活用しやすい業態。
 一方で、バイオテクノロジー・エネルギー・医薬・軍需・清涼飲料といった、比較的シンプル化が進んでいない産業や業態にも、敢えてシンプル化が応用できると仮定して読み進めると良い。


 あなた自身のビジネスで、振り返って戦略を練ってみよう。
 ここに記されている超優良企業のエッセンスを取り込むことができた時、ビジネスの軸がさらに強固になるだろう。


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