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【Reapra Book連載シリーズ】第1章:次世代起業家における「社会と共創するマスタリー(熟達)」とは

昨年、Reapraで研究と実践の過程や得られた知識をまとめるためのプロジェクトが始まりました。それが"Reapra Book"。

初回記事はこちらです!

この記事では、Reapra Bookの第1章を抜粋して載せています。第1章では、「次世代起業家における社会と共創するマスタリー(熟達)とは」と題し、社会と共創する熟達とは何であるか、共創・熟達、脳といった重要要素について説明しています。また、社会と共創していくにあたって、どのような環境を選び、どのように自己と向き合っていくことが必要なのかや、その重要性についても記述しています。
こちらから全文をご覧いただけます。

はじめに

 本章では、次世代起業家が体現しつづけるべき「社会と共創するマスタリー」について掘り下げてきたいと思います。そのために、「はじめに」では「社会と共創するマスタリー」の定義について触れ、本節以降では、「社会と共創するマスタリー」を実現していくにあたり必要な諸要素を取り上げていきます。

次世代起業家とは

次世代とは5年や10年といった短い時間軸ではなく、数世代に渡る比較的長い時間軸を表します。本書では、未だ不透明な市場において、長きに渡り自ら試行錯誤の学習を続け、社会と広く共創する起業家を「次世代起業家」と呼んでいます。

社会と共創するマスタリー(熟達)とは

社会と共創するマスタリーとは、「社会と共創しながらあるテーマにおいて熟達していく」行動様式のことです。定義としては、「行動様式」であるのでその目的自体は別にあり、上記定義においては「あるテーマ」と表現していますが、それは「Life Mission」とおいています。したがって、この概念の主な構成要素とそれぞれの定義は以下のようになります。

Life Mission:当事者が人生をかけてエネルギーを費やし続けられると信じられる拡張性のあるテーマ
共創:当事者とは異なる価値観や能力を有している他者や他組織と、それぞれの目的を持ちながら、ある同じ目的に向かって共働していくこと
熟達(学習):Life Missionに向かって前進していくために、自我を変容させながら必要な価値観や能力を獲得していくこと

Life Missionの定義にある「拡張性」というワードについても、特徴的な概念として補足説明をしたいと思います。第2章にて詳細を書いていますが、Reapraは熟達していくための重要要素として「環境」を据えています。それは環境として、熟達しようと思っても社会的なニーズが時間とともに低下するような環境下においては、その難易度が高くなってしまうことをReapraは想定しています。逆にいうと、時間とともに社会的なニーズが高まるような環境においては、比較的熟達するための機会がもたらされる傾向にあるのではないかと考えているため、意図的にそのような環境を選択することをReapraは推奨しています。このような意味を包含して、「拡張性」というキーワードを使用しています。

また、熟達の定義にある「自我を変容させながら」という部分も重要な論点であるため解説をしていきます。前提としては、繰り返しになりますが、Reapraが推奨している環境というのは、「時間とともに社会的なニーズが高まるような拡張性のある環境」です。換言すると、現時点ではどのようなニーズが発生するか、どのようにそのニーズを獲得していくかも不透明な環境とも言えます。すなわち、時間軸の変化とともに変数が相対的に増えやすい環境であるがゆえに、当事者自身がその時点において見える範囲やできることを環境の変化とともに広げたり高めたりする必要があるということです。こういった点に鑑み、熟達の定義には「自我を変容させながら」という言葉を内包させています。自我の変容については第3章で詳述しています。

まとめると、「社会と共創するマスタリー」とは、当事者が掲げるLife Missionに向かって他者や他組織と共同し、自我を変容させながら必要な価値観や能力を獲得していく行動様式ともいえると思います。ただ、ここで注意が必要な点があります。それは、「社会と共創するマスタリー」のプロセス、熟達していく過程というのは、Life Missionに向かっていく高揚感と本質的な辛さが同居しているということです。

この点をさらに理解していただくために、Reapraが「Life Mission」をどのように紡ぎ出しているかはぜひReapra Book第1章をご覧ください。

なぜ「社会と共創するマスタリー」を目指すのか

ここまでが、「社会と共創するマスタリー」の概観ですが、最後に「なぜこれを目指す必要があるのか」を述べたいと思います。Reapraは、これを目指すことによって当事者が「長期で持続可能な幸福感」を獲得できると信じているからです。

つまり、自我を変容させながらより幅広い視野や高い能力を獲得したり、異なる価値観や能力を持っている他者や組織と共同することを通じて、社会との接点が増え、持続可能な幸福度が高まると考えています。なぜ、社会との接点が増えることで持続可能な幸福度が高まるかというと、脳科学や人類発展の歴史など様々な観点がありますが、ここでは幸福度やソーシャル・キャピタルの観点から考えていきたいと思います。例えば、令和元年に内閣府が発表した『「満足度・生活の質に関する調査」に関する第1次報告書』では、以下のよう述べています。

「友人との交流頻度」、「頼れる人の人数」、「ボランティアの頻度」など、社会とのつながりを強くしたり、「共助」を強化する属性については、総合主観満足度を増加させる傾向が確認できる。つながりの中でのセーフティーネットが機能していると考えられる。特に、友人との交流頻度や頼れる人の人数別の総合主観満足度を見ると、交流頻度や頼れる人数の多寡によって満足度に大きく差が出ている。社会とのつながりや共助を担う環境と満足度との関係性が高いことが伺える。

もちろん、Reapraとしては「社会と共創するマスタリー」をしなければ、絶対的に幸福度やソーシャル・キャピタルが低減すると考えているわけではありません。この点については仮説や可能性の域をでることはないですが、過去の人類の歴史的・社会的な背景やそこで生み出された教育制度、Reapra自身が向き合っている産業や起業家の変容など、多くの変数に向き合いたいという強い意思のもとを通じて実践をし続けてきた結果、考えられているものなので今後変わっていく可能性も十分にありえます。

ただ、不変の部分があるとすると、今後私たちが「研究と実践を通じて、産業を創造することで社会に貢献する」というMissionのもと、個々人やそれぞれの組織の「長期で持続可能な幸福」を目指し、拡張性のある環境に身をおいている多くの起業家やインターナルメンバーとともに「社会と共創するマスタリー」の研究と実践を通じて、よりよい未来のあり方を模索し創り続けるということだと思います。

参考文献
内閣府,「満足度・生活の質に関する調査」に関する第1次報告書,令和元年
https://www5.cao.go.jp/keizai2/manzoku/pdf/report01.


執筆者:小堀雄人(はじめに・脳節)、森崇志(脳節)、三浦豪(感情・学習節)、浅倉真美(感情・学習節)、田中直樹(感情・学習節)、本田智大(学習節)、沢津橋紀洋(脳節)

このあとReapra Book第1章では、社会と共創する熟達における脳の活用や感情の活用、また一般的な学習とは異なる「社会と共創する熟達のための学習方法」などが記載されています。

Reapra Bookはこちらから全文ご覧いただけます。フィードバックフォームもありますので、ぜひご感想、ご意見をいただけると嬉しいです。




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