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【Reapra Book連載シリーズ】第4章:産業創造のための社会と共創する次世代起業家における熟達の実践

昨年、Reapraで研究と実践の過程や得られた知識をまとめるためのプロジェクトが始まりました。それが"Reapra Book"。

Reapra Book連載シリーズも第4回目となりました。過去の記事はこちらからご覧いただけますので、ぜひご覧ください。


第4章では第3章までの内容が、現在のReapraにおいてどのように実践されているのかを記述しています。こちらから全文をご覧いただけます。

具体的な内容に入る前に、改めて第3章までの流れを振り返りをしていきます。

第3章までの振り返り

第1章では、「社会と共創するマスタリー(熟達)」という概念について説明をした上で、脳と感情という我々人間に生物学的に埋め込まれている特性についての理解を深め、それらの熟達に向けた活用方法や経験学習サイクルを用いた学習方法を詳述しました。脳や感情は、一見起業とは関わりが遠いように感じるかもしれませんが、私たちが人間である以上、意思決定に無意識のうちに大きな影響を与えています。大事な部分なので、ぜひ何度も読んでみていただきたいです。

その後の第2章・第3章は、私たちの行動や起業家が生み出す事業には「環境と自我の相互作用」が大きな影響を与えているという理解のもと、第2章では環境について、第3章では自我について記述しています。第2章の環境については、新しい産業の創造を目指す次世代起業家が、どのようなPBFを選ぶことが重要なのかについて記述しました。また、第3章では成人発達理論などを用いて自我と向き合うことの重要性や起業家にとっての効用について説明をしてきました。

これまでの章では、概念的な内容が多かったので、「では実際にどのように起業家は産業を創造していくのか」、「言うは易しで実際に実践していくのは難しいのではないか」、といった疑問をもたれた方も多いのではないでしょうか。

本章では、そういった疑問に答えるべく、これまでReapraが起業家支援や自分たち自身の実践から学んできた具体的な内容を盛り込んでいます。(第1版では、全体のバランスと期日の関係で多くの実践的な部分を泣く泣くAPPENDIXに回しているので、そちらも合わせてお読みいただきたいです。) 

前提として、本章は2020年12月時点で記載したものとなっております。当時のReapraの投資先の多くが、事業の成長段階において創業期を指すゼロイチフェーズであり、それにより実践ケースに偏りが存在しています。Reapraが標榜するのは産業創造全体の研究実践ですが、現時点での限界を踏まえた上で読み進めていただければ幸いです。

それでは引き続き第4章もお楽しみください。

現在Reapraが注力しているゼロイチフェーズにおける実践の枠組み

Reapraが標榜するのは産業創造の栄枯盛衰を対象とした研究実践であるが、現在は主にゼロイチフェーズ、つまり事業の成長段階においての創業期に重心があります。

本節では、Reapraが実践を通して作り上げてきた、社会と共創する次世代起業家がゼロイチフェーズにおいて実践するための枠組みの概観を示します。

前提として、本来すべての人が社会と共創するマスタリーを歩むことができると考えています。 しかし、現状では社会と共創するマスタリーのレディネスがあるかどうかで判断しています。(これは現状のReapraのケイパビリティに寄るところが大きいです。)

レディネスが確認できたら、自身の囚われの起源がどこにあるのかをIFD(インテンシブファンデーションデザイン)により明らかにしつつ、それがどのようにアップデートされてきたのかを整理していきます。囚われがそれまでの人生を通じて脈々とアップデートされてきていること、囚われが自身のエネルギー源になっていることがつまびらかになるでしょう。IFDの最後には、エネルギー源を社会的なアジェンダに変換をし、人生を通して成したいこと・ありたい姿をLife Missionとして紡ぎ出します。

ファウンデーションデザイン(以下、FD):個人が人生の長期に渡り学習し続ける目的や目標を紡ぎ出し、そこから派生し関連する組織や特定業務の目的や目標を設定し、それらと現状の差分を明らかにすることで、個人が社会と共創し学習しつづけるための土台を設計・再構築する取り組み
※ 長い時間軸をとって実施されるFDに対し、新入社員や投資先起業家、その候補者を対象に短期間で負荷をかけてインテンシブ(集中的)に行うのものをIFDと呼んでいます。

次に、Life Missionと繋げて、競争が少なく社会と共創する熟達に向けた初期の学習が行いやすい環境(PBF)を選ぶ。 初期の学習は、現在の姿とありたい姿の差分を埋めるための小さな行動を、高い目標を掲げながら積み重ねていくことで経験学習サイクルを回していくことになります。

この一連の流れを伴走者と共に歩むのが実践の枠組みです。

社会と共創するマスタリーへのエントリー

ここまで社会と共創する熟達について、それを促進する環境選びと、自我の向き合いの関係性について言及してきました。ここからは社会と共創するマスタリーを進めるにあたり、どのような実践から行っていくのが望ましいのか、これまでのReapraの経験を踏まえて記載します。

社会と共創するマスタリーを進めるには、自らの内発的動機に基づきマスタリーテーマを紡ぎ出し、長期のなりたい姿に対して、様々な外部環境(社会)や自我と向き合いながら、近づこうとする学習が必要となります。学習のあり方は既に前節までで言及のとおりですが、教授主義でなく経験学習型で学び続けることへの動機、そのためには自分自身のこれまでの学習態度に疑いの眼を向けアンラーニングを繰り返すことへの向き合いが必要となります。こういった社会と共創するマスタリーに対して前向きに学習しようとする意欲を涵養することがまず第一歩となると考えています。

前提として社会と共創するマスタリーについては、誰しも動機を持って目指すことができる概念であると考えています。しかし、個人としての動機やレディネスによってすぐに向き合える人、まだ時間がかかる人、場合によっては中長期には別の道をとるのが望ましい人がいると考えており、本節ではこのあと社会と共創するマスタリーを歩む上でのエントリーについて述べていきます。


執筆者:山田晃義(ストレッチオペレーション)、三浦豪(ファウンデーションデザイン、ストレッチオペレーション)、小堀雄人(ストレッチオペレーション)、日比朝子(ファウンデーションデザイン、ストレッチオペレーション)、柳沢美竣(ファウンデーション、ストレッチオペレーション)、松田竹生(ファウンデーションデザイン)、岡内雄紀(ファウンデーションデザイン、社会と共創するマスタリーへのエントリー)、渡辺康彦(社会と共創するマスタリーへのエントリー)、本田智大(ストレッチオペレーション)、佐藤亮輔(ストレッチオペレーション)、並木大晟(ストレッチオペレーション)、小村来世(ストレッチオペレーション)曽 翰洋(ファウンデーションデザイン)、戸澤友宏(ファウンデーションデザイン)

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この後、社会と共創するマスタリーを歩む道のりを、①エントリー、②FDによる自己理解とライフミッションの紡ぎ出し、③PBFの選定とエントリービジネスの構築 、④SO(ストレッチオペレーション:成り行きでは辿り着かないが叶えられたら喜ばしい高い目標を掲げ、その実現に向けて自己及び組織の変容に向き合い試行錯誤する学習様式)の実践 というステップに区切り説明をしていきます。前述の通り、Reapraの実践がゼロイチフェーズに偏りがあることを踏まえて、最後の第7節ではReapraの研究実践のこれからについて触れています。

Reapra Bookはこちらから全文ご覧いただけます。フィードバックフォームもありますので、ぜひご感想、ご意見をいただけると嬉しいです。



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