2023年観劇総括~メディアミックスの新作歌舞伎が面白かった話と東宝ミュージカルS席ガチャに疲れた話~
はじめに
・アミューズプラス会員(以下、「アミュプラ」)
・前年2022年は大型ミュージカル中心に月1の観劇
というスペックの私が観た2023年の舞台作品の総括です。
なお2023年は
・ミュージカル10回
・歌舞伎19.5回(FFX歌舞伎は昼夜通しで1カウント)
・宝塚、ストプレ2回 という結果に。歌舞伎増え過ぎ。
「日本発の新作、良かったな」と
「メディアミックス歌舞伎面白かったな」ということに尽きます。
もし今後皆さんの好きな作品が歌舞伎の題材に選ばれた際は
是非ご覧になって頂きたいな、と思った1年でした。
2023年は歌舞伎に心を動かされた。
話題に挙げる作品は
『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』を
はじめとするゲーム・アニメを原作にした新作歌舞伎。
『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』
『a new musical「ヴァグラント」』 です。
1:休憩込9時間の超大作『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』
チケット最速先行の情報が公開された際、知人のグループラインに
「9時間32,000円!FFX歌舞伎行こうぜ!」とノリと勢いで勧誘。
私含む3人分のSS席を申し込むと…
ご用意された席がセンターブロック最前列という神の采配。
人生初の歌舞伎で人生初の最前列を引き当てる。
※最速先行で申し込んだ方から前方の座席から割り当てられていた模様。
FFX歌舞伎がアジアモチーフとはいえ歌舞伎化?
上演時間6時間で尺足りる?
でも拘束時間9時間以上は長過ぎだよ?(矛盾) など
懸念点はいくらでもありましたが、1回目の休憩の時点で
「近い」「迫力がヤバい」「めっちゃ動く」「音楽カッコイイ」など
我々の語彙力は消え去っておりました。
興奮しすぎて帰ってからも寝付けませんでした、小学生か。
コロナ禍をきっかけに尾上菊之助さんが発案・企画した演目ですが
FFXユーザーの多くが「原作リスペクトが凄い」と
熱くなるほどの原作リスペクト度の高さ。
そしてただの完全再現に留まらないアレンジや再構成がありました。
特に後半。祈りの歌の縦読みとかラストバトルとか鳥肌モノです。
そもそもゲームの歌舞伎化なので完全再現は出来ないのですが、
だからこそ、FFXの魅力が抽出されていたと思いました。
伝統芸能の威信がかかっているからこそ、変な作品は生まれないのだな、と
後に見た『新作歌舞伎 刀剣乱舞』『新作歌舞伎 流白浪燦星』からも感じ取った次第でした。
あとは作品本編とは別のところですが
・最速先行で申し込んだ人から良い席が割り当てられる
・席種がきちんと分かれている
・長時間着席を考慮してクッションを新設する
という昨今の日本の舞台作品においては珍しい(?)
観客への配慮がとても沁みた次第でした。
昼夜通し公演なのでチケット代が高く見えますが
舞台作品としては座席区分も良心的で高い席はグッズ付き。
この経験を経たことで私の2023年の観劇が大きく左右されることに。
具体的には、のちの『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』での見方に大きく影響しました。
劇場に【非日常感】を求める身としては
カーテンコールで演者の写真撮影が出来たことも、最前列で1日中観劇したことも、とても良い思い出になりました。
今まで歌舞伎を一度も観たことが無かったのですが
FFX歌舞伎は最終的に3.5回、以降、新作古典含む歌舞伎は16回ほど観に行くことに。
なおトップ画像は会場限定の九谷焼が欲しくて
会場一番乗りした際の会場外観です。幟すら立ってない。
2:東宝ミュ史上最高値『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』
最初に言っておきます、あんまり楽しいことは書いておりません。
東宝ミュージカル最高値ということで、あらゆる見え方がマイナスに作用してしまったという話です。
いまX上で舞台界隈を賑わせている
「#舞台が見えなすぎる客席選手権」にもエントリーされている
東宝ミュージカル史上最高値のS席土日祝17,500円のMR!です。
なお2024年の再演では18,500円に進化。
東宝の舞台作品におけるチケット販売に関しては
キャスト先行において端の席にご用意されがち。
中央でも壁際でも同じS席同じ17,500円。
だいたいは人気公演なのでFC先行ですら観に行けない公演もあり、
最速のFC先行で良い席ご用意して欲しいとは思ってはおりませんでした。
しかしそれも過去の話。
サイドブロックから見たMR!に17,500円の価値があるとは思えなかったのです。
おそらく中央ブロックの前方~中央や2階席前方で見たら価値相応だったのかもしれません。
ですが、海外の人気演目だろうが、衣装や舞台装置、訳詞が豪華だろうが、
中央からの鑑賞を前提にした舞台を端から見ても100%の価値にはならなかった。サイドブロックの中央寄りですらこれなので、壁側の方の心中お察しいたします。
サイドと中央を同じ抽選枠に混ぜるな。
そして海外演目に対する考え方が変わったターニングポイントでもありました。
本場で高評価を受けている演目、ある程度の質は担保されていました。
それを超える感動が無かったのも大きいところでした。
それなりに面白いのは、それはそう。そうでないと困る。
しかし、それもMR!に始まったことではないはずです。
これまでの帝国劇場でも同じようなことを思っていたのかもしれません。
それが「東宝ミュージカル最高値」という前振りにより
全てが今までの比にはならないほど期待値のハードルが高くなってしまった。
そして私にはあらゆるハードルを超えられるほどのものを受け取れなかった次第でした。
カーテンコール撮影OKなのは良いのですが
会場内の写真だけ撮れてもそんなに面白みはなかったなぁ…
この辺も海外作品の権利の壁を東宝では超えられなかったんだなぁと思ってしまった。
3:日本発の完全新作ミュージカル『a new musical「ヴァグラント」』
ポルノグラフティの新藤晴一さんが企画・原案・音楽を担った
日本発の完全新作ミュージカル。
作品発表された際に知ったのですが、ポルノグラフティ、アミューズ所属。
アミューズによる完全新作ミュージカルということで
アミュプラ会員(プレミアム)として鑑賞。
ツボに刺さった訳ではありませんでしたが
もっとこんなミュージカルが増えて欲しいなぁと思いました。
舞台は大正時代の炭鉱。ちょっとファンタジーあり。
労働問題や、『マレビト』と呼ばれる人たちへの差別などがテーマ。
ロックナンバーもありつつも、意外なまでの王道ミュージカルナンバー。
そこが面白くもあり、もっと期待を裏切るような変化球も欲しかったな、と思ったポイントでもありました。
オーバーチュアがギターソロなのは晴一さんならでは。
ですが日本が舞台のオジリナル原作ミュージカルって凄い珍しい気がするのです。
しかも日本のクリエイターで構成された作品は尚更。
インタビュー等によると、『ヴァグラント』の企画~公演まで約3年ほどかかったとのこと。
なおその前に観ていた『FFX歌舞伎』『新作歌舞伎 刀剣乱舞』も企画~公演まで約3年程度とのこと。
海外演目を持ってくるにも版権やら何やらの調整があるので、それが容易とも思っておりません。
ただ、話も曲も事前に分かりますし、ある程度クオリティのある作品を持ってくるので
出来もそれはある程度は担保されている。
これまで海外ミュージカルを中心に観てきた私ですが、
2023年は新作歌舞伎を中心に新作の舞台を見ることに。
新作から得られない楽しさってあるんだよなぁと思った次第でした。
じゃあストレートプレイ観たらいいじゃん!って思いますよね?
ストプレは日本発の作品多いですし、私も思うんですよ?
過去観た作品、全部すっごい良い席だったんですけどビックリするくらい刺さらなくて…
歌舞伎にしろミュージカルにしろ、歌なり踊りなり芝居以外の要素が私には必要でした。
『ヴァグラント』というか、ミュージカルが出来上がるまでの過程が
非常に面白い。こういうのを見られるのも新作ならでは。
晴一さんのブログやパンフレットの制作秘話も面白かったです。
まとめ:新作っていいな
「日本発の新作、良かったな」の何が良かったのか。
前例のない挑戦、そこから溢れるパワーを舞台を通じて感じられたのが良かったです。
特にゲームやアニメなどを原作としたメディアミックスの歌舞伎については
「歌舞伎も新規客を獲得するのに必死なんだね」と思われるのかもしれません。
私も観ていなかったら、ずっとそう思っていた気がします。
ですが、どんな方法でも新しいお客さんの来ないジャンルに未来はないのかな、と。
常に新しいことを続ける歌舞伎だからこそ、永く続いて伝統になっているのだなと身を以て体感した1年でした。
アニメゲーム原作の歌舞伎が増えても古典が淘汰される訳でもなし、
新作にも古典にもそれぞれの良さがあって共存すればいいだけですし。
選択肢が増えることはいいこと。
歌舞伎、座席指定で3階席なら6,000円以内で買えるのもの良い。
単純にミュージカルのS席ガチャに疲れてしまったのもあるのかもしれない。
歌舞伎は演目と配役発表が遅いのと、客席マナーの低さで客席ガチャが発生しがちなのがネックですが。
客席は、こう、歌舞伎座に来る見物客の方がいる限りは諦念ですかね…
おまけ:ただの自慢です
歌舞伎は基本的に先着の座席指定でチケットを購入するのですが
抽選時の運がやたらと良い。1年で2回も最前列を当てる結果に。
そして週1で通った『極付印度伝 マハーバーラタ戦記』では…
歌舞伎の神様有難うございました。
来年もよろしくお願いいたします!
たまにしかnoteにまとめないのですが
直近の記事が『流浪の月』の映画に対する呪詛で笑いました。
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