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不動産一括査定の問題

不動産を売りたいな、と考えたとき、まずは不動産屋に行くという方は少ないと思いますし、いくら位なんだろうという興味本位でお店に行くのは抵抗がありますよね。金額次第では、売却を検討したいという方も多いはずです。
そんな方はグーグルで、「不動産 売却」なんて検索することになるはずなのですが、そうしているといつの間にか、色んなサイトで「マンションを1円でも高く売る方法」とか、「少しでも高く早期に売却」なんてワードの広告が出るようになるんです。

こうした広告はもちろん、「不動産一括査定サイト」です。査定は一切費用はかかりません!という事で、利用された事のある方も多いのではないでしょうか?

私もかつて一括サイトに不動産屋として登録していました。その時に感じたこのビジネスモデルの説明と、その実際のところをお伝えしたいと思います。

不動産査定一括サイトのビジネスモデル

色々な業界でも一括査定サイトはありますよね。一回の査定依頼で、複数社から見積りが取れる事から、その利便性に一気に浸透し、今では当たり前の世界です。
では、不動産一括査定のビジネスモデルはどうなっているのでしょうか?

簡単に言うと、一括査定サイトの真のお客様は「不動産屋」です。

ここで少し話はそれますが、全国に不動産屋は何社あるのでしょうか?
少し調べただけで、直ぐに答えがありました。

何と、全国に13万社あるそうです。そのうち、10.9万社が従業者5人未満の小さな会社なんですね。
では、全国どこでもあるコンビニエンスストアは何店舗位あるのでしょうか。
これも少し調べたらわかりました。約5.5万店舗だそうです。。。。
※一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会の調べの為、大手の合計数と思われます。

不動産屋さん沢山ありすぎる問題

そうです、不動産屋さんはコンビニの店舗数よりも多いんですね!

ではなぜ、不動産屋はこんなにも数があるのでしょうか。これは、独立しやすい業種であるが理由です。

多くの中小企業は、バリバリの営業マンが更なる上昇を目指して独立して社長になるパターンが多いです。不動産仲介の場合、自社で物件の在庫を抱える事はないので在庫リスクも少なく、初期投資を低く抑えた開業が出来るからなんです。こういった独立をする方は、がんばって営業をして得た仲介手数料を会社に全部収めて、その中から一部をインセンティブという形で給与支給されていた訳ですから、それを自分で全部取っていきたい!と思うのは、必然だと思います。
もちろん、会社の看板があったからこそ、実績が上がっていた可能性もあるのですが、大半は営業力で突破してきた方達なんですね。

話はそれましたが、こうして全国に大量にある不動産会社は、必然的にお客様の取り合いになるでしょう。
しかも今の時代、ネット集客が当たり前。みんな必死で集客に力を入れるわけです。

ここで登場するのが、不動産一括査定サイトです。

不動産業者は、物件を売りたがっている人を常に探しています。夜な夜な、ビラ撒きしてがんばっている営業マンも多いでしょう。理由は簡単です。仕事を取りたいからです。
そんな営業マンたちが喉から手が出るくらい欲しい情報は、物件を売りたがっている人。この大量にある不動産会社をターゲットとしたビジネスモデルが、一括査定サイトなんですね。

売りたい人がサイトに登録します。すると、その情報は、加盟不動産会社に一斉送信され、それぞれの会社は独自に営業をかけていく流れです。

この一括査定サイトは、不動産会社に送客を一件あたり1万円位で販売しているんですね。

どのサイトもSEOをがんばっていて、広告はもちろんのこと、不動産売却に関わる様々な情報を発信して、売りたい人を集客しているという事になります。

一括査定の問題点

私は一括査定を辞めました。詳細は割愛しますが、このビジネスモデルを考えた人は凄いなと思う反面、これは健全なのか・・・と考えちゃったからですね。

私の考える一括査定の問題点は、一言で表すと、お客様本位の仕組みではないと思っているからです。

やっぱり複数社から査定を貰うというのは、一定の安心感があるはずですが、これは危険と思っています。
なぜならば、前述した通り、不動産会社は査定依頼を一件1万円とかで購入しています。それはもう必死です。
査定依頼を行った瞬間、5~6社からの鬼電にびっくりする方が多いと聞きます。そうです、必死なんです。

私が以前加入していた一括サイトは、お客様は不動産会社なもんですから、サイト側は、不動産会社向けに「どうやったら査定が取れるのか」、「訪問査定につなげる方法は?」などのノウハウをレクチャーしていて、自社を末永く使ってもらうようにがんばっています。
その中にこんな鉄則がありました。

「とにかく誰よりも早く査定依頼者に電話をすること」

想像してください。百戦錬磨の営業の猛者たちから、鬼電の嵐です。
もちろんその方々は悪い事をしている訳でもないのですが、誰よりも早く電話をする、という事は、物件情報をしっかりと確認する前に電話してきます。なんなら、書いてある物件情報を確認の為と称して、少しでもコミニュケーションを取ろうとし、そして何とかしてご自宅へ行く約束を取り付けようとするのです(訪問査定)というやつですね。
これを嫌がる方は、最初から机上査定という形で依頼をするわけですが、それでも電話はかかってくるでしょう。人によっては、びっくりして、査定依頼をキャンセルされる方も多くいる印象でした。

この仕組み、本当にお客様本位なんでしょうか。

何度も言いますが、不動産屋さんは数万円払っている訳ですから、必死です。

媒介契約獲得のための不動産会社必死問題

次にこのビジネスモデルの問題点と思うところが、
「こんなに高く売れた!」とか「空き屋がこんなにも高く売れるかも」みたいな煽りワードだと思っています。

不動産のうち、特にマンションに関しては、おおよその相場は決まっています。それは、過去に販売された価格や、その時点で販売中の他の部屋の価格が相場になってきますよね。
その相場を無視した金額設定をした場合、そのマンションを買いたいと思っている購入者は、高額設定のお部屋を購入するでしょうか?
する訳ないですよね。
しかし、どこよりも高く!を信じて査定した方からすれば、査定を一番高くだした会社を選ぶというのは自然の流れですよね。

はっきり言って、一番高く査定を付けるなんて、誰でも出来るんです。超簡単なんです。しかし、しっかりとした根拠が無いにも関わらず、この高額査定だけを見て、売却を任せる不動産会社を選ぶという行為は後に大きな問題につながっていきます。

それは、ずっと売れないんです

当然、他社よりも飛びぬけて高い金額を設定しているのですから、この人は見るめあるな~とか思っちゃうんですけど、実はそれ、不動産会社が売る人をうちで任せてください!の契約、媒介契約を獲得するのが目的です。

ずっと売れないままだと、依頼者は「いつになったら売れるのか!」と思います。しかし不動産会社は、査定時とは打って変わって、

「この金額では難しいかもしれません。そろそろ値下げをされてみてはいかがでしょうか?」

こういう流れになるんですね。私の所には、こうした業者の対応に不誠実さを感じ、再査定依頼を受ける事がありますが、こうした方の多くは、一括査定で一番高い査定額を付けた方を選んだ人達です。

理解したうえで利用する事が大切

ここまで不動産査定一括サイトの問題点を長々と書いてきましたが、正直、利用者ファーストとは言えませんが、自宅に居ながら簡単に査定が出来るというのは、忙しい方にとっては大きなメリットですね。

業者側の私からすると、自分の首を絞めるような投稿となりますが、少しでも賢く利用してもらいたいと考えています。そこで、次の点を意識してトライしてみてはいかがでしょうか?

  1.  査定をお願いする業者は3社程度でいいのでは?電話はNGで。

  2.  マンションであれば、おおよそ価格は変わらないはずなので、価格ではなく人で選んでみては?

  3.  戸建や土地の場合、現地確認は必須なので、まずは机上査定で価格を知 り、メールの文面などで誠実そうな方だけ選び、その方にコンタクトをとってみて、具体的な話をされてみては?

実際には、営業マンの力によって売却価格は多少変わってきます。しかし、そのほとんどが物件次第なのですから、それに携わる方の人柄や誠実さを重視した選び方で進めてもらいたいですね。

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