J-REITの暴落に思うこと

初めての記事が何やら不穏なタイトルです。
さて、低ボラティリティ故に「REITは債券」と揶揄されていたJ-REITが2月から急落しています。
東証REIT指数は2月中旬には2,250を付けて「債券なら利回り3.5%でも高利回りや!」との声に押され買われ続けたREITだったのに、ここに来てエクイティとしての顔をバリバリ出しています。東証REIT指数の日次騰落率▲10.5%というのは歴代2番目です。日本株より下がっとるやんけ。一位はニューシティの破綻騒ぎの頃なので、「今そんな状況にあったっけ?」と。当時に比べてLTVも比較的浅いですし、イカれたフォワードコミットもない。
じゃあ金曜日なんで下がったの?と言われると、「投げ売り」が原因なんですよ。日経新聞にも記事が出てましたが、EPRA/NAREIT global連動の外人の投げ売りをキッカケに、国内のインデックス勢が減損回避なのか、エラい人から今すぐ売れと言われたのか、売りが売りを呼ぶ展開。インデックスマンセーと唱え続けてる人はもう発言してもらいたくない。
東証REIT指数は平均NAV倍率が1倍を割る状況です。つまり「今の鑑定価格よりも実際は不動産の価格って低いんじゃね?」と市場からは思われてる状態です。でもちょっと待ってほしい。
「不動産を取り巻く状況ってそんなに悪いんだっけ?」というのを100%の私見とポジショントークでセクター別に振り返ってみたいと思います。これを参考にして何らかの投資行動を起こされても、当方一切責任を取りません。悪いと思ってる順です。

・ホテル

みんな言ってるけどもうジリ貧。どの銘柄が良いとか悪いとかじゃない。今出てる数字はコロナの影響前。今月下旬に出る月次開示やインバウンドの集計からようやく影響のわかる数字が出てくる。コロナだけじゃなくて需給のバランスが崩れてしまったことも要因としては強い。去年ぐらいから関西は供給多いと言われてたし、年末ぐらいに「よく考えてみたら東京も供給過多じゃね?」と言う人もいたぐらい。
ただ、アクティブのマネージャーはコロナの影響がここまで出ると予想できなくても、なんとなく1月末の春節から怪しそうという雰囲気は掴めてたのかなと。その証拠に、1月のREITのアクティブファンドの月次レポート見てみると、今まで上位10銘柄にINVやJHRの名前が出てくることがあったけど、1月末時点では名前が出てこない。さすがにみんなunder weightですよね。
valuationとしては変動賃料ゼロどころか分配金の下方修正まで織り込んでるのが今のマーケット。しょうがない。オリンピックの中止まで見えてきてるから不確実要素が多すぎる。INVの利回り10%超えは確かに魅力的に写るけど、気合入れて買おうぜ!とは言いにくい。でもいちごホテルとか諦めずにオペレーターの変更で賃料増額やってる。来週の決算発表でどのようなガイダンスがあるかに注目。もうそろそろ許してあげて!とは思ってるけど、正直ホテルだけはファンダメンタルズがぶっ壊れちゃってるから。しばらくボラタイルな状況は続くと思います。

・商業

ピカピカではないけど言うほど悪いっけ?
でもアパレル退去後のリテナントはキツそうよね。あと流行りかけてた飲食ビル。GEMSとかFUNDESとか。コト消費型のテナントも自粛ムードの長引きはキツイ。え?「全部悪いやんけ!」って?
でも食品スーパーとかは自粛ムードとか関係なく伸びてる。経産省の統計ではスーパー、ドラッグストアの伸びが顕著。ケネ商の戦略は間違ってなかったんや!あとは商業REITはホテルと比べて変動賃料の比率は著しく低いですからね。おまけにイオンリートは100%スポンサーのイオンからの固定賃料。商業全部売りは間違ってる判断かなと思います。
地方GMSとかは苦境が続くのかもしれないけど、日本の商業REITはキツイ中でも工夫してやってると思うよ?バンバンvaluationが切り上がっていく未来は想像できないけど、そこまで悲観的にならなくてもと思います。

・オフィス

日経新聞に「オフィスはこれからテレワークの発展で床需要が減る!」と書かれてましたね。有り得なくはないけど、急速に進むとは思えないというのが個人的な意見です。
また、多分これから「2020年は大量の床供給があり、コロナショックの影響でオフィス市況は悪化する」「オリンピック中止で不動産価格は下落!」という論調のゴシップ記事みたいなのが並ぶかもしれません。個人的には2020年の供給は短期的にはオフィス市況に影響を与えないと思ってます。
まず、供給については、2020年の新規供給についてはもう8割方内定してるとか。だから新規供給については今のところ心配することはない。キャンセルとか出てきたら話は別ですけど。
しかもオフィスは供給面ばかり強調されがちですが、滅失床面積はハッキリしたデータがありません。供給に対して再開発とかで滅失する床面積もボチボチあるんですよ。故に空室率が5%を超えて崩壊するってのはちょっと悲観的すぎるのではと思います。仮に3%まで上がっても、まだ低い空室率と言えます。でも3%になったら「空室率が倍になった!不動産崩壊!」みたいなゴシップ記事が出てくるんだろうな…
テレワークは多分効果とか含めて一年ぐらいかけて総括するんじゃないかなと。でもぶっちゃけ自宅で仕事で捗らなくない?コワーキングスペースはチャンスだけど、weworkみたいな充実した共用設備は逆に感染拡大のリスクあるから、その辺りを考えた設計が必要になるよね。さて、需給としては引き続き全国的に締まってると思うけど、今までみたいに内部成長だけで分配金+3%です!みたいな景気の良い宣言ができなくなりそうなのもまた事実。そもそもここまでオフィスREITが好調だったのは就業者数の伸びとコワーキングが床を消費してたから。就業者数の伸びが早めにピークアウトしそうだから、成長ストーリーも当然減速。あれ、でもお家賃下がるんだっけ?そこまでの話だっけ?ってのが今の現状。今までみたいに高いvaluationが正当化されることはなくなったけど、別に今のところ需給は大丈夫そう。むしろ2023年の麻布台とか虎ノ門とかの再開発以降が怖い。そこまでに働く環境がどう変わるか、就業者数はどう伸びていくか、コワーキングスペースがどう根付いていくかを見極める期間になるんじゃないかなと。

・物流

なんとかまだNAVプレミアムが残ってるセクターです。長期固定契約、定期借家契約主体だから少なくともREITの分配金が下方修正されるリスクは少なそう。中国の生産が止まってサプライチェーンが壊れるから物流セクターもやられる!って叫んでる人がいるけど、だから物流業者が解約祭りになるとは考えづらい。物流企業の賃料の負担割合って小さいし、そもそも先進物流施設のストックはそれほど多くない。むしろ物流は効率化が求められてるから、ECとか関係なくまだいけそう。今REITに入ってる物件はそんなに心配する必要は無いと思います。でも今年竣工の大型物件でリーシング終わってないやつとか大丈夫かな…ESRの尼崎とかさ…ESR前科有るし…「オフィス並のCRが物流に許容されるべき!」と力説してた偉い人いるけど、それはさすがに行き過ぎでしょ。valuationは修正されたけど、「割安!」とは思わないです。でも三井不ロジとかお買い求めやすくはなった。
しかし金曜日の「俺らもNAVプレミアムめっちゃあるし!」と言わんばかりの日ロジの売却発表には痺れました。

・住宅

NAF、ADR、CRRのトップ3はNAVプレミアムを確保してるけど、それ以外が軒並みNAV1倍割れのバーゲンセール。トップ3銘柄もだいぶvaluationが修正された。けど、コロナウイルスの影響でお家賃下がるんやっけ?みんな住むところ放棄するんだっけ?
名古屋の賃貸レジマーケットは社長が逮捕された会社がかき回したからやや弱いと言われるけどいつ落ち着くんやろか。
でも、今まで高価格帯の物件でガンガン賃料上げてきたけど、それが今後も続くかが微妙になってきたように思います。オフィス同様です。大川端とか新宿イーストサイドとか。しかし、賃貸レジは都内、特に都心に関して言えば供給は限定的ですし、需給が引き締まってます。大量の供給が見えている物流やオフィスと比較すれば安心感はあるのではないかと思います。

・最後に

色々書きましたが、REITがここまで売られなきゃならないほど不動産のファンダメンタルズは悪くなってないと思います。ただ、株式市場では需給で大きく動くことなんてザラにあります。J-REITなんて言うほど流動性の無い相場で投げ売りやられるとそりゃそうなる。まあ、投資は自己責任で。「安い!」と思ってもフルスイングせず。ボラは高いから、いけると思っても、思いもよらない方向に引っ張られますからね。お気をつけて。

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