インヴィンシブルは何が問題か(前編)

やってくれたなインヴィンシブル…

今週の東証REIT指数は1,553.23ptで引けました。一時は1,700ptまで上昇しましたが、やっぱり下落。1,600ptまでいくスピード早すぎない?と懸念した通り。スピード違反だったね。まあこんなもんでしょう。MSCIのMinVOL指数のリバランス予想も出ており、想定通りJ-REITは弱い予想。ちょっとMinVOLのインパクトが大きそうだから来週20日の確定まではREITはダラダラ行きそう。でも、それまでに顕著にコロナ感染者が減少して緊急事態宣言解除が見えたらまた1,600ptを突き抜けるかもね。

さて、今週月曜日は衝撃的なニュースリリースがありました。インヴィンシブル投資法人(以下INV)が大幅減配を発表。1,812円→未定→30円と当初の予想からは▲98.3%の修正となる大減配。REITはインカム商品という長所を真っ向から否定する業績。こりゃ痺れる。こんなリリースを出すから当然翌日の投資口価格はストップ安。そらそうよ。
一体何が問題だったのか。一言で「ガバナンス」に尽きると思います。このリリースの内容をもう少し深堀りした後に、今後懸念すべきことを整理しておこうと思います。

●リリースの内容
大幅減配を発表したINVですが、その主な要因は①マイステイズホテルマネジメント及びそのグループ(以下MHM)が運営するホテルの固定賃料の免除②本来MHMが負担する物件管理費をINVが負担③INVからMHMへの管理業務受託手数料の引き上げの3点です。
MHMとは何者かという話ですが、INVのスポンサーであるフォートレスグループに属し、「マイステイズ」のブランドで比較的安価なホテルを展開しています。INVの保有ホテル物件83物件のうち73物件と9割弱のオペレーションを占めておりますので、実質INVが依存しているテナントと言って差し支えないでしょう。このMHMにはINVのスポンサーであるフォートレスグループが組成しているファンドからの出資があります。
これらを踏まえて①②③の内容を追っていきましょう。

①の固定賃料部分の免除ですが、3/1から6/30までの固定賃料を全額免除とします。緊急事態宣言前から免除するんかい!金額は合計35億円とのことです。太っ腹!
いや、固定賃料の減額はイヤだけど、このご時世ある程度は仕方ないと思うんですよ。でもさ、もっとやり方があったんじゃない?と。そして衝撃的なのが、「INVがGOP(営業利益のことです)のアップサイドのほとんど全てを享受し、MHMは本社経費等を勘案して設定した必要最小限の管理業務受託手数料に相当する金額のみを受領する仕組みになっております」というリリースの文。これって言い換えれば、「MHMには赤字を許容する能力がありません」と読めません?だってMHMにはほとんど利益が残らないんでしょ?そしたら営業利益がマイナスになったら当然INV側にも喰らうよね。あれ?固定賃料の意味無くない?こんな契約内容しておきながら「固定賃料で最低限のヘッジできてます!」って謳い文句はちょっと都合が良すぎる。

②③については、15億円を上限に随時支払うと。まさにMHMの資金繰を支援するという意図が完全に見えますね。本来MHMが払うべきと合意していた費用をMHMの危機だからとINVに押し付けただけでなく、MHMを支援するため支払う手数料を引き上げるのですから、これがMHMへの資金繰支援と呼ばずして何と呼ぶのか。REITという箱を利用してMHMに資金を流すスキーム。REITが持つ資金って物件を買うためであったり、保有物件の価値を維持・向上させるための資金だよね?それを一グループ内企業の救済に充てるってのはどうなのさ。投資主とレンダーの出したお金はそういうことに使うために出したわけではないんじゃないの?

この3つの施策のせいで、
ホテル固定賃料予想5,514百万円→2,832百万円(▲48.6%)
ホテル変動賃料予想4,658百万円→812百万円(▲82.6%)
営業費用予想5,602百万円→7,087百万円(+26.5%)
収入は減るのに費用は大幅アップというなんとも訳の分からない決算になったわけです。それ故に大幅減配ということになってしまいました。

MHMを救済しないとREIT投資家も損失を被るってのは理解できますし、実際その通りでしょう。リブランドの方が手間がかかりますし、このご時世で後継テナントに入ってくれるところも無いかもしれません。それはわかる。では、なぜフォートレスグループ本体で支援しないのでしょうか?フォートレスグループで資金支援した上で、緊急事態宣言してる間の固定賃を減免するって内容なら1億倍マシだった。ファンドで13億ぽっちの支援でREIT側には50億円負わせるなんてちょっとアンバランスじゃない?なぜ支援しなかったか、その予測は次のnoteに書きます。長くなりそうなので今回はここまで。

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