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2021年のREIT市場振り返りと2022年見通し

今年もお疲れ様でした。

思えば年始からずっと緊急事態宣言が発令されていて、ずっとコロナやってた年でしたね。ワクチン打ったあたりから少し好転し始めて、街に人出が戻ってきましたが、オミクロン株が来年どのように影響するのか。まずは2021年を振り返ってみたいと思います。

2021年の全体パフォーマンス

J-REITの2021年のパフォーマンスは+15.83%となりました。年初は株式との相対的な割安感もあるし上昇するだろうと思っていたらその通りになり、7月ごろまでは右肩上がりに推移。ただ、2,250ぐらいまでは行ってくれるかと思っていましたが、結局2,200をワンタッチして、秋からは軟調に推移。一時2,000ptを割るような場面がありましたが、2,000ptの心理的節目では買いに回る方々もそれなりにいて底堅い動きとなりました。

一方で、グローバルという視点で見ますと、US-REITや欧州REITはかなり順調だった一方、日本を含むアジア(シンガポール・香港)はかなり軟調でした。教科書通りに考えれば、不動産はインフレ耐性があるということなので、インフレが進んでいる欧米のREITがアジアより選好されたということでしょうか。中国恒大の問題は直接REITに関わってきませんが、アジアという大きな括りでは心理的な重石はあったのかもしれません。

2021年個別銘柄パフォーマンス

J-REITの2021年の個別銘柄のベスト、ワーストパフォーマーを振り返ってみましょう。

ベスト
1.CREロジスティクスファンド +43.98%
2.SOSiLA物流リート +39.57%
3.伊藤忠アドバンスロジスティクス +37.77%
4.大和ハウスリート +36.56%
5.星野リゾート・リート +29.82%

ワースト
1.アクティビア・プロパティーズ ▲4.48%
2.ケネディクス・オフィス +1.57%
3.大江戸温泉リート +3.03%
4.ジャパンエクセレント +4.22%
5.オリックス不動産 +5.45%

中型物流が席巻した年だったということが見てとれます。物流のファンダメンタルズは好調な割に中規模物流銘柄なら利回りも3%台で買えることとか、EPRA/NAREITの組入基準における時価総額基準が緩和されてこれらの銘柄も組入対象となったことなどが要因でしょうか。
星野リゾートも大健闘。ホテルセクターは依然として弱い状況が続いていますが、星野リゾート運営の「界」はコロナ前より好調な物件もあります。今年フルエクイティでのPOも印象的でした。
ワーストとなった銘柄はセクターやサイズなど画一的な特徴は無いものの、無茶な期中POを行った銘柄、打つ手無く減配となった銘柄、普通にクレジットリスクを抱えてる銘柄、首をかしげたくなる低利回りでの物件取得が目立つ銘柄など、まあまあ納得のメンツだと思います。敢えて言うなら、ポートフォリオの中で「都心立地」「商業・ホテル」の比率が高い銘柄が苦戦していたような印象です。オフィスも地方はそれほどダメージを受けていませんが、都心中心のポートフォリオですとそれなりに稼働の低下はありましたし、ホテルは言わずもがな。商業はREIT側から見れば固定賃料の契約が多く、それほどPLが痛手を被ったわけではありませんが、やはり『商業』という括りをされるとなぜかみんな見方が厳しくなる。

2021年個別イベント

2021年にJ-REITを騒がせたイベントとしては、やはりインベスコオフィスに仕掛けられたTOBでしょう。どこか面白いホワイトナイトが出てくれば楽しい展開になると思ったのですが、結局スポンサーが非上場化させておしまい。
詳しい解説記事は以前書いたので割愛しますが、もう少しスターウッドも暴れてくれた方がREITの市場活性化によかったのではと思う一方、インベスコちゃんはJ-REITで初めて自己投資口取得やってくれたりと色々と投資家のことを考えて取り組んでいた銘柄だけに少し残念な気もします。まあ、保有物件は…

2021年その他セクター・物件売買動向

2021年はPOの件数自体は2020年より多かったものの、POでの調達額は減少しました。不動産価格の上昇により、POで思うように業績が伸びず、1口あたり分配金(DPU)の成長が鈍化していることが要因でしょう。
オフィス中心に賃料の伸びは鈍化していますが、不動産の取引利回り自体はむしろ低下し、価格は上昇しています。建築コストアップとかも一因ですが、単純に日本の不動産を買いたいというプレーヤーが多いということです。今はグローバルで金余りと言われていますし、国債利回りなんてだいぶ潰れてしまった。そんな環境下で安定した利回りが期待できるオルタナティブ資産、その中でも不動産への注目が高まっているという背景があります。その中で優秀なファンドには金が集まり続ける、そしてファンドはそのお金を使ってグローバルに不動産を買う。その中でアジアでいくら、アジアの中の日本でいくら、という具合です。
オフィスについては、空室率は一旦上昇が止まり、11月時点で都心5区の空室率は6.35%となりました。年末6.0%予想としていたので、だいぶ近いとこに行ったかな?
物流は空室率が少し上がりましたけど、引き続き絶好調。プロロジス猪名川は当初1と2で竣工時期分けるはずだったのにリーシング絶好調だから一気に竣工させ、うち1棟をREITに組み入れるぐらい絶好調。

2022年REIT見通し

昨年予想を立てる時は株式と相対的な割安感がありましたが、今回は特にない。不動産価格は上昇するけどJ-REIT全体(特にオフィス)はPLが伸びるわけではない。恐らくオフィス銘柄を中心として、物件の入れ替えにより譲渡益を出しながらPLを維持していくのではないでしょうか。そうなると、一時的に投資口価格が落ちているオフィスREITは短期的にはいいかもしれない。ですが、忘れてはならないのは2023年はオフィス大量供給が控えています。これらのテナントの入居状況や既存ビルの解約影響などは恐らく2022年後半に明らかになるでしょう。そこまではオフィス市況に不透明感があり、なかなか手を出しづらいというのも事実。また、空室率の上昇は一旦落ち着きましたし、恐らく来年は空室率は反転して低下するのではないでしょうか。しかし、今のJ-REITのオフィスのリーシングを見ていますと、比較的長期のフリーレントを付与していたり、入れ替えの際に前のテナントから賃料が下がった、というケースが散見されます。そして翌年に控える大量供給。なので、空室率低下が必ずしもオフィス復活のカタリストとはなり得ないと思っています。
物流は引き続き問題ないのだと思います。名古屋圏では弥富でESR、大和ハウスの大型供給があるので空室率大きく上がるかもしれないですが、それほど大きなマーケットではないので問題ないのではないでしょうか。関東圏でもアルファリンクなどの竣工が控えていますが、問題なく埋まるんでしょう。それより、プレーヤーが増えすぎているのが少し恐怖ですし、ブランド名覚えられないのですが…
商業・ホテルはコロナのヘッドライン次第。住宅はそんなに大きな変動要因がないのですが、東京都心のシングル住居の稼働が弱いのがよろしくない。今のところ大きく好転する兆しが見えないのも辛い。
需給面では、FED次第としか言いようがない。利上げはある程度織り込まれているものの、QT(資産縮小)まで懸念されてますし、利上げの速度が早いと当然不動産全体の資金の流出入にも影響が出てくる。FOMC前後では荒い動きになるかもしれません。
総じてポジティブに上がる上がるとは言えないかなと思います。ダラダラ下がるとも思っていないですが、コロナ前高値を抜けるイメージも持ちにくい。やっぱり、外国人だけじゃなくて国内投資家の買い支えが必要なんでしょう。国内の投資家の皆さんは利上げとかQTに怯えて外債に進むよりかはREIT買って3%ぐらいのインカム享受しません?リスクウェイト?気にしないでよ。
ちなみに2022年末の都心5区オフィス空室率(三鬼商事発表)は5.5%予想でお願いします。

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