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社会保険料について

これは完全に備忘録です。
社会保険料について自分用にまとめたものです。


社会保険が成立する背景として、日本には社会保障制度が確立されている点があります。社会保障制度には「社会保険」、「社会福祉」、「公的扶助」、「保健医療・公衆衛生」の4つの軸があり、それらがあることで国民が生活の中で怪我や病気などの苦しい状況に陥っても国の支援を受けることができ、生涯にわたり安心して暮らしていけます。

社会保険として国民に提供されているものは、主に年金・医療・介護の3分野です。病気や怪我をしたときに誰でも医療を受けられる医療保険、年齢を重ねて定年退職などで減少する所得を補う公的年金、要介護状態の人を支える介護保険が利用できます。

医療保険と公的年金制度の加入対象者は、日本に住民票のある20歳以上の全員です。企業で働く人は厚生年金保険(※)や健康保険などの社会保険に加入でき、手続きは会社を通して行われます。
雇用されていない自営業者、フリーランス、無職者などが加入するのは国民健康保険と国民年金です。

私たちの生活は不自由なく暮らしているうちは自助努力によって営まれます。しかし、事故に遭って怪我をしたり、介護が必要になったりするなど、自分だけではどうしようもない状態に陥ることがあります。そうした際の、生活のサポートのために用意されている公的保険制度が社会保険です。そして、この公的制度の大部分は保険料によってまかなわれています。一人ひとりが自分の収入に応じた社会保険料を納めることで、集められた財源から必要とする人が必要なときに利用するという仕組みです。困ったときはみんなで支えあうという相互扶助の考えに基づき、万一を想定した生活保障のために社会保険料を国民全員が納付しています。

社会保険料の計算方法

健康保険料
健康保険料の場合、給与から健康保険料の控除適用額を計算するため、次の計算をします。
「標準報酬月額×保険料率÷2」
同様に、賞与からも健康保険料が控除されます。
「標準賞与額×保険料率÷2」
なお、保険料率は加入している健康保険組合や協会けんぽ、共済組合など保険者によって異なります。
介護保険料(健康保険料含む)
40歳以上の場合には、健康保険料率に介護保険料率が足されます。
「標準報酬月額(または標準賞与額)×保険料率(健康保険料率+介護保険料率)÷2」
厚生年金保険料
厚生年金保険料の計算は次の式で行います。保険料率は2017年9月以降、一律で18.3%です。
「標準報酬月額(または標準賞与額)×18.3%÷2」
ちなみに、フリーランス、個人事業主などが加入する国民健康保険の保険料については、計算方法が自治体によって異なります。各自治体のウェブページや、役所の窓口で確認しましょう。

雇用保険の計算方法

雇用保険料は事業主と従業員で負担します。保険料率は事業内容や年度によって異なります。
一般事業の場合、労働者の負担は6/1,000(0.6%)、事業主の負担は9.5/1,000(0.95%)です。従業員の雇用保険料分を算出するには「給与総額×6/1,000」で計算します。
一般事業の対象に含まれない農林水産、清酒製造、建設事業の場合、従業員負担の保険料率は7/1,000(0.7%)です。
なお、給与総額には手当や賞与を含みます。

標準報酬月額とは?

前述のとおり、「標準報酬月額」は、健康保険料および厚生年金保険料の算出に利用されます。標準報酬月額の決定の方法はいくつかありますが、月給として報酬をもらっている会社員の場合は、基本的にひと月の給与が標準報酬月額にあたります。

標準報酬月額には給与に応じて区分された等級が設定されており、健康保険料はその等級ごとに定められている保険料を納めます。等級ごとの保険料は加入している健康保険組合や自治体によって異なるため、同じ標準報酬月額でも納付額が違う場合があります。

たとえば、全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入している会社に勤務する30代の正社員(東京都在住)で年収500万(標準報酬月額が41万6,000円)の場合、等級が27になり、本人が負担する保険料は2万500円です。(2023年3月分)

参考:全国健康保険協会「令和5年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」

標準報酬月額を算定する際の報酬の対象項目

標準報酬月額を算定する際の対象項目に含まれるのは、月給、日給や時間給、出来高給、請負給などです。また、3カ月以内の間隔で定期的に支給される各手当も含まれます。

対象外になるのは労働の対価として受け取る臨時的な報酬です。賞与は3回以下を基準に判断され、4回以上になると標準報酬月額を算定する際の対象になります。労働の対価として定期的に報酬があるものを対象としており、俸給など呼び方は問いません。なお、現物支給でも定期的であれば、通貨に換算して報酬の対象として扱います。

報酬に該当する項目

以下のものなどが報酬に該当します。補足として、通勤手当は数カ月分を一括で支給される場合でも報酬として扱います。

  • 基本給

  • 役付け手当

  • 勤務地手当

  • 家族手当

  • 通勤手当

  • 住宅手当

  • 残業手当

  • 年4回以上の賞与

  • 交通費

  • 日直手当

  • 休職手当

  • 社宅・寮(現物支給)

  • 食事(現物支給)

  • 通勤定期券(現物支給)

  • 別居手当

  • 時間外手当(早出残業手当)

  • 継続支給される見舞金

  • 宿直手当

  • 物価手当

  • 能率給

報酬に該当しない項目

基本的には3カ月を超える間隔で支給されるものは対象外です。不定期なもの、突発的なもの、継続的ではない報酬と考えてもよいでしょう。

  • 年3回以下の賞与

  • 決算手当

  • お祝い金

  • お見舞金

  • 出張費

  • 旅行費

  • 慶弔手当

  • 傷病見舞金

  • 災害見舞金

  • 退職金

  • 解雇予告手当

社会保険料控除とは?

社会保険料控除とは、社会保険料を支払うことで受けられる所得税の減税制度です。
所得税は収入から経費を差し引いた額(所得)に対して課税され、税率はその所得額によって変わります。支払った厚生年金保険料や健康保険料などは所得から差し引いたうえで税率を参照して所得税が計算されるため、減税になります。

本人の保険料以外にも、生計をともにする配偶者や親族の社会保険料を負担している場合には、その分も控除されます。

正社員の場合、会社が年末調整の手続きをする際に控除が適用されます。個人事業主などは、確定申告時に該当する控除を適用できます。

社会保険料の「控除」と「免除」の違い

「控除」は課される税金から決められた金額を差し引くことです。社会保険料の控除は、課税対象となる所得額から支払った保険料を差し引くことを指します。

一方「免除」は、何らかの理由で保険料の納付義務自体が一時的になくなることです。保険料の「未納」とも異なり、免除であれば受給の条件を満たすことで保険が適用されます。

社会保険料控除の対象

控除の対象となる主な社会保険料は以下のとおりです。

【保険料】

  • 健康保険

  • 国民年金

  • 厚生年金保険

  • 船員保険

  • 介護保険

  • 労働保険

【年金の掛け金】

  • 厚生年金基金(※)

  • 国民年金基金

  • 公務員や教職員などの共済組合

※法律改正により、現在では解散もしくは確定給付企業年金への移行が促されている。

上記以外の控除対象については国税庁のホームページより確認できます。

参考:国税庁「社会保険料の範囲

注意点は、控除される社会保険料は年度中に支払ったものが対象となることです。納付予定の段階でまだ支払っていないものは控除額に含められません。一方で年金などの保険料を2年先まで前納した場合は、年度中に全額を控除にあてるか、各年度分の保険料相当額を年ごとに分けて控除するかを選べます。

社会保険料が免除になるケース

社会保険料のうち国民年金保険料は、収入の減少や失業などによって経済的に困難がある場合に免除できる制度があります。手続きを踏むことで収入の状況に応じて全額、4分の3、半額、4分の1のいずれかの免除額が決まり、納付の負担が軽くなります。

免除期間中も年金の受給資格期間として数えられるため、将来の年金受給は可能です。ただし、保険料の免除額に応じて、将来もらえる年金額が減ります。なお、免除を受けたあとでも、追納制度の利用で満額支払った扱いとなり、将来もらえる年金額を増額できます。

他にも、産休・育休の期間で健康保険・厚生年金保険の保険料を免除する制度があります。(詳しくは後述します)

① 2024年10月施行 社会保険の適用対象がさらに拡大

2024年10月から、法改正により社会保険の適用対象が拡大し、従業員51人以上の企業で働くパート・アルバイトが加入対象になります。法改正以前と同様に、パートやアルバイトなどの短時間労働者であっても、社会保険の加入条件を満たしていればフルタイムの従業員と同じように社会保険の適用を受けられます。

短時間労働者が社会保険の適用対象となるには以下の条件があります。

  • 短時間労働者を除く正社員(被保険者)の総数が51人以上(※)

  • 週の労働時間が20時間以上

  • 雇用期間が2カ月以上の見込み

  • 月の給与が8万8,000円以上

  • 学生ではない

① 社会保険料率は変動することがある

社会保険料は給与・手当などの報酬に応じて決められるため、給与・手当の増減があれば社会保険料もあわせて変動します。そのため、支給される手当に変更があったとき、勤務時間が変わったとき、昇給・降給で給与額に大きな変化があったときなどでは、支払う社会保険料も変わる可能性があります。

また、介護保険の対象年齢に達したときにも、社会保険料の金額は変わります。

加えて、社会保険料率は固定されていないものが多く、年度ごとに変更されることもあります。
全国健康保険協会(協会けんぽ)の健康保険料を例にすると毎年保険料率の引き上げ・引き下げが都道府県ごとに実施されています。介護保険料率や雇用保険についても同様です。厚生年金保険料率に限り2017年9月で引き上げが終了しており、18.3%で固定されています。

② 育休・産休中は社会保険料が免除になる

育休や産休中は、条件を満たしていれば健康保険、厚生年金保険の社会保険料が発生しません。なお、事業主側が支払う保険料も免除されます。雇用保険も毎月の給与から決まるため、給与の支払いがない休業中では発生しません。

保険料の免除は休みを取得するときに自動で適用されるものではなく、従業員が産前産後または育児休業期間に入る際に事業主が日本年金機構へ手続きする必要があります。そのため、もし休業の予定がある場合は早めに相談しておいたほうがよいでしょう。原則として、育児休業制度の利用は1カ月前の申し出が必要です。

休業期間中は年金保険料や健康保険料を支払っていなくても、社会保険の資格期間としてカウントされるため将来の年金額や健康保険の使用には影響しません。

③ 4~6月の残業時間によっては社会保険料が変わる

前述のように、一部の社会保険料は標準報酬月額によって決まります。4~6月の報酬をもとに7月の算定基礎届の提出により保険料が見直され、9月以降の社会保険料の支払額が決定(定時決定)する仕組みです。

この際、前述のとおり算定対象の報酬には時間外手当(残業代)も含まれます。そのため、業務の都合で4~6月に残業時間が増える場合、残業代が標準報酬月額に上乗せされ、保険料が高くなるケースがあります。

なお、社会保険料が高くなるとその分手取りは減りますが、老齢厚生年金でもらえる額が増加するなどのメリットがあり、必ずしも悪いことばかりではありません。
また、傷病手当金や出産手当金を受給時の支給日額も標準報酬月額をもとに計算しますので、休業中の補償が手厚くなります。

④ 一部の社会保険料は日割り計算がない

社会保険料は日割りではなく月単位の計算です。月の途中で就職した場合、その月分の保険料は日割りで減額することなくそのまま決まった分を支払う必要があります。

また、資格喪失日は退職日の翌日であり、喪失日の前月分までが納付の対象です。そのため、月の末日が退職日となる場合、資格喪失日を含む翌月まで退職月分(前月分)の社会保険料を支払う必要があります。

なお、雇用保険料については月に支払われた給与額で変わるため、日割りの賃金から保険料を算出します。

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