第４回　積読解消プロジェクト　『「ひらがな」で話す技術』

今日の積読解消は、文京区の福院長さんの『「ひらがな」で話す技術』です。

＊＊＊音声はこちら＊＊＊

https://drive.google.com/file/d/195RuA7CCmfKti7zB33gl5MMLTS3Io3Tv/view?usp=sharing

「ひらがな」で話す技術

早速福院長さんからのメッセージを読みます。

２０年間、同じテーマの本を探し続ける

私は会社を経営しており、人前で話すことも多いのですが、分かりやすく話すのが苦手です。内容自体には自信があり、聴くに値する情報を盛り込み、編集もできていると思うのですが、肝心の人前で話すのはうまくできている気がしません。考えてみると、私はこの問題を２０年は考え続けています。スピーチや文章術の本を読み、時にプロの指導も受けてきました。しかし、上達している手ごたえがありません。人一倍、いや人三倍真っ当な人生を送っていて、努力しているのに、この分かりやすく話せない、というせいで、今でも時折人に不審がられます。どうにかしたいと考え、今回も本書を買って気が付けば積読になっています。

積読診断

結論から言います。本書をよく読んで、実践すれば分かりやすい話ができるようになるので大丈夫です。
人間が言葉を理解する仕組みは、脳科学で解明されてきています。本書にある通り、文字の黙読でも、脳内では一度音声処理されることが分かっています。
これは人間の脳が、現在でも狩猟時代から、あまり進化していないからです。言語の誕生についてはよくわかっていませんが、狩猟時代のどこか、少なくとも5万年くらい前には、すでに言語は存在していたと考えられています。文字の発明は約4000年前、つまり少なくとも約4万6000年の間は、言葉は、文字ではなく音だけだったのです。そして、現在でも人間の脳は基本的に狩猟時代に最適化されたままなので、音として言葉を理解させる本書の内容は理に適った「正解」なのです。本書の方法を取り入れれば福院長の話はさらに分かりやすくなるはずです。

しかし、問題はどちらかというと、分かりやすく話せるようになれば「人に不審がられることが減る」、という考えの方ではないでしょうか？

福院長さんはわかりやすく話すのが苦手と思っています。しかし、恐らく努力の甲斐あって、問題ないのだと思います。もし、副院長さんが、本当に分かりにくい話のまま、20年間人前で話し続けていたら、見るに見かねて誰かが副院長さんを止めているはずです。

また、分かりやすく話せれば、必ず信用されるわけではありません。話が非常に上手なYouTuberに対しても胡散臭い、と思う人はたくさんいます。

●話のうまさと、信用は別物

誠意と技巧を尽くして、正しい内容を分かりやすく話しても、信じてもらえない、という逸話は世界中に残っています。ギリシャ神話のカッサンドラの悲劇は有名です。カッサンドラは神から予知能力と一緒に、「誰にも信じてもらえない呪い」の両方を与えられます。正しいことを言っても誰にも信じてもらえないどころか、逆に疎まれて、結局殺されてしまう、という悲劇です。

大きな書店に行けば「分かりやすい文章方法」「プレゼンテーションの技術」など、伝える技術の本でコーナーができています。分かりやすい話し方には「正解」があるのに、ここまでたくさんの本があるということは、信じてもらう方法、自分を伝える方法には今のところ正解が無い、ということなのです。

●下手でも愛される方が得

福院長さんの積読の原因は、分かりやすく話す方法を探しているうちに、気が付けば信じてもらう方法も求めてしまっているからではないでしょうか？
では、診断からの処方です。分かりやすい話し方を磨く一方で、表現にも目を向けてみてはいかがでしょうか？それも、「流暢じゃないけど愛される」「よく分からないけどなんか面白い」、そんな方法です。極端に言えば、不審に思われてもなぜか好かれる、そんな方法が見つかれば、誠意あふれる副院長さんは無類の話し上手になっているはずです。

本書のパンチフレーズ

福院長さんに送る本書のパンチフレーズは以下です。

丸い言葉で話すためにはもうひとつ、乗り越えなければならない壁があります。それが、「コンプレックス」です。丸い言葉は簡単な日本語なので、「こんな話し方をしたら頭が悪いと思われるんじゃないか」と不安になるのです。「頭がよさそう」「仕事ができそう」「頼りがいがある」と思われたいがために、つい四角い言葉を使いたくなってしまうのです。

「ひらがな上手」になるには、「ことばを開く」技術の訓練や、「やまとことば」の学習が必要です。それと同時に、実践の壁があります。是非とも福院長さんの誠意を伝えきっていただきたいと思います。