映画「ある男」感想文
先週末、アメリカは三連休でした。息子は友達の家にスリープオーバーしに行き夫婦そろって手持無沙汰になったので、夜映画を見ることにしました。
今回は、「ある男」(石川慶監督)を観ました。安藤さくらさんと原作者のお名前に釣られて選んだこの映画ですが、結果から言うと「面白かった」です。
窪田正孝さんはちらほらテレビでお顔を拝見したことがあったのですが、きちんと認識したのは、この映画が初めてでした。素敵な俳優さんですね。
そして、妻夫木くん。実質彼が演じるスマートな弁護士「城戸」がこの映画の主人公だと思いますが、素敵でしたね。安藤さくらさん目当てだったのに、このお二人の演技にすっかり見惚れてしまったので、とてもよい配役だったと思います。脇を固める俳優陣も素敵で、きちんと映画の世界観にはまっていましたね。
原作は平野啓一郎さん。以前NHKのドラマで「空白を満たしなさい」を観てとても印象に残っていたのも、この映画を選択した理由の一つです。このドラマもとても面白かったです。平野さんの提唱する「分人主義」理論面白いと思います。発想の転換があって「嫌われる勇気」を最初に読んだときのような驚きがありました。この発想は無かった。ある意味「罪を憎んで人を憎まず」のような感じの考え方ですね。平野さんは人間関係で鬱になって自ら命を絶つ人を止めたいのかな、と感じました。
さて。
弁護士の城戸は能力も魅力もある素敵な男性ですが、生きづらさを抱えています。奥さんはとても美人だし、子供もおり、生活も豊かそうなのではありますが、いまいちシックリとまではいかない感じが漂っている。人権派のお金にならない仕事もきちんとして、たぶん他に愛人とかも作れそうな良い男ぶりですが、劇中では他の女性には浮気していません。とても立派で、責任を果たそうとしている様子に、最後はすっかりかわいそうに思ってしまいました。切ない。
そして。
Xは、本当は子供を病気で亡くすという辛い過去を持つ里枝とその子供達を包み込み幸せにできるような人物だったわけです。自分にはどうしようもできない過去と決別することができれば(たとえ度々フラッシュバックに苛まれたとしても)、人を幸せにすることができる自分に出会えたわけです。
今自分を取り巻く状況が絶望色だったら、場所や人を変えてよい。逃げてよい。そこでまた別の自分に会うことができるという希望を見せてもらったような気がしました。
城戸はこれからどのように暮らすのでしょう。彼にもしあわせな自分に出会ってほしいものです。
良い映画でした。感謝。
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