地方分散はSDGsを加速させるか

京都大学の広井良典教授は、日本社会が今後6〜8年内に「地方分散型」か「都市集中型」かの分岐点になる。そして将来的に日本社会が持続可能な状態となるためには、「地方分散型」社会が望ましいだろうということを、AIを使った研究で分析されている。

コロナ禍で、都市圏から地方への移住希望者が増えているというが、この流れが継続していくと、地方分散型社会は日本でも定着していくのだろうか。

海外に目を転じれば、分散型社会で機能しているように思えるのはドイツなどヨーロッパ諸国だ。一自治体あたりの人口も10万人程度と、日本の小規模な自治体(例えば鳥取県55万人)をも大きく下回る。

それでも高い生産性と所得水準を維持しており、生活レベルはゆったりとしていて、むしろ都市部の例えばフランクフルト等よりは、地方都市の方が暮らしやすいように見える。

日本でも、地方回帰の流れが続けば、新しい人の出入りがあり、風通しのよい場所がそこかしこにできる可能性もある。

そして、地方分散型社会が進めば、広井教授が分析されたように、中長期的には日本社会の持続可能性のみならず、地球全体の持続可能性、すなわちSDGsの達成にも貢献することになるだろう。

都市部ではエネルギーや食料等、生活に必要なものを遠くから運んでこなければならないのに対して、地方では、やろうと思えばかなりのことを地域内で循環させていくことができるからだ。

さらに、感染症対策や大規模災害への備えとしても、分散型社会の方が望ましい。

今回のコロナでも、都市部と地方における医療体制の差が問題となっているが、これは日本の多くの病院が私立病院であるからで、そうすると人口多寡によって、医療の体制に差が出てしまうことになる。こうした資源を分散させておくことで、有事の際にも社会全体への影響を低く抑えることも可能になるだろう。

今年の一年間は、SDGsの観点からも地方移住や分散型居住の価値と可能性について考えていきたいと思う。


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