格差を埋めるにはロールズ流とノージック流どちらが有効なのか

格差を解消していくために、高額所得者への課税を強化し、それによって低所得者への再分配を行うべきだ、と唱えたジョン・ロールズ。かたや個人の自由と財産権は絶対であり、低所得層への支援は、あくまで個人の自由意志によって行われるべきだと唱えたロバート・ノージック。格差を是正していくためには果たしてどちらが有効なのだろうか。

ロールズとノージックの主張の対立は、アメリカ議会における民主党と共和党の主張の違いに表れている。今回の大統領選挙でも、バイデンとトランプの対立の背景には、アメリカがここ数年抱えてきた格差問題があったと言われているが、今回バイデン氏が大統領になることで、ロールズ流の施策が取り上げられるようになるのだろうか。バイデン氏は既に高額所得層への課税強化を施策として打ち出しており、やはりその思想の底流にはロールズ的な思想を垣間見ることができる。

施策の有効性を考える際に問題となるのは、論理的な妥当性もさることながら、やはり最後は国民にとって受け入れられるものなのかどうか、ということだろう。

私の予想では、ロールズの考えよりも、ノージックの考え方の方が国民的には分かりやすく、受け入れられやすいのではないか、従って4年後の大統領選で再びトランプやそれに類した思想をもった代表を立てた共和党が力を伸ばすのではないかというものだ。

ロールズの考え方は、特に格差を是正していくという観点において、論理的な妥当性は高いように見えるし、一見するとその方が安定した社会が生まれそうな感じはする。一方のノージックの考えでは、あくまで格差是正の手段は個人に委ねられているので、国民の大半が社会に関心を持たないような人達であれば、益々格差は拡大してしまうリスクが高い。

しかし、多くの国民は論理的な物事の理解よりも、個人の財産は絶対に侵害されてはならないという感覚的な理解の方を大事にするのではないか。特に独立精神の旺盛なアメリカではなおさらのような気がしている。

従って格差を是正していくために、ロールズ流とノージック流、どちらが有効なのかという問いに対しては、それはその国の置かれた状況や、特に国民の教育レベルにかかっているのだろう。

日本に置き換えて考えてみた場合、個人的にはノージック流を基本としつつ、一定の割合でロールズ流の施策をまぶしていくというのが有効な気がしている。二項対立で考えていくと、どうしても思考が過激になりがちで、ロールズ流も行き過ぎると全体主義的な考えになってしまいそうな気がする。一方のノージック流も、極端にいってしまうと無政府主義ということになるのだろう。

今私が関わっている仕事も、地方と都市間における格差が一つのテーマになっているが、このテーマについて考える上でも、ロールズとノージックの思想の違いからヒントが見えてきそうだ。

参考文献:「あぶない法哲学」(住吉 雅美 著 講談社現代新書)

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