外れないアーケードの謎

鳥取県内のあるシャッター商店街の中にサテライトオフィスを設けてから約3年が経つ。

寂れた商店街の賑わいづくりに少しでも貢献できたら、という思いで始めたものの、実際のところなかなか難しかった。

かつては人でごった返していたと言われるその商店街は、今では日中でも歩く人をほとんど見かけることがない。

その商店街には、古びたアーケードがかかっていて、中は真っ暗だ。地方ではよく見かける光景かもしれないが、やはり暗い商店街というものは、見ただけで印象がよいものではない。

そのアーケードが長年外れずにいる。

商店街組合に加入されている古老の大家さん達が、取り外しに反対しているためだ。

雨漏りもひどく、雪や台風の日には壊れるんじゃないかと、みんなヤキモキしているそうなのだが、長年議論をしているものの、変化はないそうだ。

商店街の周りの人達は、行政も含めて、みんな早く外した方がいいと思っている。でも肝心の当事者達は外したくない。

そんな禅問答のような繰り返しが続いている。

外から見ていると、この光景は謎でしかないのだけれど、考えてみれば日常的にこうしたことってたくさんありそうだ。

例えば、ワクチン接種みたいな話や、テレワーク、脱ハンコみたいなところにも共通するかもしれない。

例えば、ワクチン接種は、全体としては受けた方が良いだろうとみんな思っている。でもいざ自分が受けるとなると副作用が怖く、ちょっと躊躇してしまう。

テレワークや脱ハンコといったデジタル化も、全体としては理解するものの、いざ自分がやらなければならないとなると、新しいことなので面倒くさかったりする。

つまり、総論賛成、各論反対。第三者的には変化の肯定、個人としては変化の否定、といった反応になるのが世の常なのかもしれない。

そう割り切って考えれば、商店街のオーナーさん達の行動も分からなくもない。

ただ、家屋の老朽化が進み、もはや危険家屋の域にまで達してくると、さすがにそうも言ってられなくなるのではないか。

商店街とは一体誰のための空間なのか。そしてアーケードは誰のために設置されたものなのか。

いうまでもなく、本来は、そこで商売を行う人のためのもの。そして商売を行うにはお客さんがいなければならず、お客さんをもてなすために設けられたのがアーケードのはずだ。

でも今や、その商店の集まりとしての機能を果たせなくなってしまっている以上、あり方も変えていく必要がある。

これを私権とのバランスを持ちながら進めていくのは難しい作業だが、用地変更や、税制面でインセンティブを持たせるなど、何らかの行政施策も考えられる。

外れないアーケードが、外れない固定観念になってしまわない内に、関係者が少しづつ動き始めることに貢献できたらと思っている。

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