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編集力は他己紹介力

『居場所を育てる』を旗印に、文化人類学をベースにした有機的な建築設計を手がける奥田達郎くん。
公務員という肩書きを超えて、身銭を切って場所を編集し続けているチャンくん。
兵庫県宝塚市に住むこの二人がパーソナリティを務める『あわいレディオ』というpodcast番組がある。

そのゲストに呼んでもらって先日お喋りをしてきたのだけれど、その時に気づいたことを書き留めておこうと思う。

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番組冒頭、もともと話すことが得意ではなかったという奥田くんが、そんなこと信じられないくらい、わかりやすく丁寧にゲストの紹介をしてくれるのだけれど、今回のゲストである僕の紹介を、嬉しいような恥ずかしいような気持ちで聞かせてもらいながら、編集者がやっていることの根っこは結局これだなと思った。

つまりは、他己紹介だ。

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僕は自著で、編集力とは「メディアを活用してビジョンを実現するチカラ」と定義した。少し大袈裟に聞こえるかもしれないけれど、実際に彼らはpodcastというメディアを使って、たくさんの友人知人を紹介しまくることで、彼らが描く世の中の実現を目指しているように思う。そのことが、編集という行為の原点のように僕には思えたのだ。

書籍を編集することはもちろん、展覧会やイベントを企画編集することも、商品を編集プロデュースすることも、詰まるところそれは他己紹介だ。それがモノであれ、コトであれ、人であれ、嘘偽りなく適度に魅力的にそれを語るチカラを身につけることが編集者の条件のように思う。

そういう意味で、紹介したい友達を順に紹介していくという「あわいレディオ」の型は、他己紹介力を身につけるのにとてもよいカタチだから、みんな真似をすればいい。

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思い返せば、僕自身も10年以上ネットラジオを続けているけれど、そもそもラジオをやろうと思ったそのきっかけはトーク力を上げたいと思ったからだった。

30代前半に、イベントの司会や進行役をまかされることが多くなった僕は、人前で話すためには、もう少し意識的にトーク力を高めないといけないなと思い立ち、毎回10分、誰に語るでもなくたった一人で喋るラジオをまるで千本ノックのようにはじめた。今思えば、あれは単なるトーク力向上というよりも、状況や気持ちを整理して伝える練習であり、魅力的な他己紹介の訓練でもあったのかもなと思う。

※12年前にやってたpodcast↓

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結局このブログも奥田くんのことやチャンくんのことを他己紹介しているに過ぎないし、そんな他己紹介をもって自分の思いを表現するというのが、僕にとって一番心地いい編集なんだなとあらためて思う。そしてその心地よさは、僕たちが友達を紹介したいと思うとき、そこに利害関係が存在しないというところからきている。

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2006年に創刊した雑誌「Re:S(りす)」編集長の藤本智士が、いまあらためてお届けする、あたらしい“ふつう”のnote「Re:S」。 日…

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編集者。1974年生まれ。『Re:S』『のんびり』『なんも大学』編集長。著書に『風と土の秋田』『魔法をかける編集』『アルバムのチカラ』。その他『ニッポンの嵐』『るろうにほん 熊本へ』(佐藤健)など手掛けた書籍多数。 http://bit.ly/satoshifujimoto