あるをつくして。
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あるをつくして。

移動して打ち合わせしてイベントやって打ち合わせして視察行って打ち合わせして飲んで笑って打ち合わせしてサウナ入ってご飯食べて移動してたらいつのまにか10日も旅してた。家に戻って爆睡しつつ、それでも流石に疲れが残っていたので、昨日は一日身体を休めて、ようやく回復。30代の頃は2週間くらいの旅(しかも車中泊)でも平気だったけど、やっぱオイラも歳とったんだなあ。人生まだ長いし、うまく休んでいかなきゃなとつくづく思う。そういう意味で僕にとってサウナはとても大切。

以前の僕は「休みの日何してるんですか?」って聞かれて、「映画みたり本読んだりしてる」とか答えながら、心の中では、それも全部仕事みたいなもんだよなあと思っていた。だから、仕事と結びつけずに楽しんでるものってなんだろう? と改めて自問自答して出てきたのはゲームだった。黙々とNINTENDO Switchやってる時が、ある意味一番休んでる状態なのかもと思って「今はゼルダやってますね。ゲームやってる時は頭空っぽにできるので」とか答えるようになった。けれどそれだって、頭の中はゼルダ姫やハイラル王国のことでいっぱいなわけで、真に頭が空っぽなわけではないことはわかっていた。

そんな僕が4年前のある日、琵琶湖畔でテントサウナを体験したことから、生きるリズムがガラリと変わった。

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半信半疑で飛び込んだ琵琶湖。からの外気浴に、何かの欠片を掴んだような気がした僕は、あらためて地元神戸にある『神戸クアハウス』というサウナ施設に向かった。神戸クアハウスは一階に六甲の天然水を汲める蛇口がいくつか設置されていて、ポリタンクに水を詰めて帰る人々の姿を横目でみていたから、なんとなくあそこは水風呂が良さそうだ、という勘が働いた。

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アウトドアサウナで得た知識をそのまま商業サウナで追体験するべく、サ室→水風呂→外気浴と続けた僕に、今思えば初ととのいがやってきた。やはりクアハウスの水は最高だったようだ。以前は入る気にすらならなかったサ室を出て、天然水が降り注ぐ水風呂にイン。苦手なはずの水風呂がこんなにも優しく気持ちのよいものかと感覚の変化を感じられた。ぐんぐんクールダウンしていく身体をなんとか起こして外気浴へ。しかしクアハウス唯一の欠点は外気浴スペースまで階段で一階分上がらなきゃいけないこと。朦朧とした状態でたどり着いた屋上で、倒れるようにインフィニティチェアに寝そべり、天を仰いだ瞬間、琵琶湖で掴んだあの欠片の本体がグラングランにモワワンと僕を襲った。もはやその得体の知れない何かに、そのまま身体を預けることしかできなかった。だって気持ちよかったんだもの。しばらくして正気に戻った僕は、「休む」ってこういうことかもと思った。

以来、僕はとにかく休むためにサウナに行く。最近は自宅近所に世界初をうたう24時間会員制個室サウナというのが出来て、速攻で会員になった僕は、朝だろうと夜中だろうといつだって好きな時にととのえるから、ほんと、カフェとパン屋とサウナは、その町の幸福度を爆上げするよな、としみじみ思っている。

あれ? こんな、初ととのい話を書きたいわけじゃなかったのにな。 まあいいや。

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ということで、ここからが本題。

各地の良きサウナ施設で体調を整えながら、秋田〜新潟を経た旅の中盤、長野県での話。日本一の寒天の産地、長野県茅野市にある『松木寒天』の熊澤さんという知人に声かけをして上諏訪の料理屋さんで夜ご飯を共にした際のこと。ちょっとした飲みのつもりが、熊澤さんと共通の友人、TINY GARDENという宿泊施設の粟野くんがさらに声かけしてくれて、クラフトビール、8PeaksBREWINGの齋藤さんや、森と街をつなぐ仕事をされている木葉社の小池さん。いまや諏訪と言えばな、リビルディング・センター・ジャパンのドンドンなど、諏訪の熱い人たちが大集合。久しぶりのご飯会で大いに盛り上がった。

いつの間にか閉店時間も迫り、それぞれ朝も早いだろうし、一旦ここで中締めしますかという流れになったところで、今回の場をセットしてくれた『松木寒天』の熊澤さんが一本締めの前にこう言った。

「え〜今日はみなさんありがとうございました。では、宴もたけなわですが、一旦ここで、あるをつくしていただいて……」

!!!

そうだ!

久しく聞いていなかったこの言葉のことを忘れていた! 

あるをつくす。

「あるをつくす」とは、長野のみなさんが中締めの時に使う言葉で、要は「あるもの残さず食べ尽くす」という意味だ。せっかくの料理、しっかりいただいて帰りましょうね。という、もてなす側にも配慮あるこの言葉。長野以外ではまあ聞かない。中締めというタイミングに使われることも含めて、信州特有の「あるをつくして」文化は、あらためて素晴らしいなと思った。

これが信州の暮らしの根っこにある証なのだろう。なんと長野県はゴミの排出量の少なさ日本一だという。気になって調べてみると、諏訪市や近くの伊那市など各自治体が「残さず食べよう!30・10(さんまる・いちまる)運動」というのを実施していることを知った。食品ロス削減を目的に、特に食べ残しが多い「宴会料理」における呼びかけとして行われているもので、宴会が始まった最初の30分間と最後の10分間は自分の席について料理を楽しみ、食べ残しを減らそう! ということらしい。

これ、どの地域でも真似るべきだ!

日本の食品ロスは年間約621万トン。これは、日本の食用の魚介類の量(622万トン)に匹敵するという。ちなみに今回の旅の始まり、秋田県で一番最初に打ち合わせしたのが、秋田県の温暖化対策課のみなさんだった。そこでマイボトル推進運動の相談を受けながら、教えてもらった事実に僕は驚いた。

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藤本智士(Re:S)

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編集者。1974年生まれ。『Re:S』『のんびり』『なんも大学』編集長。著書に『風と土の秋田』『魔法をかける編集』『アルバムのチカラ』。その他『ニッポンの嵐』『るろうにほん 熊本へ』(佐藤健)など手掛けた書籍多数。 http://bit.ly/satoshifujimoto