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軽トラ買っちゃった。

「軽トラを買った」
そう言うと、必ずのように「なんで?」と聞かれる。しかし無理もない。僕は農業をしてるわけでもないし。もちろん赤帽さんでもない。

じゃあ何故か? それは、僕がいま取り組んでいる「にかほのほかに」という廃校になった小学校の利活用プロジェクトにおいて必要になってきたからだ。校舎内のリノベーション作業をするなかで、業者さんから長モノの廃材をいただいたりすることも多く、その運搬機会が増えたことと、シンプルに秋田滞在中の足が必要だった。必要になる度にレンタカーを借りるのも面倒だし、それなら維持費も安そうな軽トラでも買えばいいんじゃないかなと思ったのだ。

それでも車を買うという行為は、それなりの労力がかかるもので、なんだかんだで後回しにしたままだった。それがいよいよ買わなきゃと動き出したのは、ふとした隙間に、スマホで軽トラの中古価格相場を調べたからだった。だいたいからして、この隙間時間を埋めるスマホ癖が、無駄な消費に繋がっていくことを自覚しているので、最初こそ自制する気持ちが半分働いていたのだけれど、まあ、無理だった。

そもそも10万くらいで誰か譲ってくれないかなあ? と思っていたのだけど、安いものでも諸経費を入れるとなんだかんだで35万くらいはしちゃうことを知り、さらに、身長が182cmある僕は、背もたれが少し倒れるジャンボタイプのものでないと辛いことがわかってきたので、その縛りを入れるとだいたい60万は下らないことを知った。その上でさらに、年式が古すぎず、走行距離もマシなものをセレクトしていくと結局みんな100万超えしちゃう。これは結構な買い物だ。しかしそう思えば、こういう中古車相場ってよく出来ているなあと思う。当たり前だけど、みんな考えて値付けしてるんだな。

たった一晩ネットを彷徨ってるだけで、最初は、軽トラと言えばダイハツ? くらいしかイメージのなかった僕が、日産やホンダなど各社の軽トラの存在を知り、さらにちょっとしたバージョン違いや、年式による装備や走行性能の違いなどもわかるようになるのだから、すごいものだ。似非中古軽トラ通になっていた僕は、それらのなかから、相場より安くて上質な一台を探すのに、いつのまにか必死になっていた。

そんなとき、僕は彼と出会った。

一眼見た途端、思わず「可愛い」と声を漏らしたほどだ。うん、あれはたしかに恋のはじまりだったように思う。シンプルに好きだ。と思った。

最初は「維持費安いし軽トラでいいんじゃね?」だったのに、いつしか「軽トラがいい」いや「軽トラじゃなきゃダメだ」そして「出来ればあの彼がいい」と、そんな思いが募って、僕はついにその販売店に電話をした。偶然にもその販売店から家までは車で1時間くらいの距離にあったことも、僕に運命を感じさせたように思う。約束の時間より少し早く着いた僕の前に、ついに現れたリアルな彼は、写真で見る以上に可愛くて、且つ、男前で。僕はその時点でもう買うことを決めてしまっていたかもしれない。

そんな彼の写真がこれ。

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値段は98万円だった。

相場的にみればずいぶん安い。というのも、なんといってもまずはこのカラー。あの所ジョージさん提唱のブルーグレイ、SETAGAYA BASEカラーだ。走行距離は5万キロ。しかも4WDで、新品ミックスタイヤにホイールも新品。さらにHDカーナビはついているし、シートも綺麗に張り替えてある。その上、5cmほどリフトアップされたその姿は実に凛々しく、そんな彼をより男前にしているのが荷台に据え付けられた堅牢なキャリー&オーストラリア製の個性的なサイドオーニング。

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これにはマジびびった。前のオーナーはさぞかし大切に可愛がっていただろうに、やんごとなき理由で手放してしまったのだろうかと、なんだか心配になった。

てことで、既に気持ち半分以上持ってかれてる僕は、とはいえ、やはり乗ってみなければと、試乗をお願いした。お店のお兄さんが助手席に座ってくれて、近くを15分程度試乗。そこそこな田舎にある販売店なので、ちょっとした山道なんかも走らせてもらえて、5cmリフトアップの安心感と視界の良さを体感。軽トラ独特の懸命なエンジン音がなんとも愛らしく、それでいて踏み込むことなく快走する彼に、もうこのまま販売店に着くなりハンコ押すなオイラ、てか押したい、とさらなる「好き」が込み上げてくる。いやしかし待て。いくら相場より安いと言っても100万だ、ここは奥さんにもちゃんと相談しなきゃいけない。

そこで僕は、はやる気持ちを抑えるためにも、試乗中、気になっていた前オーナーさんのことを聞いてみることに。僕が一目でここまで気に入ってしまったのだ。さぞかし前オーナーも可愛くて仕方なかったはず。なのにそれを手放すなんてよっぽどのことがあったのかもしれない。このままオシャレマルシェに出店できそうなこの一台。「前オーナーさんはどんな風に使ってらしたんですかね?」と助手席でナビしてくれる店員さんに聞いてみた。すると、あまりに意外な答えが返ってきて驚いた。

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藤本智士(Re:S)

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ラッキーカラーはブラウン!
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編集者。1974年生まれ。『Re:S』『のんびり』『なんも大学』編集長。著書に『風と土の秋田』『魔法をかける編集』『アルバムのチカラ』。その他『ニッポンの嵐』『るろうにほん 熊本へ』(佐藤健)など手掛けた書籍多数。 http://bit.ly/satoshifujimoto