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窓際のトットちゃん の肯定力。

いつものように阪急電車に乗っていたら向かいに座る小学高学年くらいの女の子が『窓際のトットちゃん』を読んでいて、なんだか嬉しくなった。

塾にむかう子供達の手にあるのは大抵スマホなのに、懐かしい「青い鳥文庫」を読むその姿に、なんだかむやみにウルっとしてしまった。いいおじさんだなあ、まったく。

本に携わる仕事をしてきた身としてとても嬉しい光景だったことはもちろん、その本が『窓際のトットちゃん』であることが余計に僕にさまざまを思い起こさせた。

もう40年も前のベストセラー『窓際のトットちゃん』は、ご存知、黒柳徹子さんの自伝的小説であり、いまもなお愛され続ける名著だ。当時子供だった僕も母親から読んでみたらと勧められたけれど、天邪鬼な僕は、世のトットちゃんブームに気が乗らず結局読まなかった。だから僕がその内容に触れたのは、ずいぶん大人になってからで、たしか大学生か社会人になりたての頃だったように思う。それでもトットちゃんと校長先生との数々のエピソードは、僕のなかに深く残っている。

僕はいきおいスマホから電子書籍版を購入。そのままカフェに入ってトットちゃんと再会した。

もはや校長先生側の年齢になってしまった40代後半の僕にとって、この物語は、まっすぐ、傾聴の物語だと思った。


好奇心が強く自然体ゆえに集団生活に馴染めず学校から白旗をあげられてしまったトットちゃん。お母さんが見つけたトモエ学園という新しい学校の校長先生は、入学面接の際にトットちゃんの無邪気な話を4時間もただただ聞き続けた。そして、いよいよ話すことがなくなったトットちゃんに、校長先生は一言「じゃ、これで、君は、この学校の生徒だよ」と言う。

僕はこのシーンがとてもとても大好きだ。こうありたいと思う。

✳︎

僕は自分が主催している学び合いのオンラインスクール。Re:Schoolのことを考えた。1年間運営をしてきて、ありがたくもとても心地の良いコミュニティ運営ができているのは、ひとえに、メンバーのみんなの傾聴力のおかげだ。

メンバーそれぞれに環境も年齢も暮らす街もさまざまだからこそ、まずは相手を知ろうと、それぞれがそれぞれの話を聴くことからはじめようとする。編集という行為はまず聞くところからしかはじまらないから、そういう人たちが自然と集まってくれたのもRe:Schoolが地域“編集”を学び合う場所だと謳っているおかげなのかもしれない。

またりスクールでは、メンバーとして入ってきてくれた人に必ず一人喋りのラジオを録音してもらっている。ある理由から苦肉の策的にはじめたラジオ企画だけれど、他人の話を聴くという行為の心地よさ、コミュニティ全体の空気を作ってくれたような気がしている。

なんでもかんでも否定から入ることで自身のアイデンティティを確立しようとする人が多く見受けられる世の中で、まずはただ肯定してみること。そのスタンスで話を聞くことが、結果的に自分自身にどれほどの安心をもらたらしてくれるか。

窓際のトットちゃんは、肯定のエピソードで溢れている。上から目線な〈認める〉でははなく、まるっと全部を〈受け入れる〉ことで、人は伸び伸びと成長していくのだということがリアルに描かれている。
うん、Re:Schoolの課題図書にしよう。

窓際のトットちゃんを読んでもらえたら僕がオンライン上でどんな場所をつくりたいと思っているのかわかってもらえる気がする。

りスクールの新メンバー、現在募集しています。
ぜひ、お申し込みください。

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藤本智士(Re:S)

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ラッキーカラーはブラウン!
編集者。1974年生まれ。『Re:S』『のんびり』『なんも大学』編集長。著書に『風と土の秋田』『魔法をかける編集』『アルバムのチカラ』。その他『ニッポンの嵐』『るろうにほん 熊本へ』(佐藤健)など手掛けた書籍多数。 http://bit.ly/satoshifujimoto