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バラエティを捨てよ、 ドラマを見よう

マツコデラックスさんのなにかしらの番組を見ていたら、SNSの使い方を若者に学ぼう的なスタンスの企画で、フォロワー数自慢な女子二人が
# ハッシュタグがどうとか
トレンドにするにはどうとか
キャッキャ言いながら大人たちに指南していて、一緒に見ていた高校一年のうちの娘が
「こういうので若者が馬鹿なイメージが広がるんやろなあ」
と言った。

確かに、テレビに映る彼女たちは、大人たちがイメージするところのインフルエンサー女子で、馬鹿キャラ的な演出がバラエティ的には百点なんだろうけれど、見ている方は置いてきぼりというか、とにかく虚しいだけだった。

なんにしろテレビの作り方がここ数年まったくチェンジしていないことが露呈したような、そんな気持ちになった。そういう空気を最前線で感じているであろうマツコデラックスさんも、僕にはなんだか悲しげに映った。

✳︎

プロのタレントさんが素人さんをいじる時代が終わって、いまは素人さんがタレントさんをいじる時代。だけどそれは「いじる」という構造自体からは何も脱していない。

こういうバラエティ番組づくりも、そろそろあたらしい型をみつけなきゃいけないとは、みんなわかっていると思うんだけど、こんなにもチェンジできないままでいるということは、もはや従来のテレビづくりに染まった人たちが自らチェンジするのは無理なのかもと最近は思っている。

例えば、ぺこぱが売れたことの本質は、ボケとツッコミという構造を変えたのではなく、ボケを傷つけないツッコミというちょっとした変化球でしかない。つまり、構造的には何も新しくなくて、シンプルに、いまっぽいからウケたのだと思うし、少し残酷なことを言うと、最大公約数なものが受け入れられやすい箱になってしまった現在のテレビで、心底面白いのではなく、どこにもトゲがなくて使いやすいから売れたんだろうと思う。決してそれはわるいことではないけれど。

そんなテレビのなかで、鋭く尖り続けているのはバラエティではなく、完全に「ドラマ」だけだと思う。

✳︎

半沢直樹のようにはっきり明確に現政権を批判しているものはもちろんのこと、多くのドラマが現状の社会を変化、打破しようと訴えている。ドラマ制作者のあがきは、いつも見ていて胸を打つ。そういった近年のドラマの強いメッセージとクオリティの高さを見るにつけ、バラエティの時代はもう終わったんだなあと思う。

40年以上テレビが大好きで、特にお笑いやバラエティに染められてきた自分はいまでもテレビが好きだけれど、最近はもうバラエティをほとんど見なくなってしまった。それはバラエティ番組が常に、実態のない世間に忖度し、すり寄り、迎合しているからで、そんなものを見たくて僕はテレビを見ているんじゃないってことに気づいたからだ。だから僕はもう、ドラマばっか見てる。

ドラマはつくられた世界であるということを共有した上で見るものだ。

「このドラマはフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。」

この伝家の宝刀を最後にぬきさえすれば、現実社会を強く批判し、声を上げ、拳を掲げることができる。いま多くの優秀なクリエイターがドラマの世界に入っていることは間違いない。ここ数年、ワンクールに必ず一つか二つは、大きな気づきと反骨を感じる作品があるというのは、マジ、テレビ捨てたもんじゃねえぞと思う。ゴールデンタイムバラエティはどうしようもないけれど。

かつて社会生活不適合者の集まりだと言われた芸人さんたちが、テレビで発言することの価値は、大衆の代弁者だった。上層部に媚びるばかりの政治家たちや、企業人のなかで、社会的弱者の立場からマスメディアを通して声を上げてくれることの価値。だけどいまはもうバラエティに芸人さんはいない。いるのはタレントさんだ。もちろんそれを求める人もいるから、それはそれでよいのだけど、だからこそ僕は、ドラマから聞こえてくる小さきものの声に感動し、心震わせる。

では、テレビ全体がこんな状況のなか、どうしてドラマだけがこんなにも尖っていられるのか? その理由はただ一つ。

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バラエティを捨てよ、 ドラマを見よう

藤本智士(Re:S)

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編集者。1974年兵庫県在住。『Re:S』『のんびり』編集長。著書に『風と土の秋田』リトルモア、『魔法をかける編集』インプレス。『アルバムのチカラ』(共著:浅田政志)赤々舎。その他、『ニッポンの嵐』『るろうにほん 熊本へ』(佐藤健)など、手掛けた書籍多数。

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2006年に創刊した雑誌「Re:S(りす)」編集長の藤本智士が、いまあらためてお届けする、あたらしい“ふつう”のnote「Re:S」。 日々のこと。旅のこと。地方のこと。編集のこと。 記事アップは月4回以上かなぁ。

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