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半歩先でいいんだよ。

逃げ恥SP、ほんとよかったですね。
ドラマって、漫画(原作)って、こうやって僕らの気持ちを代弁したり
ほんの少し先の未来を見せてくれたりするんだよなあ。と強く思う。

と思っていたらハフポストさんの、こんな記事が飛び込んできた。
(以下、ネタバレ注意です)

なるほど。

ドラマのなかで男性の育休についてかなり踏み込んだ未来をみせてくれたのに、最終的にはコロナ禍で育休を返上してしまった展開にとてもがっかりした。

という内容。

自民党じいちゃん達へのカウンターとも取れる夫婦別姓についての真っ当すぎる意見や、通常放送時からも話題だった事実婚。後のドラマ『私の家政夫ナギサさん』に繋がるような家事代行の肯定。ジェンダーフリー。働き方改革の矛盾にいたるまで、さまざまな現代的事象が描かれる逃げ恥は、まさにタイトルのとおり『逃げるは恥だが役に立つ』を感じさせるドラマだ。そもそもこのタイトルはハンガリーのことわざ「Szégyen a futás, de hasznos.」の和訳で「恥ずかしい逃げ方だったとしても生き抜くことが大切」という意味だけれど、それまで肩身の狭い思いをしてきた多くの人たちが、このメッセージに勇気をもらった。

だからこその期待というのはあると思うのだけど、僕のように地方と都会を往来するような(コロナ禍はオンラインで)仕事をしていると、都会から見て0.2歩先くらいの未来が、地方では3歩先に見えたりするといったことを頻繁に感じる。それゆえ、真に世の中を動かそうと思うクリエイターはみな、頭のなかのビジョンをいかに現実に近づけるかということを考える。決して遠い未来だと感じさせない編集力。まったく想像もつかない世界ではなく、そのイメージをせめて一歩先くらいに留める努力が重要だと僕は思う。

僕が『逃げ恥』を心底素晴らしいと思うのはそこだ。

以前僕は、自著『魔法をかける編集』においても、タイガー魔法瓶社長の「うちはとにかくお客さんの半歩先のものづくりをしてください。一歩先は行きすぎです」という言葉について書いたけれど、『逃げ恥』もそうなのだ。

できる限り多くの人にとって、現実的な未来だと感じてもらうこと。決してぶっとんだ未来ではなく、近々こうなりそうだよねと感じさせるイメージづくり。だからこそ変わっていく世の中。
『逃げ恥』はとても意識的に半歩先のビジョンに留めている。

だから、上述の記事を書かれた方の主張はとてもよくわかるのだけれど、一方でドラマの作り手のみなさんとしては、コロナ禍で育休を返上せざるを得ないところに、半歩先的共感があるのだと信じたのだと思う。僕は、そこに敬意を払いたいし、それはとても重要なポイントだと思う。


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