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サポーターよりプレイヤー
トラベルデザインというストレートな社名のもと、インバウンド事業で秋田を盛り上げようと泥んこになって頑張っていた須崎くんという友人がいる。
そんな彼が秋田魁新報の記事に取り上げられているのを見て思わず連絡をした。
というのも、彼はこの記事にあるように出会った頃の事業から完全に業態転換していた。その理由に新型コロナウイルスの感染拡大があるのは間違いないはずだけど、何よりこんなふうに見事にチェンジする軽やかさに、須崎くんらしさを感じた僕は、久しぶりに彼の話を聞きたくなってお会いすることになった。
秋田駅近くのスターバックスで待ち合わせ。気づけばもう4年程会ってなかったけれど、彼は変わらず愛嬌のある笑顔で向かいの席に僕を促してくれた。
出会った当時の彼は秋田県の羽後町というスペシャル雪深い町で活動をしていて、それこそ羽後町の道の駅でバッタリ会ったのが最後だったように思う。彼はもともと大阪出身で、関西人の血のせいか初対面から初めて会ったような気がしなかった。未経験なフィールドにダイブし、よい意味で失敗もたくさん繰り返していた彼に「トラベルデザイン」というより「トラブルデザイン」だな、なんて冗談を言えるほどには仲良くさせてもらっていた。
当時の彼は秋田の国際教養大学を卒業し、学生時代にその魅力に取りつかれた秋田県でそのままトラベルデザインを起業。得意な語学を活かして、海外の人たちに秋田の素晴らしさを伝えたいと地域に入り込み、泥んこというよりは雪まみれになってさまざまに取り組んでいた。
そんな彼がいつのまにかスムージー屋さんになっていた。
そもそも彼が秋田という土地の魅力に嵌まったのは、とある農家民宿さんとの出会いが大きかったらしい。しかし農家民宿を営む農家さんたちと親交を深めていくにつれ、旅行代理店的な立ち回りで海外からの旅行者と農家民宿をつなげていく自分の立ち位置に疑問を感じはじめたという。どこまで行っても農家さんではない自分が、一歩外から一緒に頑張りましょうと叫ぶことの不毛さは、なんだか共感できる。
地域の人と旅行者をつなげる。言葉にすると聞こえはいいけれど、「つなげる」という他動詞は、「つながる」という自動詞には到底敵わない。つなげる立場の無力さと蚊帳の外感に何度も淋しい思いをしつつ地域編集に取り組んできた僕としても、須崎くんの気持ちがわかる気がしたのだ。
ずっと抱いていた違和感がコロナ禍できっと露呈したのだろう。そこで大きく舵を切り直した彼を僕はただただ尊敬する。けれど彼は「トラベルデザイン」と、新たに始めたスムージー屋さん「ひなたエキス」とは、やっていることの根っこが同じなんですと言う。秋田の農家さんの生き方や、そこで作られる農産物の美味しさを伝えたいという気持ちは同じ。そのアウトプットが変わっただけだと。たしかにその通りだし、なんだったら、よりその思いを明確に表現しているようにも思う。
彼がひなたエキスで扱う野菜は、これまで培ってきた農家さんたちとの関係性あってこそのものばかり。というのも彼は、通常出荷には向かない規格外の野菜や果実を農家さんから買い取って、スムージーやポタージュにして販売している。農家さんも彼も、どちらにとっても良い試みだ。
しかしそういった規格外の野菜だからこそ、誰にも彼にも譲ってくれるわけではない。そんな彼を救ったのは、まさに彼の立ち位置の変化だった。
「結局地域に求められているのはサポーターじゃなくて、その地域でやるプレイヤーなんだってことに気づいたんです」
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