無題19

反省の一年。そして、僕を助けてくれたもの。

 2019年、年始のおみくじにこう書いてあった

心をかたく保ち 力の限り努力し 一時の不運に思い迷ってはいけません……

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 なのに……

 2019年、僕は力の限り努力しなかった。

 一時の不運の度に迷い、意欲を削がれるような気持ちになって。結果、力の限り努力しなかった。そんな一年だったなと思う。

 自分がおそろしくダメな分、周りの仲間に助けられた一年でもあった。

◉タケヒロとミズキのこと

 2019年の一つのトピックはタケヒロとの出会いだ。物理的な出会い自体は2108年だけれど、今年の2月にタケヒロとともにオホーツクで流氷を見た経験がタケヒロのためじゃなく、なにより自分のためになった。

 以下の記事のとおり、彼は複雑心奇形という心臓の病気とともに生きている中学生だ。

 彼とそのお母さんとの出会いから吉藤オリィさんがつくる「OriHime」と出会い、そしてオホーツクの流氷を見た。一緒に。

 その時の様子は以下にある。

 タケヒロとユウさんに出会ったことが僕の視界を優しく広げてくれた。そしてそんな人物がもう一人いる。この秋になんとか出版までこぎつけた『のんびり NONビリ』の出版社のミズキという友人だ。

 彼女のことについて書いた記事もどうかぜひ読んでほしい。2019年春の記事だ。

 複雑心奇形のタケヒロ。そして、脳脊髄液減少症のミズキ。彼らの共通点は、一見、とても健康にみえることだ。

 僕たちは目にうつる姿だけでわかったようになりすぎる。

 ブログにも少し書いたけれど、僕は詩人、金子 みすゞさんの「星とたんぽぽ」という詩が好きで、時折見返す。

星とたんぽぽ  金子 みすゞ

青いお空のそこふかく、
海の小石のそのように、
夜がくるまでしずんでる、
昼のお星はめにみえぬ。
見えぬけれどもあるんだよ、
見えぬものでもあるんだよ。

ちってすがれたたんぽぽの、
かわらのすきにだァまって、
春のくるまでかくれてる、
つよいその根はめにみえぬ。
見えぬけれどもあるんだよ、
見えぬものでもあるんだよ。


 タケヒロとミズキのおかげで、これまでは見えていなかった人々の苦しみや喜びを知ったことは僕にとってとても大きな出来事だった。

 ちなみにこの夏の選挙で僕は、山本太郎さん率いる「れいわ新撰組」に投票した。こういうことを書くとツイッターのフォロワーが減るとかいろいろ言われるけど、知ったこっちゃあない。僕は重度障害者を国会に送り込んでくれた、れいわ新撰組に感謝し、期待している。

 そして僕は、この「星とたんぽぽ」のように見えぬけれども確かにあるべき努力ができなかった。

 なんども言うが、僕の今年はそんな一年だ。どうしようもなく反省の年。

◉発酵ツーリズム展

 今年の春。小倉ヒラクという愉快な友人の声掛けから関わらせてもらうことになった、渋谷ヒカリエ、d47ミュージアムでの発酵ツーリズム展『Fermentation Tourism Nippon 〜発酵から再発見する日本の旅』。そしてその関連書籍『日本発酵紀行』の出版は、とてもありがたい出来事だった。

 この展覧会において、僕が努力しなかったとは言わないけれど、それは当たり前に自分の役割の部分を全うしたにすぎない。ヒラクはもちろん、デザイナーとして展覧会作りを並走してくれた財部裕貴くん。書籍の精度をあげてくれたRe:Sの竹内厚、そしてブックデザインの堀口努さん。

 彼らが入稿ギリギリまで努力してくれたからこその成果だ。ちょっとくらい悪目立ちするように、チームプレイを自分の手柄みたいに話すことがうまくなった僕だと思うけど、こればっかりは無理だ。この展覧会を僕の成果物だと胸張って言う図太さは僕にはない。

 とにかくこの展覧会と書籍において、きちんと成果を出せたことは、小倉ヒラクの深い思考と行動のおかげだ。正直僕はヒラクに出会い、そして
「発酵」と出会って救われた。

 それが証拠に「編集発行」ではなく「編集発酵」が大事だなどと冗談めかして言っていたことが、以下の連載のように、もはや僕の大きなテーマになりつつある。

◉発酵界隈のこと

 そう思えば今年は本当に発酵界隈とも言うべき仲間や事象にたくさんの喜びをもらった。

 なかでも、以前秋田県のフリーマガジン「のんびり」で特集した秋田の偉大なる杜氏さんたちの物語を、それを読んだNHK の若いディレクターが『プロフェッショナル』という番組に昇華してくれたことは、本当に嬉しい出来事だった。

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 自分が手がけたものが次のクリエイティブをつくっていくことほど、1クリエイターとして嬉しいことはないんじゃないだろうか。

 来年(2020年)は、浅田政志くんとの共著『アルバムのチカラ』が原案の一つとなった、映画『浅田家!』も公開される。

 おかげで、主演のニノとも『ニッポンの嵐』以来久しぶりに会えたりして、ご縁は面白いものだなあと思う。ちなみに、僕は彼の結婚を心の底から祝福してる。何と言っても彼の奥さんは、めちゃめちゃ素敵な女性。世間の身勝手な風評に耐えて、どうか前を向いて幸福に暮らしてほしい。

 さて、そもそもこんな風に時間をかけて、新たなクリエイティブにチェンジしてくれること自体がとても発酵的だ。

 今年春に参加させてもらったヒラクの地元、山梨県甲府での『発酵マルシェ』も、五味醤油の兄妹とともに、ヒラクたちが10年間、腐敗させずに発酵させてきた証。

 また、『発酵のまち』を謳う、新潟県長岡市とのご縁や、そこから、星野概念くんと仲良しになったことも嬉しい出来事だった。そこから僕は今年3度も新潟県の長岡市に呼んでもらった。来年はさらにお仕事できればよいなとも思っている。

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◉努力を積み重ねてきた人たち

 あともう一つ発酵のことで強く記憶に残っているのは、地元神戸で開催した、アミーンズ オーブン三島さんとタルマーリー格さんとの鼎談。

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 定員50名ほどだったはずが、いつのまにか予約150名とすごい数になったのも、世間の「発酵」に対する興味の深さの現れだったように思う。

 発酵業界のレジェンド的な、ヒッピーおじさんとパンクおじさん二人のトークは、内容的にも最高に面白くて、それこそ偉大なる先輩たちの尋常じゃない努力の積み重ねに、身が引き締まる思いになった。

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 そんな努力の人と言って思い出すのは高橋優くん。努力しているうように見せて、適当にやっている人はたくさんいるけれど、いい加減にみせて努力している人は少ない。彼はまったくもって後者だ。裏の努力を見せないけれど、彼はいつでもその努力を結果として発揮してくれる。

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 もう4年目となる、彼とのガイドブック制作の現場で、僕はそのことをどんどん感じるようになってきた。

 一方僕は、全体進行の管理が甘く、ティザームービーが納期ギリギリになってしまったり、クリエイティブの内容というよりディレクターとしての反省点がたくさんあった。

 そんななかでインタビューさせてもらった優くんのインタビュー。聞き手として僕は彼の芯にしっかり触れることが出来ただろうか。もっともっと準備できたんじゃないか? 彼のプロフェッショナルに支えられ、よい記事になってはいるけれど、ほんの少し反省の影が僕の心をよぎる。

◉一番の反省、のんびり写真展

 そして夏から秋にかけての一番は、なんといっても秋田県立美術館での展覧会、のんびり写真展「あこがれの秋田」だ。

 もうこれは本当に反省しかない。言葉にするのは辛いけれど、大失敗だった。

 その原因は一つ。チームプレイができなかった。

 今回のパートナーである某テレビ局の方の、言っていることと現実の違い。金銭的な約束の不履行や、そもそも旧態依然とした組織のルールに、日に日に心が折れていった。それでも、なんとか変化してもらいたい、奮い立たせたいと思って放った言葉や行動がすべて裏目にでた。

 結果、互いの不安を消せないままに開催日が近づき、そして開催以降もまったく意思の疎通ができないまま、結果展覧会として動員数的にも大きな失敗となった。

 何もかもが僕の立ち回りの下手さといたらなさの結果だ。関係者には本当に謝罪をしたい。

 それでもあの展覧会を開催したことに意味があるとしたならば、それはフリーマガジン「のんびり」というものに、ピリオドを打てたことだ。

 明らかに僕はかつて編集していた雑誌「のんびり」の次を見ていた。なのに「のんびり」の展覧会をしようとしたのは最後にけじめをつけたかったからだ。しかしそれは本当に個人的なこと。そこに多くの人を巻き込んでしまった。本当に申し訳なく思っている。反省しかない。

 しかし、そんな僕の気持ちを救ってくれたのは「いちじくいち」であり、それを支えてくれた、のんびり秋田メンバーだった。

 僕が描いたビジョンをカタチにするべく、懸命に努力を重ねてきてくれた矢吹史子率いるのんびりチーム。そして開催地、秋田県にかほ市のメンバーたち。そのことはこの記事に書いているから、ぜひ読んでほしい。今年一番呼んでもらいたいエントリーかもしれない。

 つらく反省の多い2019年のなかで、ダントツでナンバーワン嬉しい出来事だったように思う。

 あ〜、そのほかにも反省点をあげればきりがない。

 けれどそんな2019年も終わりだ。来年僕は幾つかのあたらしいチャレンジを考えている。2019年の反省を糧にして、これまでの蓄積を発酵させていく。絶対に腐敗させない。そう決意している。

 ということで、今年一年、本当にありがとうございました。この反省を胸に、しっかり取り戻します。なので、どうか来年もお付き合いください。みなさん良いお年を!


 以下は定期購読にみなさんにほんのオマケとして、来年の僕のチャレンジをちょこっとだけ先出し。

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