言葉を記号化しないために
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言葉を記号化しないために

「我々は家族や仲間との”絆”の大切さに改めて気づきました。危機に直面した今こそ”絆”の力を発揮するときです。日本の”絆”の力を呼び起こす、それが私の使命です」

これは岸田総理の所信表明演説のことば。こうやって、言われなくてもわかっているようなことをもっともらしく言う人には、この発言を聞いた僕の10秒を本気で返してほしいと思う。

その「絆」とかいうものをもって仲間の不正を隠し、危機に直面してる今?というタイミングでその「絆」パワーを使って仲間を優遇してきたのが自民党政権だった。もちろん自民党が果たしてきた良いことも山のようにたくさんあって、真っ当な政治家さんもいらっしゃると思う。岸田さんだって信念をもってやってきたに違いない。けれど、組織としての度が過ぎた「絆」には強く「NO」と言いたい。

「絆」とやらをもって、不正な金銭授受を問われる仲間に鞭も打たない。「絆」の強さは国民との公約より強く、夫婦別姓の議論すらやめる。前言撤回はいいとしても、その理由すら言わない。すべては「絆」が大事だから。

「絆」ってなんだっけ?

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言葉は祈りそのものだ。

「絆の大切さ」も「愛は地球を救う」も「平和の祭典」もみんな、個人や組織の損得のための道具に使われ、言葉そのものが持っていたはずの「祈り」が薄められてきたように思う。

「家族や仲間との”絆”の大切さに改めて気づきました。危機に直面した今こそ”絆”の力を発揮するときです。」

もし、全く同じこの言葉を、コロナ禍でなお踏ん張って先日営業再開してくれた大好きな居酒屋の母さんが言ったとしたら、僕はきっとこの時間返してなんて思わないだろう。よいもわるいも、そこに僕はきっと「祈り」を感じとるからだ。

言葉は誰がどのタイミングでどう放つかという、言葉以外のコンテクストとともに意味が立ち上がる。もっと言えばそのコンテクストにこそ実態がある。

ツイッターでクソリプと言われちゃうようなリプライをする人は、それを知らないんじゃないかと思う。言葉そのものの表面的理解にとどまる(実際はそれすらできない場合が多いようだけれど)くらいなら、AIの方が素晴らしく優秀だ。

そういう人ほど、言葉に振り回され、言葉に溺れているようにも見える。僕はリアルに泳ぐのが苦手だけど、言葉の海だけはうまく泳ぎたい。

✳︎

泳ぐで思い出したけど、最近、『ロバート秋山の市民プール万歳』というアマプラの番組をよく見ている。

いろんな町の市民プールを訪ね、そこで気持ちよさそうに泳ぐ秋山さんが、最後には泳ぎ疲れてクタクタになりながらも幸福そうにしている(大抵、泳ぎ後にドカ食いしてる)のが好きでついつい見てしまう。

それが市民プールであってもインターネットの海であっても「泳ぐ」という行為には気持ちよさとともに疲れが伴うし、だからこそ伝わるものがあるんだろう。泳ぐシーンなしに見るグルメより全力で泳いだ後の食事だからこそ伝わるものが確かにある。

きっと言葉も同じだ。「疲れ」を避けるような言葉遣いは、自ら言葉を記号的にしてしまう。冒頭の岸田首相の発言は果たして本気で泳いでいるだろうか。

軽薄に使われ疲弊した言葉のチカラを取り戻すためにも、いまこそ言葉に祈りを込めて言いたい。

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藤本智士(Re:S)

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編集者。1974年生まれ。『Re:S』『のんびり』『なんも大学』編集長。著書に『風と土の秋田』『魔法をかける編集』『アルバムのチカラ』。その他『ニッポンの嵐』『るろうにほん 熊本へ』(佐藤健)など手掛けた書籍多数。 http://bit.ly/satoshifujimoto