「自助」は他人に求められるものじゃない。
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「自助」は他人に求められるものじゃない。

首相就任時だったか、菅総理が政策理念として掲げる「自助・共助・公助」に対して、野党のどなたかが「まず自助というのは政府の役割を放棄しているに等しい」と批判した。
僕はこれを至極真っ当な批判だと思ったけれど、常に「経済」というモノサシをあてがう癖のついた人たちはその批判こそが的外れだと批判した。

その趣旨としては、地域や家族による「共助」や、大切なセーフティーネットである「公助」の前提にあるのは「自助」をベースにした経済活動なのだから、まず「自助」を一番に掲げるのは当然だと。

しかし、当時野党のみなさんが批判した意図や僕自身が共感した主旨は、まさにそこで、構造的に「自助」があってこそ「公助」があるなんてことは言われなくともわかっているということだ。

言うならば、
「自助」は他人に求められるものではない。
ましてや政府に。

政府としての役割を考えるならばせめて「公助、共助、自助」の順番だろう。我々は当たり前に「自助→共助→公助」という流れを自然に認識して生活している。だからこそ、厚労省が「生活保護の申請は国民の権利だから、ためらわずに相談してください」と強く制度利用を促してもなお、利用者が少ないのだ。実際コロナ禍以前は、生活保護制度利用者は減少の一途だった。というかこのコロナ禍を経てもなお利用者の増加率は3%にも満たない。これは、日本人の日々の幸福感に強く影響するとても大きな問題だと思う。

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首相までもがわざわざ「自助」を訴えるその奥にあるのは蔓延する自己責任論だ。

自己責任という言葉ほど、その言葉と裏腹に他人に責任を押し付ける言葉はないなと思う。「そこは自己責任でお願いします」という言葉を我々は「僕は知りませんから」「私は関係ないですからね」という意味で日常的に使っていることからわかるように、自己責任は「自助」の面積を広げ、「公助」までの距離を限りなく遠ざける。

某メンタリストさんの動画や、そこに共感する人々というのは、まさにその果てにあるのだとつくづく思う。

自己責任はもはや活字にすべき言葉ではないのかもしれない。「自助」のもと、当たり前に「互助」(ご近所付き合いや地域内での助け合い)があった時代に、自己責任なんて言葉はここまで受け入れられなかったはずだ。僕が常に、都会よりも田舎にこだわるのは「互助」の断片が残っていると感じるからだ。それはときに、余所者を排除しようとする動きになったり、他者をつよく攻撃したりすることにつながったりもするけれど、それすら「互助」のひとつの発露だと思っている。

ときに「しがらみ」として煙たがられるこの内輪感を否定することから、都会的な自己責任論は増大した。またそれは経済成長という名の下でひたすらに利潤を増やそうとする企業にとってとても都合がよかった。それは蜜月の仲である政府にとっても。

その関係は当たり前に地方政治にも影響を及ぼしている。例えば、宮城県の村井知事が仙台市長に宮城スタジアムでの東京五輪のサッカーの無観客開催を求められた際、村井知事は「県内の首長6人や経済界から(有観客開催へ)の賛同が寄せられた」と、その切実な願いを退けた。政治と経済界との深いつながりをこんなにも開けっ広げに話すくらい感覚が麻痺してしまっているということに僕は驚いた。

僕は常々「お金」というものは、人間同士の面倒な「関係性」を切るための最高に便利な発明だと言っている。つまり「お金」と「自己責任」は、「経済界」と「政治」と同じくらいしっかりと紐づいているように思う。某メンタリストさんの評価を担保していた、動画の再生回数やチャンネル登録者数というのは、まっすぐに=「お金」であることからわかるように、僕たちはもう本当に悲しいくらい「お金」に弱い。お金に悩み、お金に振り回され、お金に一喜一憂している。だから僕たちが穏やかに暮らすために、目指すべき世界というのは、言ってしまえば「お金を使わなくていい世界」なのだと思う。それがあまりに極論に聞こえるならば、せめて「お金を使わなくていい場所を増やすこと」が大切なのだと思う。

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藤本智士(Re:S)

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編集者。1974年生まれ。『Re:S』『のんびり』『なんも大学』編集長。著書に『風と土の秋田』『魔法をかける編集』『アルバムのチカラ』。その他『ニッポンの嵐』『るろうにほん 熊本へ』(佐藤健)など手掛けた書籍多数。 http://bit.ly/satoshifujimoto