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美意識を見る眼の話

今の世には、裁断から発想する者、裁断の技術も知識もなく自由に発想する者、この二種しかいないが、真のデザイナーとはその両者ではなく、衣服とは何かと問い、人間の身体だけでなく精神を知り、くらしや社会、芸術を理解する者のことだ。

とは、尊敬する編集者、花森安治のことば。

ちょっぴりシニカルに、それでいてこれほど的確に良質なものづくりの本質を突いた言葉をほかに知らない。

5年前くらいに開催されていた花森さんの回顧展でこの言葉に出会って以来、僕は地域編集者として地域の人たちに伝えていくべきことはこれなんじゃないかと思っている。

「真の利他性は、魚の釣り方を教えること」と言ったのは、禅僧であり人類学者でもあるジョアン・ハリファックスだけれど、花森さんに倣うならば、「真の利他性は、魚釣りとは何かについて考えさせること」なのかもしれないと思う。

流行っているから
売れそうだから
人気が出そうだから

さまざまが逼迫し、焦りを覚えるほどに、そんな風に大切な何かをショートカットしたものづくりが増えてくる。

ついつい焦りを覚えてしまう今だからこそ、僕たちは冒頭の言葉を肝に銘じなければいけない。

モノであれ、場所であれ、イベントであれ、その根源を問い、個人のエゴでまた一つ不要なモノをこの世界に生み出そうとしてはいまいか、そこに生物学的な切実さがあるのか。はたまた文化芸術としての強い志があるのか。

そう言ったことをじっくり考えるのに今ほど最高なタイミングはない。どうか焦らず、目の前のプロジェクトに取り組んでほしい。都会は反面教師にすべきイベントやお店の展示場のようだ。何より焦リンピックともいうべきスポーツの祭典は、文化の衣を着たマネーの虎のようにもみえる。

そんないま僕たちが頼るべきは美意識の有無なのかもしれない。と思う。それが正しい間違っているではなく、そこにその人の矜持があるかどうかを見るチカラが必要だ。それが単なる主義主張なのか、美意識なのか、それを測るポイントはただ一つ

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藤本智士(Re:S)

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編集者。1974年生まれ。『Re:S』『のんびり』『なんも大学』編集長。著書に『風と土の秋田』『魔法をかける編集』『アルバムのチカラ』。その他『ニッポンの嵐』『るろうにほん 熊本へ』(佐藤健)など手掛けた書籍多数。 http://bit.ly/satoshifujimoto