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みえないものに立ち向かう勇気

 まず最初に言っておくと、これから記す文章は、僕が2011年の6月頃に書いた文章だ。言わずもがな東日本大震災、さらには福島第一原子力発電所事故に対する不安で世の中が覆い尽くされていた頃。

Re:Standard Exhibition「3つのお守り」
〜すいとうとご朱印帖と家族しゃしん・展〜

 そんなタイトルの展覧会を兵庫・東京・青森で開催した。その冒頭のあいさつ文だった。

 東日本大震災から9年。そして新型コロナウイルス感染拡大と、目に見えないものに対する不安が日に日に増大するいま、あらためて読んでもらいたいと思ったのでnoteに書き写してみる。

 10年近い前のテキストだし、稚拙且つ、ずいぶん能天気なテキストだけれど、それくらいのトーンでなければみんな不安で押しつぶされそうだったのかもしれない。

 とにかくそんな前提を共有してもらった上で、以下のテキストを読んでみてほしい。


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さて展覧会スタートですよ。
と、ここでいきなりですが手品をします。
でも有名なマジックなので知っている方はほら、なんというか……空気読んで驚いてくださいね。

さあはじめましょう。

では、以下のカードから一枚カードを選んで覚えてください。

無題47_20200312121226

一枚選びましたか?
では、そのカードをよ〜く念じてください。
よ〜〜〜くですよ!

しっかりそのカードのことを念じてくださいね。

はい。

では、あなたの選んだカードを抜いてさしあげます。

いいですか?

いきますよ!

ジャン!!!

無題47_20200312125338

ほら⁉︎ どうです?
あなたの選んだカードが消えてませんか?

すごいでしょ?

(知ってる方は一緒に驚いてくださいね。約束のはずですよ。)

さて、この種わかりますか?

そうです。

ここにはあなたが選んだカードどころか、最初に提示したカードが一枚たりともないわけです。

ほら、見返してみてください。

ね?

つまり、人間の視野はとても狭い。

見たいものしかみないんです。

そしてそれが人間です。

ぼくは、このことを自覚することがとても重要だと思っています。

自分たちの、この両の目に映るもの。それらすべてを見ているように思いますが、実のところぼくたちはそのほとんどを見ていません。

そしてその在るのに見えていない大部分に、自分たちの知らないさまざまな物語や暮らし、愛しくてたまらない世界があるんです。

ぼくたちは雑誌「Re:S」の旅をとおしてさまざまな出会いを得てきました。それはぼくたちの予想をはるかに超えるものばかり。

ぼくたちの計画や予定なんてお構いなしに次々と訪れる奇跡の出会いにぼくたちはなんだか目に見えない意志やチカラを感じていました。

しかしそれは、妙に宗教的なことでもスピリチュアル的なるものでもなくふつうのことだと思います。

とても自然で当たり前のこと。

だからぼくはいまあらためてこう思うのです。

ぼくたちに見えているものがとても愛しいように、みえてないものもとても愛しいのだと。

ぼくたちはいつも馬鹿みたく根拠の無い自信をもって旅をつづけています。でも、あたらしい時代がおとずれたいま、それはとても大切なことなんじゃないかと思っています。

経済が右肩上がりに成長しつづけた時代は過去の成功を真似すればよかったかもしれません。だけど、そんな時代は綺麗に終わりました。ぼくたちには、まだ見ぬ未来に立ち向かう勇気が必要です。

その根拠のない自信は自分の視野の狭さを理解することからはじまります。そしてみえないものを信頼するのです。

その信頼をぐっと収めたお守りを持ち歩くことがこれからの時代を生き抜くRe:Sのささやかな提案です。

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しかし、言ってることが変わんないなあ。成長してないなあ。と恥ずかしい気持ちにもなるけれど、いまの世の中でも通じるんじゃないかとも思う。

未曾有の災害を前にしてなお変われなかったことのツケがいままわってきているように僕は思えて仕方ない。

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