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シェアする気持ちを忘れないために。

今年4月、僕はとても困っていた。
それもこれも、そう、新型コロナウイルスのせいだ。

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ここで話は一気に2004年に飛ぶ。

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ペットボトルをポイポイ捨ててしまうことに抵抗があった僕は、オフィスや学校に水筒を持参する世の中を編集したいと『すいとう帖』という本を制作。一人ひとりが水筒を持つ世の中を提案した。

さらに「マイボトル」という言葉を生み出したことから、水筒の商品棚を『マイボトルコーナー』という名称で展開してくれる店が増えたり、スターバックスさんのように、マイボトルを持参すればそこにドリンクを注いでくれる『マイボトルカフェ』の動きが広がるなど、徐々にマイボトルという言葉が認知されていった。

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マイボトルが広がっていくことはとても嬉しかったのだけど、一方で僕は自分が持ちたいと思う水筒がないことに悶々としていた。そこで、2006年創刊の雑誌『Re:S(りす)』で特集「すいとうのある暮らし」を展開。誌上で、理想の魔法瓶を一緒につくってくれるメーカーさんを募集した。

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すぐさま手をあげてくれたのはタイガー魔法瓶さんだった。
そこからタイガーさんとの、理想の水筒づくりがスタートする。
2006年のことだ。

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タイガー手紙修

しかしタイガー魔法瓶さんとのRe:Standardな魔法瓶開発は、なかなか成就しないまま、12年もの時が流れてしまった。

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けれど、その間にマイボトルは一つの文化として定着した

当時衰退の一途を辿っていた魔法瓶の売り上げは、現在、2004年の6倍以上にもなっている。その背景には、バブル終焉後、その反発のように芽生えた地球環境への意識があると思う。また、90年代に入って核家族化が加速し、2000年代以降はインターネット・スマホ・各種SNSが普及。世の中がどんどんパーソナル重視になっていったことも大きく影響した。ある意味、そういう世の中に背中をおされてマイボトル文化は定着していったのだ。

ゆえに、ここ10年のマイボトルの正義は、とにかく「軽くて小さい」だった。

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しかし僕が、タイガー魔法瓶さんと一緒に開発をつづけるRe:Standardな水筒において、絶対に譲れなかったポイントがコップ付きであること

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ときには粘土をさわってみたりなどして、とことんまでコップにこだわって水筒開発を続けた僕たちは、やがてそれを一つの形に昇華させた。

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この写真は2011年頃に発売寸前まで持っていった水筒の模型だ。

しかし、前述のようにパーソナル化がすすみ、軽量コンパクトなものが求められる世の中で、僕が望んでいるコップ付きの水筒は、出しても売れない。それが営業さんたちの答えだった。確かにそうかもしれないと僕も思った。けれど、それならば僕は待とうと思った。

世の中がチェンジするまで

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小学生1

当時なぜそこまでコップ付きの水筒にこだわったのか? それはこんな体験がきっかけとなっている。

当時僕の事務所の一階にはカフェがあった。すぐ近くに小学校があったことから、下校中の子どもたちが店に入ってくることも多く、カフェだというのに平然と水筒のお茶を飲む子どもたちの姿を微笑ましく見たりしていたのだけど、ある時、小学3年生くらいの女の子が突然僕に「飲む?」と、水筒のコップに注いだ麦茶を差し出してくれた。僕は「あ、ありがと」と、その麦茶を一気に飲みほした。

あまりにキンキンに冷えたその麦茶に驚いたと同時に、そうやって女の子が飲み物をシェアしてくれたことの尊さにハッとした。

コップがあるからこそ分け合える美味しさ。
コップがあるからこそ分かち合える気持ち。

その体験以降、僕にとってコップは欠かせないものとなった。

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さすがに諦めそうになっていた2018年、
再びその時計が動き出す。

2006年から12年の時を経て、タイガーさんと一緒につくった、あたらしい“ふつう”のすいとう、『&bottle(アンドボトル)』がついに発売されることになったのだ。

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正直、発売前の展示会では「コップ付きは売れない」と多くのバイヤーさんに言われてしまった。けれど、僕はそんなことはないと思った。世の中は変化している。

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結果、&bottleは、2018年の売り上げ好調商品となり、目標だった15,000本以上が全国のみなさんのもとに旅立っていった。

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意外にも売れた&bottleの登場を受けて、タイガー以外のメーカーさんも、こぞってコップ付き魔法瓶を市場に投入。2020年現在ではさまざまなコップ付きボトルが売り場に並んでいる。長きにわたって日陰に追いやられていたコップ付きボトルは、再びスタンダードとなった。

そんな風に「&bottle」および、コップ付き水筒が世間に受け入れられたのはなぜか? そのキーワードは「シェア」にあったと僕は考える。

2010年代〜の地球環境の深刻化と、経済成長神話の崩壊を前に、多くの人がエネルギー問題や、低すぎる日本の食料自給率などについて考えはじめた。また、東日本大震災以降の地域コミュニティの再評価もあって、「所有」より「利用」。つまりシェアリングエコノミーな現在と未来について、よりリアルに想像しはじめたことがとても大きいのではないかと思っている。

実際、シェアハウスが増えたり、Airbinbが普及したり、タイムズカーシェアのようなサービスがはじまるなど、自分で持たない文化が世の中にフィットしはじめている。SpotifyやNetflixなどさまざまなサブスクリプションがスタンダードになり、CDやDVDを所有することが以前より少なくなっているのもそうだし、つきつめればメルカリなどもその現れなのだろう。

それが仲間内であれ、社会であれ、シェアしていくことがポジティブに受け止められるように世の中は変化してきた。だからこそ僕は、かつて小学生の女の子にお茶をもらったように、コップを介して生まれるコミュニケーションやシェアの精神を一層世の中に伝えたいと思って、昨年こんなキャンペーンを展開した。

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以下のようなビジュアルを作ったりもした。

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「シェア」をキーワードに、さらに&bottleの良さを伝えていきたい。そう思っていた矢先……

2020年、突如として現れた新型コロナウイルスを前に、シェアするということがなんだか少しわるものになってしまった。


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2020年4月、僕はとても困っていた。
それもこれも、そう、新型コロナウイルスのせいだ。

実は、その頃僕は、あたらしく発売する&bottleのネーミングを考えていたのだ。

特徴であるコップ付きであることはもちろん、カラーもスタンダード版と統一。しかしボディをステンレス塗装に変更することで、軽量コンパクトながらサイズアップしたあたらしい&bottle

この商品を、僕は当初『&bottle SHARE』と名付けていた。

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ところが、
新型コロナウイルスの影響で
世の中は再びパーソナルな流れに。

「SHARE」という言葉では受け入れられないと思った。

困った。

大容量ボトルだからこそ、より強く届けられるはずだった「シェアしよう」というメッセージ。発売を前にして、大きく舵を切り直さなければならない状況になってしまった。

しかし待てよ。

これは好機かもしれない。

マイボトルのあらたなニーズをこのnew「&bottle」をもって提案するとすれば、こんなによいタイミングはない。じっくり考えるほどにそう思えてきた。

2006年当時におけるマイボトルの普及は、エコへの意識が大きかったのは間違いない。いや、もちろんいまもなおそうだ。

しかし2020年におけるマイボトル普及の肝は、エコ/地球環境への意識だけでなく、「節約」と「安心」が大きいんじゃないだろうか。

コロナ禍において、なかなか外に出られないからこそステイホームな時間をもっと楽しみたい。経済的な不安が強いので、もっと節約したい。自分や家族など身近な人たちを守りたい。健やかでいたい。もっと気分が高まるものが欲しい。こんな日々だからこそ、もっと豊かな気持ちでいたい。もっと安心したい。もっと話したい。もっと会いたい。もっと。もっと……

僕は大慌てでタイガーさんに新しいネーミング案を届けた。それが、

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『&bottle MOTTO』アンドボトル/モット

おいしいをもっとたくさん
あったかいをもっとながく
せつやくをもっとゆたかに

それが『&bottle MOTTO』のモットーです

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サイズアップしたアンドボトルだからこそ、感じてもらえる安心感。その安心感があるからこそ、こんな時代にあっても家族や恋人と飲み物を分け合いたいと思ってもらえるんじゃないか。

僕は一つの願いのような気持ちで、『&bottle MOTTO』と名付けた。

タイガーさんはとても柔軟に対応してくれて、8月に発売の商品だというのに、そのネーミングを4月になって変更させてくれた。ギリギリだった。

そしてこの&bottle MOTTOが、いよいよ8月21日に発売される。

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コロナのせいで、と思った自分をいまは恥じたい。

コロナのおかげで、いま僕は自信をもって『&bottle MOTTO』という製品を世の中に送り出すことができる。

こんないまだからこそ、気づけたこと。あらためて大切にしたいこと。

僕はシェアする気持ちを忘れたくない

&bottleがその大切な気持ちをこそ保温できる、そんな商品になってくれればなあと願っている。


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藤本智士(Re:S)

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編集者。1974年兵庫県在住。『Re:S』『のんびり』編集長。著書に『風と土の秋田』リトルモア、『魔法をかける編集』インプレス。『アルバムのチカラ』(共著:浅田政志)赤々舎。その他、『ニッポンの嵐』『るろうにほん 熊本へ』(佐藤健)など、手掛けた書籍多数。

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2006年に創刊した雑誌「Re:S(りす)」編集長の藤本智士が、いまあらためてお届けする、あたらしい“ふつう”のnote「Re:S」。 日々のこと。旅のこと。地方のこと。編集のこと。 記事アップは月4回以上かなぁ。

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