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コオロギVS小麦じゃなくてさ

コオロギパンが炎上してる。

pascoこと敷島製パンが、現代人に足りないタンパク質が豊富に含まれているスーパーフードとして注目の、コオロギ粉末を入りパンを出して大炎上してしまっている。

なんだか不買運動にまで拡がりそうになり、敷島製パンが慌ててコオロギの使用をやめる宣言をしたりとか、なんとも難しい世の中になったものだ。なかには、コオロギを使っている業者をリスト化して悦に入り、ここの商品は買わないでおきましょうと煽るなど、完全にストレスの捌け口にしている人ようなもいて、あらあらあら……という状況。

それこそコオロギを食べてみたり、昆虫の糞で植物を育てる研究をしている人の話を聞いたり、昆虫食の可能性みたいなものに少なからず興味をもっている僕としては、コオロギ粉末の是非というよりは、敷島製パンのような巨大企業がコオロギ粉末を使った食品を出すというだけでこんなにも炎上するのかという、その事実を前に、いよいよグラデーションのない世の中になってきたなあと心配になる。

下に写真つきで載せるけど、たまに興味本位で昆虫食べたりする僕などが、もし影響力もってたら同じように大炎上しかねないと思うと、タレントさんとかほんと大変だなと思う。

このお酒実は……
ゴキブリの卵鞘(らんしょう)を使ったお酒。でも美味しかったんだよ〜
タガメのサイダーとかもあるし
もちろん。こちらも。
あえて惚け味効かせてますけども
大トロってなんだよ。

とにかく、大企業が何かにチャレンジすることがいよいよ難しい世の中になってきた。こんなにも瞬発力で批判、否定する人が多すぎると、大きな組織が新しいアクションを起こすときに、今まで以上にこっそりやっちゃうようになるんじゃないかと不安になる。イチカバチカで投入して、スルーされたらラッキー。バレたらゲームオーバー。と、なんだかトランプのダウトの世界。(ちなみに「ダウト」のことを「座布団」と言うのは関西だけだと最近知った)

先述のように、僕はコオロギ粉末のパンも食べてみたいと思うし、興味もあるけれど、かといってコオロギ賛成! とか、もちろん反対とか言ってるわけじゃない。その是非以前の、仕組みや構造みたいなものがとても気になっている。コオロギパンの炎上において本質的に重要なのはコオロギの是非じゃないはずだ。敷島製パンだけでなく、無印などの大きな企業が扱えるだけの物量があるのか。そこまでコオロギ食は進んでいるのか、と、そこがただただ気になっている。

例えば、今回の炎上騒ぎに火を焚べ続けている人たちの多くは「小麦があるじゃないか!」と叫んでいるけれど、ではその小麦が、どんな理由でここまで拡大されてきたかについても、みんなもっと知った方がいい。

狩猟ベースに生きていた大昔とは言わずとも、せいぜい300年前くらい前までは、人類は基本的に、自分たちが食べるものや着る服、使う道具などを、自分たちで作っていた。そんな時代における「農」はもっと多種多様な作物を育てるものだったはずだし、それはある種のコモンズ的な、公共の果樹みたいな存在だったんだと思う。それが変化したのはきっとこの200〜300年くらいのはなし。

それこそ、お腹を満たしたいだけなら、果実や、せめて芋などの方がすぐに食べられて良いにもかかわらず、殻を剥かなきゃいけないわ、細かなゴミ取らなきゃいけないわ、蒸さないと硬くて食べれたもんじゃないわ、とにかく面倒極まりない、小麦や米などの穀物が主食になったのは何故か?

それはまさに、その堅い殻に囲まれて腐りにくい米麦が、長期保存に適していたからだ。そのおかげで、溜め込んだり、遠くへ運んだりできた。途端に農作物は商品価値を得て、つまり換金できるものになった。すると、多種多様な作物が育っていたはずの世界中の土地が、一つの作物を大量に栽培するモノカルチャー(単一栽培)へと変化していった。その結果生まれた、もしくは拡大されたのが、持つもの(経営者)と持たざるもの(労働者)との格差だ。これこそが、いまの世の中の根っこにある問題のはず。

資本家は労働者を安い賃金で働かせるべく、疲労状態から一発で覚醒させられる砂糖を精製。それを入れた紅茶をたくさん飲むことで労働者はおおいに働いた。それこそ石臼で挽く小麦ではなく、機械製粉で胚芽まで取り除かれた白い小麦粉はまさに炭水化物の塊。白砂糖ともに、よっぽどマジのヤバい粉だ。そう思えばコオロギの茶色い粉の方が体に必要な栄養素がつまっている気がしなくもない。

新しく出てきたものを疑いの目でみるのはわるいことじゃないと僕は思う。けれど、それならば当たり前にいまあるものに対しても、等しく疑いの目をもつべきだ。ぼくらのふつうなんて簡単に入れ替わるものなのだから。

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