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集真藍か紫陽花か(その3)

下記は日本の植物学者 牧野富太郎博士の主張されたことです。
今、日本全国「紫陽花祭り」真っ盛りの季節。
これを機会に
博士のいわれる内容を理解して
日本原産の
ガクアジサイ、山あじさいは、「集真藍」(あぢさゐ)とし
本あじさいや西洋アジサイを、「紫陽花」(アジサイ)と
表記を変えてみては如何か。 

そして公園やお寺さんで
ああ あぢさゐ(集真藍)→日本原産のガクアジサイ等
   アジサイ(紫陽花)→輸入物の西洋アジサイ
   と呼んで楽しんで鑑賞しましょうや。

xxx(以下、博士からの引用)

私はこれまで数度にわたって、アジサイが紫陽花ではないことについて世人に教えてきた。けれども膏肓こうこうに入った病はなかなか癒らなく、世の中の十中ほとんど十の人々はみな痼疾で倒れてゆくのである。哀れむべきではないか。そして俳人、歌人、生花の人などは真っ先きに猛省せねばならぬはずだ。
 全体紫陽花という名の出典は如何。
それは中国の白楽天の詩が元である。
そしてその詩は「何年植向仙壇上、早晩移植到梵家、雖在人間人不識、与君名作紫陽花」(何ンノ年カ植エテ向フ仙壇ノ上ホトリ、早晩移シ植エテ梵家ニ到ル、人間ニ在リト雖ドモ人識ラズ、君ガ与タメニ名ヅケテ紫陽花ト作ナス)である。
そしてこの詩の前書きは「招賢寺ニ山花一樹アリテ人ハ名ヲ知ルナシ、色ハ紫デ気ハ香バシク、芳麗ニシテ愛スベク、頗ル仙物ニ類ス、因テ紫陽花ヲ以テ之レニ名ヅク」である。
考えてみれば、これがどうしてアジサイになるのだろうか。アジサイをこの詩の植物にあてはめて、初めて公にしたのはそもそも源順みなもとのしたごうの『倭名類聚鈔わみょうるいじゅしょう』だが、これは
じつに馬鹿気た事実相違のことを書いたものだ。今この詩を幾度繰り返して読んでみてもチットもそれがアジサイとはなっておらず、単に紫花を開く山の木の花であるというに過ぎず、それ以外には何の想像もつかないものである。
ましてや元来アジサイは日本固有産のガクアジサイを親としてそれから出た花で断じて中国の植物ではないから、これが白楽天の詩にある道理がないではないか。
従来学者によっては我がアジサイを中国の八仙花などにあてているが、それは無論間違いである。そしてまたアジサイは中国の繍毬ならびに粉団花に似たところがないでもないが、これらも全く別の品である。
しかし近代の中国人は日本から中国へ渡ったアジサイを瑪理花(毬花の意)とも、天麻理花(手毬花の意)とも、また洋繍球とも、あるいは洋綉球ともいっているが、この洋は海外から渡来したものを表わす意味の字である。

とにかくアジサイを中国の花木あるいは中国から来た花木だとするのは誤認のはなはだしいものである。そしてこのアジサイを日本の花であると初めて公々然と世に発表したのは私であった。すなわちそれは植物学上から考察して帰納した結果である。

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