新聞記事および記事広告の広告への効果

奥村孝、西尾チズル(2021)「エコプロダクト広告に対する新聞記事と記事広告の効果:コンテキスト・プライミング効果の観点から」『広告科学』第68集 pp.23-45。

新聞というメディアは、一般的に記事と広告からなっている。広告には、いわゆる「純広」にくわえ「記事広告」があり、「PR記事」などとも表記される。その記事や記事広告の内容が広告メッセージの受容にどのような影響をもつかを探るものだ。

具体的には、具体近年関心の高いテーマであるエコプロダクトを取り上げ、理論的背景としてはマスコミュニケーション研究における「議題設定機能」おみび広告研究における「コンテキスト・プライミング効果」を援用しつつ、上述の仮説を検証するものだ。

架空の記事を「環境問題に関係あるもの」と「ないもの」2方向、そして、いわゆる「エコ住宅」の広告を「(前述の記事と)関係するテーマ」と「(それとは異なる)ベネフィットを訴求するもの」の2種類、そしてエコ住宅を題材とする、同じく架空の記事広告を作成して、その影響と効果をインターネット調査で統計的に検証している。

結果として、その関連性はほぼ支持される結果がえられたが(有意差がなく、支持されないものもあった)、提示した製品が住宅という高額なものであり、テーマが理解されたからといって即座に購入意向が喚起されるというわけではない、ということも提示されている。

着眼点と問いから先行研究、仮説設定と調査、分析と真っ直ぐ軸の通った研究であり、納得度の高い考察だった。記事と広告の関係性への示唆は、実務にあたる人間も基礎的知識の裏づけとして知っておく価値があるだろう。

一方で現実の広告施策での成果は、表現のレベルに左右される部分もある。いわば変数が多いのだ。その点は同論考の視座の範囲ではないが、こういった研究が、より表現面における考察と結びつけられれば、より実務と共振性のある知見が見出せるのではないかと感じた。奥村先生、西尾先生、ありがとうございました。