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雨降りと花摘み

雨降りが続き、私のこころはどこか浮き足立っていました。
雨の匂いは生臭く、それでいて悪くない不思議なものです。雨がしとしとと降り続けるなかで、私はなんの意味もない傘で自分を守り続けました。鼻を大きく広げて、空気のなかに解けてくれた雨の匂いを吸い込みます。そうしていると、私自身の汚さやどうしようもない現状を許された気分になるのです。
人間ですから、笑うと涙も出てきますし、しゃがみ込んでみるとよろけます。そんな当たり前のひとつひとつがどうにも可笑しくて、また笑みが溢れました。
ことばはすぐそこにいて、私のことを待ってくれているはずなのに、追いついた瞬間ほろりほろりと分散していきます。そこに実在はなかったのでしょう。いかないでください。いかないで。悲しくなって笑いました。心と外面を繋ぐ管は随分前から狂っていました。


摘めない花を眺めることになんの意味がありますか。

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