第二話 (願望)私、つかさちゃんの妹になります!

小説のタイトルは、まだないです。

隔日で小説を書いて連載しようと、突然、思い立ったので、書き始めてみました。

『この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません』

フィクションなので、一応・・・・・・?

以下は、その第2話のつもりです。

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「お疲れ様です!」
 見習いとして働き始めて一ヶ月。まだまだ不慣れなことに四苦八苦していたとき、つかさとシフトが一緒になった。前々から憧れに似た何かを感じていた深水は、キッチンで料理を教えてもらいながらつかさに話しかけた。
「餅月さんは、何でそんなに美人さんなんですか? 私なんて、ちんちくりんだし、それに……」
 自分の体を見下ろしてから言うと、つかさは首を大きく横に振って言った。
「そんなに真面目に褒められると照れちゃうから止めて! それに、餅月さんって呼ばれるの、なんか慣れないなぁって」
 危なっかしく包丁を握る深水を見て、つかさはそっと手を添えて食材の切り方を教える。
「こうやって切った方が危なくないよ?」
 それまで不格好に切れていた食材が綺麗に揃った形に切られていく。切った食材を油を引いたフライパンに入れ、炒め始める。焦げないように気をつけながら調理していると、つかさが隣から優しい表情で見守っていた。つかさの視線に少しドキドキしながら炒め終わった料理をお皿に盛り付ける。
「そういえば、餅月さんって、妹さんっているんですか?」
 突然の質問につかさは戸惑い、「一人っ子よ」とだけ答えた。
「じゃあ……」
 それに続けて呟いた言葉を聞き、つかさは大きく目を見開いた。
「じゃあ、私、つかさちゃんの妹になりたいです!」
 つかさが何も言えないでいると、深水は続けて言う。
「ダメですか?」
 つかさが黙ったままでいると、深水は突然満面の笑みになって言った。
「否定しないって事は、良いって事ですね! ありがとうございます!」
「あ、いや、少しは考える時間を……」
 そんなつかさの言葉も虚しく、深水は言葉を続ける。
「じゃあ、今度から、つかさお姉ちゃんって呼びますね!」
「あ、いや、だから……」
 既に作ってあったお味噌汁をお椀に注ぎ、トレイの上に置くと、トレイを持ってカウンター前まで歩いて行った。その後ろ姿を何かを言いたげな表情のつかさがついてくる。
「あの、遥さん。私……」
 つかさが遥に意見を求めようとすると、それを遮るように深水が言った。
「私、餅月さんの妹になりました!」
「えっ?」
 遥は目を丸くした。
「だから、今度から、餅月さんのことは、つかさお姉ちゃんって呼ぶことにしたんです!」
 その一部始終を見ていたご主人様から呆れを含んだ声が投げかけられる。
「遥さん、なんで、こんなやべー奴を採用したんですか?」
 遥は、『やばい奴』という言葉を撤回するように要求してから言った。
「私もよく分からなくて。自分でも謎なのだけれど、気が付いたら採用通知をメールしていて……」
 今度は別のご主人様が呟いた。
「まぁ、橙幻郷だからね。仕方ないね」
 それを聞いたつかさがムキになって反論する。
「仕方なくないです!」
「そういう表情のつかさちゃんも可愛いよ」
 別のご主人様がそう言うと、つかさはさらにムキになって言った。
「だから……」
 そこにまろんが空になったポットとカップをお盆に乗せて移動してくる。
「まぁまぁ、落ち着いて。深水さんも私語は慎みなさいね」
 つかさは不満たっぷりの表情のまま、そっぽを向いた。深水はばつが悪そうな顔をして俯いた。

 その日は、少し忙しい日で、したくても私語をする暇が無かった。閉店時間を告げる時計の音が鳴り響き、会計を終えたご主人様から一人ずつ見送っているのを深水はカウンター越しに見ていた。
「ほらほら、よそ見している暇があったら体を動かす!」
 まろんにそう言われ、深水は慌ててキッチンに向かって歩いて行った。食器を洗っていると、不意につかさに話しかけられる。
「今日、予想以上に忙しかったけれど、大丈夫だった?」
 深水が静かに頷くと、つかさは満足そうにウンウンと頷いた。
「あの、私、餅月さんのことをお姉ちゃんって本当に呼んでも良いですか?」
 つかさは少しの間考える仕草をして、腰に手を当てて言った。
「しょうがないなぁ。良いけど、他の人が見てないときだけだよ!」
 幼い少女が母親に強がってみせるように、つかさは頬を少し膨らました。
「これじゃ、つかさちゃんの方が妹みたいね」
 遥の声が聞こえ、隣にまろんがおり、まろんも同意というように何度も頷いた。つかさは今度は頬を大きく膨らませる。深水は、つかさのコミカルな姿に思わず吹き出してしまった。
「なんだか、調子狂うなぁ。私って深水さんのこと、ちょっと苦手かも」
 遥とまろんが顔を見合わせて笑い、深水も笑みを浮かべると、つかさは顔を赤くして背中を向けた。
「ごめんなさい、“つかさお姉ちゃん”」
 つかさは振り返り、努めて怒った様子を見せてみる。深水は舌をちょこんと出して反省の意を表した。遥は、深水の頭を小突いてみせる。
「こら、先輩なんだから、ちゃんと謝りなさい」
 本気で反省した深水は、素直に謝るが、つかさは複雑な表情をして呟いた。
「やっぱり苦手かも……」
 そうして橙幻郷の一日が過ぎていくのであった。

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