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(グループ通算制度)「被合併法人等の最終の事業年度の欠損金の損金算入額」について考える

今回はグループ通算制度下での別表四の二に登場する「被合併法人等の最終の事業年度の欠損金の損金算入額」について考えていきたいと思います。

1.被合併法人等の最終事業年度の欠損金の損金算入額とは

グループ通算制度の別表四の二には、単体納税下では登場しない「被合併法人等の最終事業年度の欠損金の損金算入額」が登場します。
仮計の下に表現されております。

【国税庁HPより】

こちらはグループ通算法人間での吸収合併などの際に、被合併法人の最終事業年度に発生した欠損金について、合併法人にて損金算入を行うものとなっております(法人税法64条の8)。

2.単体納税下での通常の取り扱い

通常、単体納税下ではどのように取り扱われるのでしょうか。
単体納税下では、最終事業年度の欠損金は繰越欠損金として、合併法人の繰越欠損金として引き継がれることとなります。(設例参照)

【前提】
・合併法人A社(親)と被合併法人B社(子)は完全支配関係のある親子法人とする
・当該合併は適格合併であり、欠損金の引き継ぎ制限などの規制を受けないものとする
・事業年度末はともに3月末とする
・X1年10月1日に合併が行われるものとする
・繰越欠損金は100%控除できるものとする

3.グループ通算制度下での取り扱い

では、グループ通算制度下ではどうなるでしょうか。
先ほどと同じ前提でA社、B社を連結法人とし、X1年10月1日に合併を行った場合、被合併法人のB社のX1年4月~X2年9月までのみなし事業年度の欠損金は、合併法人の損金に算入されることになります。設例による数値イメージは以下の通りです。

2.の単体申告時と取り扱いが異なることがわかります。これは、旧連結納税制度では、被合併法人の最終事業年度について、「連結法人としての単体申告」が要求されていたことから、被合併法人は単体申告をベースとして課税所得計算が行われました。一方で、同じ連結事業年度に発生した課税所得という意味では連結グループ間の所得として認識するべきという考え方があったことからこのような取り扱いがされたものと推測されます。
グループ通算制度下においても同様の精神が引き継がれております。

4.事業税での取り扱い

一方、事業税では単体申告を原則として所得計算がされているため、上記でいう2.の考え方を採ることになります。そのため、申告書(第6号様式)での課税所得はグループ通算制度下の▲100ではなく、単体申告で計算された200がベースとなります。繰越欠損金についても同様の考え方です。グループ通算制度から所得計算をする場合、事業税の申告上、きちんと所得調整がされていることを確認する必要があります。

5.住民税での取り扱い

住民税では、事業税のような法人税との差異はないと考えられているため、特段の調整は発生しないことが通常かと思います。

6.総括

当該論点はグループ通算制度を導入をしている企業のグループ間の再編などが行われた際に発生することが想定されます。
グループ通算制度(国税)と事業税(地方税)とで最終事業年度の被合併法人の欠損金の考え方が異なるため、事業税の所得計算上の調整が必要がある点に留意が必要です。


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