【令和4年税制改正】その他資本剰余金からの配当の場合のみなし配当計算(種類株式発行のケース)
今回は令和4年税制改正の改正点である、種類株式発行会社のその他資本剰余金からの配当に係るみなし配当計算について解説してみたいと思います。
1.税制改正の内容
財務省が公表している令和4年度税制改正の大綱では以下の通りとなっております。
①については利益剰余金・資本剰余金の同時配当に係る最高裁判決に対応してできた改正と言われておりますが、今回は②にスポットをあてて説明したいと思います。
事例としてはその他資本剰余金からの配当が多いかと思われますので、以下、その他資本剰余金からの配当を前提といたします。
従前、自己株式取得のみなし配当計算については、種類資本金額を参照した計算を行っていたものの、その他資本剰余金からの配当については、会社全体の資本金等の額、利益積立金額を基礎として計算されるたてつけとなっていたため、自己株式取得のケースと平仄がとれていない印象を受けておりました。
今回の改正によって、その他資本剰余金からの配当のケースにおいても種類資本金額を基礎にみなし配当計算が行われることとなります。
2.具体例
数値例を使って具体的にどう変わるのか見ていきたいと思います。
【前提】
※配当直前まで資本取引等の動きはないものとする
※種類株式からの資本剰余金からの配当があったものとする
【令和4年税制改正前の方法によるみなし配当計算】
改正前は種類資本金の概念は使用せず、①全体の金額をベースに資本金等の額の減算額を算定し②みなし配当計算を行う、2段階の方式で計算をしていたことがわかります。
【令和4年税制改正後の方法と考えられるみなし配当計算】
改正後は①簿価純資産額を種類資本金等を使用しプロラタ計算をしたうえで、②種類資本金額をベースに資本金等の減算額を算定し③みなし配当を計算する3段階の方式となっていることがわかります。
3.総括
2.の具体例を用いて計算した通り、令和4年税制改正後は、種類資本金額を基礎としたうえでみなし配当の額が計算されることとなります。
ただ、税制改正後の計算ロジックが従前から大きく変わったかというとそうではなく、結局、改正後の計算で使用している「直前の種類資本金額」と「前期末の簿価純資産額」は全体の金額からみた割合は同じ(ともに0.2)であり、基本的には資本金等の減少金額の結果は同じになると考えられます。(少なくとも具体例のようなプレーンなケースでは)
ただし、具体例でもそうですが、計算過程にある小数点第3位未満の端数切り上げにより、端数が切り上げられ、従前のみなし配当計算と計算結果が変わるケースが想定されます。
令和4年4月1日以降の支払配当より適用されておりますので、今年からの種類株式のみなし配当計算の際は注意深く計算を確認する必要があります。
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