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【税効果会計】分類5に該当する会社に将来加算一時差異(繰延税金負債)がある場合の繰延税金資産の回収可能性について

税効果会計上、分類5に該当する会社について、繰延税金資産は計上されないという頭だけでいると陥る可能性のあるミスについて言及していきたいと思います。

以下、表記の前提です。
・繰延税金資産の回収可能性に関する実務指針「以下、(回収指針)」
・個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針「以下、(個別指針)」

1.分類5に該当する場合の繰延税金資産の回収可能性について

分類5に該当する企業においては、原則として、将来加算一時差異に係る繰延税金資産について回収可能性はないものと判断されます(回収指針34)。

したがって、通常、繰延税金資産は全額計上されないことになります。

2.分類5に該当する場合の繰延税金負債の計上について

将来加算一時差異については、会社分類に関わらず、会社が清算するまでに明らかに課税所得が発生しないことが合理的に見込まれる場合を除いて支払可能性ありとして、繰延税金負債を計上する必要があります(個別指針24)。

例えば翌期に多額の欠損金などが発生して、将来加算一時差異を加味しても税金が発生しないようなケース(一見支払い可能性なしとみえる場合)でも、基本的には繰延税金負債を計上する必要があります。

したがって、分類5であっても将来加算一時差異については、原則繰延税金負債を計上する必要があります。

3.以上を考慮すると・・・

以上の考え方だけを考慮すると、繰延税金資産、負債の計上額は以下の通りと考えられます。

分類5に該当するため、全額回収可能性なしとして繰延税金資産計上額は0

全額支払可能性ありとして繰延税金負債計上額は60

4.繰延税金資産の回収可能性の判断プロセス

上記の考え方は一見正しいように見えますが、適用指針の繰延税金資産の回収可能性のプロセスを検討した際には、必ずしも正しいとは限らない点に注意が必要です。

回収可能性の判断手順ですが、本来はざっくり以下の通りとなります(回収指針11)。
①期末の将来減算一時差異のスケジューリング
②期末の将来加算一時差異のスケジューリング
③上記のスケジューリングに基づいて相殺する
④③で相殺しきれなかった将来減算一時差異を繰越欠損金の繰越期間内の将来加算一時差異と相殺する
⑤相殺後の将来減算一時差異を将来の課税所得と相殺する
⑥⑤で相殺しきれなかった将来減算一時差異を繰越欠損金と相殺する

このうち、①~④の将来減算一時差異と将来加算一時差異の相殺については、会社区分の年数に関係なく行うものであり、相殺が可能な部分については、回収可能と判断されます。(会社区分による回収可能性の判断は⑤以降で行われることになります)

したがって、分類5の会社であっても、将来加算一時差異と相殺ができる将来減算一時差異については、回収可能性ありとして繰延税金資産が計上できることとなります。先ほどと同様の設例で考えてみましょう。

回収可能性の判断では、会社区分とは関係なく初めに将来減算一時差異と将来加算一時差異のスケジューリングを行い、相殺することになります。
ここで相殺できた将来減算一時差異については回収可能と判断されるため、例えば分類5の会社であっても繰延税金資産計上額が60となります。

一方、繰延税金負債は従前通り60計上されます。

結果として、本設例では繰延税金資産と負債が同額計上され、相殺して0となります。

5.実務上の取扱い

実務上は将来加算一時差異が重要ではない場合、事業年度毎に課税所得と将来加算一時差異を加算したものと将来減算一時差異の解消見込額を比較して回収可能性を判断することができるとされており、実務上はこの方法が採用されることも多くみかけます(回収指針12)。

そのため、実務上は上記4.のように将来加算一時差異と相殺できるものを回収可能とする考え方もあれば、一律、将来減算一時差異は回収不要として繰延税金資産を計上しない考え方もありようですので、会社のアカウンティングポリシーに照らして判断していく必要があります。

6.総括

会社分類が5の時には、あまりスケジューリングなどは深く考えず、繰延税金資産を全額計上しないという頭になりがちですが、実務指針の考え方では、将来加算一時差異の解消スケジュールを考慮してスケジューリングを行う必要があります。

実務上は、分類5のケースでもスケジューリングなどはきちんと行って、回収可能性をきちんと検討することでこういった漏れを防ぐこともできるのかと思います。

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