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生きる

ほこりを被った宝物
ひとくみの便箋と万年筆

夜空から生まれた言葉たちが
星屑のように降り注ぐ
それは貴方の頭上で弾けて
さらさらと海に溶けていく

遠くで誰かの声がする
ささやきのような、細波のような
遠くで貴方の声がする
ゆらめきのような、夕凪のような

泣けるということ
生きているということ
産声を上げたように
そんな日々の向こうに
朝の音色は戻らない
朝の音色は帰らない

今までとても窮屈だったのね
貴方の左目がこちらに語りかける
知らない振りをしていたのでしょう
貴方の右目が私を見つめている

鏡に聞いてみたりした
どうしてあの時、私を置いていったの
本当のことはわからないまま
透明だけれど、ぼんやりとした記憶

夢を見ていたの
いつまでも醒めないと思っていた
夢を見ていたの
思い描くほどに届かなくなっていった

ごめんなさい、ずっと待たせていたのね
まだ間に合うかしら、それはまだわからない
もう遅すぎたかしら、それはまだわからない



2023/08/29

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