具体的なエピソードで自己紹介を作る。

仕事選びの判断軸が決まると、あれもこれもと目移りすることが少なくなり、会社選びは非常にスムーズになる。次は会社から選んでもらうための自己紹介を作る段階になる。


自己紹介と言われたら、皆さんは何を語るだろうか。

大学、専攻、出身校、部活、趣味、資格、免許など、様々な要素があると思うが、採用担当者の目線だと、そういった外堀を埋めるような情報では、今ひとつ学生の人柄が見えてこない。

自分の周りを見渡せば分かると思うが、同じ学部や同じ部活にも様々な人間がいる。当然、その企業に合う人もいれば、そうでない人もいる。この人は一所懸命に働いてくれるのか、もっと判断材料が欲しいのだ。

では、部活の全国大会で優勝したとか、アルバイトで店長を務めたとか、自分の出してきた実績をPRしたらどうか。残念ながら、これでも判断材料には足りない。こういった実績が必ずしも仕事の成果には直結するわけではないからだ。


では、一体何を語ったらいいのか。

それは、その人の思考と行動が分かる具体的なエピソードだ。例えば、僕は「思考力があること」を示すために、英語サークルの幹部として会計の課題に取り組んだことを話した。

僕が幹部を引き受けた年は、前年度で大幅な予算超過があり、数十万円単位での資金不足からスタートした。半年ほど経った後、前年度の先輩から補填はしていただけたのだが、どちらにしても、資金繰りが行き詰まることが予想された。

資金繰りの改善のためには、収入を増やすか、支出を減らすかのどちらか。支出については、前年度からの引継ぎを見る限り、元から引き締め基調で運営していて、さらなる削減の余地は少ない。よって、収入を増やすことが必須だった。


収入の大半は会費収入だったので、普通に考えれば、①人数を増やすか、②単価を上げるか、どちらかしかない。

まず、①の人数については、運営上、2年生から増えることはないサークルなので、1年生を増やすための新勧を頑張るしかない。そこで、勧誘担当の委員長と結託して、花見を5日連続でやるなど、かなり精力的に活動した。

次に、②の単価については、財務状況を分かりやすく開示した上で、在籍している2年生・3年生に負担増をお願いしたが、それだけで数十万円は賄えない。あまり負担を増やしすぎれば、メンバーの離反も招きかねない。

いろいろ悩みながら、前年度の数値を眺めていると、活動に参加したのに会費が回収できていない人(主に1年生)がいることに気付いた。つまり、③回収率を上げる、という打ち手があったのだ。


当時、4〜7月の活動は1年生のためのお試しと位置付けられており、4〜6月に毎月2,000円の活動費を回収していた。そして、7月以降も活動に参加していく場合には、正式な入会費として6,000円を回収する、という仕組みになっていた。

ところが、前年度の数値を見ると、4〜6月はそれなりに人数がいるのに、7月に入会費を支払う人数はガクっと減っている。そのため、4〜6月に活動している人数は多いのに、1年生の会費収入がとても少なくなってしまっていた。

自分の感覚と照らし合わせても、2,000円から6,000円へと負担が増えるのは抵抗があった。また、8月頭には夏合宿で4万円の支出もあるので、一気に金銭面がネックになって離脱している、ということが想像できた。

そこで、今年度からは会費の取り方を改め、仮入会費1,500円、活動費2,500円×3、本入会費3,000円、と負担感を平準化した。金額は正確ではないかもしれないが、2,500円という数字はよく覚えているので間違いないと思う。

最終的には、在籍メンバーも負担増に協力してくれ、新入生の勧誘も上手く行き、会費を払わずに離脱してしまう新入生も少なく、資金繰りの問題はクリアーすることができた。


ここまで読んでもらえれば、具体的なエピソードで自分の思考と行動を伝えることで、単に実績を話すよりもよほど納得感が得られる、ということは分かってもらえたと思う。

僕がこのエピソードに行き着いたのは、確かエントリーシートでこれまで一番苦労したことを聞かれたのがきっかけ。直近での生々しい体験だったので、いくらでも具体的に思い出せたので、すごく具体的に書くことができた。

ちなみに、上の文章は今回思い出しながら書いたのだが、ここまで詳しく思い出せることに自分でも驚いてしまった。何回も繰り返しアウトプットしたことで、すっかり自分の長期記憶に刷り込まれたのだろうな。

是非、皆さんもそんな生々しい具体的なエピソードを通じて、自分の思考と行動を面接官にしっかり伝えられるようになって欲しいと思う。


ところで、僕の就職活動の考え方は、中谷彰宏さんの「面接の達人」に強く影響を受けている。10年以上前のことなので、影響を受けていることさえも忘れていたが、改めて読み返すと、今も非常に共感することばかり。

中谷彰宏さんも人事の経験が豊富なわけではなく、ご自身の限られた経験の中で書いていることなので、専門技術が求められる職種や時代の変化が激しい業界などでは、当てはまらないこともあるのだと思う。

ただ、考え方は非常にシンプルなので、一般企業の採用担当者が学生と対峙するときの気持ちには、とてもよく寄り添っていると思う。ご興味のある方は是非読んでみていただきたい。

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