~菅平の危機と We Are スガダイラーズプロジェクトと、クラブハウス~

2020 年夏
例年であればタンクトップにハーフパンツ、サンダル履きのラガーマンで溢れ かえっているはずだった、菅平唯一の信号機のある交差点、通称『T 字』付近は、閑散としていた。
T 字からほど近い唯一のコンビニエンスストアは、毎年8月には日本トップクラスの売り上 げを誇っていたが、もちろんそれもない。 ほとんどのチームは合宿を中止し、書き入れ時だったはずの多くの宿のエントランスには『休業』の張り紙が貼られた。

だが、菅平の人々も座してこの状況を静観するばかりではなかった。 天理大や報徳学園などの定宿である菅平プリンスホテルの大久保寿幸専務は、旅館組合に 呼びかけ、『WE ARE スガダイラーズ』なるクラウドファンディングプロジェクトを立ち上 げた。
https://www.dentsu.co.jp/showcase/sugadaira.html

『WE AREスガダイラーズ』は、窮地にある菅平の宿を、かつて菅平で青春を過ごしたラ ガーマンたちで支援しようとするもの。 この企画に対し、当初菅平の人々の反応はおよそネガティブなものだったという。 『自分たちにとってラグビーの人たちは、宿と宿泊客の関係。端的に言えば商売の相手が、 我々を支援してくれるとは到底思えない。』 『自分たちはラグビーのことをそこまで詳しく知らないし、ただニーズに投資してグラウ ンドを用意しただけ。』
『ただの合宿地の宿に対して支援金など集まるはずもない。』 『ラガーマンは、菅平には二度と来るもんか!と本気で思ってる。』
この地で青春を駆け抜けたラグビーマンが寄せる『菅平』への想いと、菅平で暮らす宿主た ちには、相当なギャップがあったといえる。
反対派を押し切って走ったこのプロジェクトだったが、ふたを開けてみれば当初の目標金 額を大きく超え、6000 万円もの支援金が全国から寄せられた。 支援者の多くが、かつて菅平で合宿を経験したラガーマンだった。
さて、この結果に最も驚いたのが菅平の宿主たちである。 奇しくも、コロナ禍で客足が途絶えたタイミングで、かつてのラガーマンたちの、『大嫌い だったけど、大好き』な菅平に対する想いを知ったのである。
しかしながら、コロナ禍が収束したとき、支援してくれた人々に対して菅平としてどうやっ ておもてなししようか。 菅平にある宿泊施設は、チームを受け入れるための『合宿に適応した』宿が大半である。 つまり、共同大浴場、大食堂、大部屋に雑魚寝というスタイルだと、少人数グループや家族連れの客は腰が引けてしまう。 このプロジェクトで実際に支援をしてくれた方々は、すでにラグビー選手を引退した人が 大多数である。菅平が受け入れられる『客層』ではないのである。
こうした状況は、RCCA のクラブハウス構想を地域に受け入れてもらう意味で、強烈な追 い風となった。
未来の菅平に危機感を持つ若い経営者(その多くは 3 代目)らも、クラブハウス構想に興味 を示してくれ始めた。 菅平クラブハウス構想は、これまで菅平として受け入れが難しかった『客層』をターゲット とするものであり、こうした発想を具現化しようとする RCCA に対して、期待感を寄せて くれるようになっていった。
旅館組合や観光協会、商工会など、菅平地区の様々な自治組織と話し合いの場を持ち、RCCA のコンセプトやクラブハウス構想を語る場を多く設けていただいたのも、このあたりの時 期からであり、その結果多くの賛同者を地元で得ることができた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?