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“そらにじ”での実践 —若手スタッフの定着と自発的活動の継続を目指して—

2014年4月、青森駅から徒歩2分の「駅前銀座」に性暴力サバイバーやLGBTIQについての情報拠点としてのCommunity cafe & bar Osora ni Niji wo Kake Mashitaをオープンした。

駅前銀座というパワフルな街で

駅前銀座は満州引揚げの人たちが「小銭を出し合って」皆の食い扶持を作る為に作られた、小さな飲屋店街。店舗は一区画毎に5〜6席のカウンターがあるような小さな店で、当時は2階に住居を構え、小さいながら、引揚げの人たちの大切なコミュニティとして存在していた。今では当店舗を含めて6店舗がひっそり軒を連ねている。店主の高齢化に伴い、毎年のように店が無くなり、青森の人であってもこの場所を知る人は少ない。

この場所に店舗を開設することになった経緯としては、当会(RC-NET:レイプクライシス・ネットワーク)の理事である宇佐美の母がこの地で30年以上の間店を構えており、そして2013年に亡くなったということがある。お母さんの遺品整理をしに青森に通っている際に、「もしかしたら、私たちはこの場所を持っているということ?」とふと呟いたことを覚えている。

何も持たなかった人たちがパワフルに作り上げたこの地で活動が出来るのであれば、それは私たちにとって、凄い幸せなことなのではないだろうか、と思ったのだ。自分たちで作り上げる。それは、今、私たちに必要な過程に思えた。


なぜコミュニティスペースを作りたかったのか

その頃、私たちはまさに新宿二丁目での拠点オープンに向けて動いていた。家賃高いなー、とは思いつつも、二丁目という街が「昼間に行く用事がない」場所であることが寂しいと思っていた。サンフランシスコに(勝手に自腹で)スタディーツアーに出かけた際に、その街にある支援システムや昼間の活動(若年ホームレスユースサポート団体や、自助グループ、ランチミーティング、性感染症の検査も出来るコミュニティセンター、LGBTセンター、LGBT向けのカウンセリングルーム、そして、普通にやってるお店)を見て、行政的な動きがいくら活発になっても、昼と夜の境界線があまりに色濃い日本のLGBT業界のままでいいんだろうか?という思いが強くあった。

また、それまでもRC-NETとして、また他の相談事業に関わる中で様々な人たちの話を聞いてきて、「こんなにも居場所がないままでいいのか?」という思いは日に日に強まっていた。RC-NETではレインボーカフェという性被害経験を持つLBT女性のためのお茶会を定期開催していたが、そこに来る人の多くが、被害後、コミュニティに出入りすることを恐れていた。コミュニティが被害の場であったケース、また加害をした人の知り合いがいるかもしれない、ということ、そして一番多かったのは、コミュニティ内で相談をした際に「拒絶された」経験を有している人だった。

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