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開幕2日前に監督がサウジ行き… ヤイスレの電撃退任とシュトルーバー就任の是非

2週間ほど前、ザルツブルクから大きな発表があった。

SDのクリストフ・フロイントが今夏の移籍市場終了後に退任し、9月からバイエルン・ミュンヘンで新たな職務を開始するというものだった。彼は17年間ザルツブルクのスタッフとして働き、2015年からラルフ・ラングニックの後任としてSDに就任。今日の魅力的なヤングチームを築き上げた。

フロイントが去るのは大きな損失だが、彼のこれまでの実績を考えればメガクラブが興味を示すのは明らかだった(昨季はトッド・ベーリーのチェルシーからオファーがあった)。したがって、ファンの間ではフロイントの新たなチャレンジを応援する意見が多数派だった。


開幕2日前に指揮官がサウジ移籍

しかし、7月28日にリリースされたものは、これとは正反対の反応を呼び起こした。

開幕を2日後に控えたタイミングで、監督のマティアス・ヤイスレがサウジアラビアのアル・アハリへの就任を希望したのだ。ザルツブルクは即時解任を発表した。

ヤイスレは選手時代にラングニックのホッフェンハイムでプレーしていた縁から、RBライプツィヒのユースで指導者キャリアをスタート。その後、ブレンビーで元RBライプツィヒ監督のアレクサンダー・ツォルニガーの下でアシスタントコーチとして働き、2019年からはザルツブルクに在籍していた。つまり、彼は指導者として常にレッドブルと繋がりを持ち続けていた。

ザルツブルクで監督としてのキャリアを歩み始めたヤイスレは、当時リーフェリングの指揮官だったボー・スヴェンソンがマインツに引き抜かれたことにより、半年足らずでU18監督から昇格。さらに、シーズン終了後にはザルツブルクのジェシー・マーシュがRBライプツィヒへ移籍したことから、その後任に就くことになった。わずか2年でトップチームの指揮官にまで上り詰めるというスピード出世だった。

トップチーム指揮の初年度では、クラブ史上初のCL決勝トーナメント進出という快挙を達成。将来的に彼が5大リーグへステップアップするのは確実に思えた。しかしながら、昨季のヤイスレが率いるチームはトーンダウンした。リーグ戦では優勝を果たしたものの、国内カップ戦ではタイトル防衛に失敗し、欧州カップ戦でも早々に姿を消した。

成績面よりも批判の矛先となったのは、むしろサッカーの内容面である。初年度と比較して、ボールに対するアグレッシブさに欠け、縦へのスピードも平凡だった。負傷者が多く、若すぎるスカッドというエクスキューズがあったとはいえ、"レッドブルらしいサッカー"からかけ離れたパフォーマンスはファンやメディアからの評価を下げた。それでも彼は依然として35歳の有望な若手指揮官であり、今季再び評価を取り戻すことを期待していた。だからこそ、このような形での去り方は様々な面から見て最悪のものだった。

フラットな視点から考えれば、ヤイスレがサウジアラビアに行ったとはいえ、彼の名前がヨーロッパの移籍マーケットから完全消滅することはないだろう。現状サウジアラビアには多くのスターが集結しており、これによって数年後に欧州へ戻る移籍も生じることは間違いない。元ザルツブルク監督でいえば、かつてロジャー・シュミットが北京国安へ行き、その後PSVやベンフィカで欧州復帰を果たした事例がある。ヤイスレもそういったキャリアプランを計算しているかもしれない。

ただし、ヤイスレの場合は去り方が「立つ鳥跡を濁しまくり」で、なおかつサウジアラビアにはスポーツウォッシングの問題もある。仮に彼が欧州に戻ってきた時には、メディアから厳しい指摘を受けることは想像できる。今回のようにノーコメントを貫き通すことは難しい。

シュトルーバーという選択の是非

ヤイスレの後任はゲルハルト・シュトルーバーとなった。

シュトルーバーは、ラングニックがレッドブル・グループに携わる前からザルツブルクで指導者をしており、リーフェリングでの監督経験もある。ヴォルフスベルガーではELでマルコ・ローゼのボルシアMGを4-0で破り、バーンズリーでは奇跡的なチャンピオンシップ残留を達成してシニアチームでの評価を高めた。

だが、「レッドブル・グループ復帰」となったNYレッドブルズでは低調なパフォーマンスで苦戦。さらに、今季新加入のベルギー人FWダンテ・ヴァンゼイルが試合中に発した人種差別問題への対応を巡ってシュトルーバーは猛バッシングを受け、それが今年5月の解任に繋がった。欧州で実績のある監督をアメリカ支部の指揮官に据えることができただけに、この失敗はレッドブル・グループ全体としても痛手となった。

評価が下降していたシュトルーバーの就任は正直ワクワクするものではない。ただ、開幕2日前に突然監督がいなくなるという異例の事態では十分理解できるチョイスでもある。

レッドブル系指導者の選択肢を考えると、フランクフルトを退任してからフリーのオリヴァー・グラスナーには就任のチャンスはなかったことが明かされている。最近UEFAプロライセンスを取得したレネ・マリッチの抜擢を期待する声もファンの中ではあった。しかし、監督未経験の彼にこの状況を任せるのは双方にとってあまりにもリスクが大きい。昨季リーフェリングで期待の若手指導者だったファビオ・インゴリッチュが1年で解任されていることを考慮すると、その選択はなおさら取りづらい。

ザルツブルクは監督不在の中、オーストリア・ブンデスリーガの開幕戦を勝利で飾った。極めてイレギュラーなシーズンスタートに不安を感じながらも今季を見守っていきたい。

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