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祝!ミシュランご卒業! 鮨 さいとう 齋藤孝司さんへのラブレター

※本記事は2017年に筆者がトリップアドバイザーへ投稿した記事
( https://www.tripadvisor.jp/ShowUserReviews-g1066451-d7383757-r491924845-Sushi_Saito-Minato_Tokyo_Tokyo_Prefecture_Kanto.html )
を加筆修正して掲載したものです。

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拝啓、齋藤孝司様。

大将、大変ご無沙汰しています。最後にお目にかかったのは、もうどれくらい前でしょうか。日本でいや世界で一番の鮨職人と呼ばれる様になって久しいですが、私の足はすっかり遠のいてしまいました。私があなたから離れたのではありません。あなたが私から離れてしまったのです。すっかり予約が取れなくなってしまったのです。

知人からのお薦めで、私があなたのお店である鮨 さいとうを初めて訪問したのは、まだ自転車会館にお店があった頃です。あなたの素晴らしい仕事とその姿勢に私はすっかり魅せられました。食事を終え帰る際にも、まだ他のお客さんが残っている中、店の外まで出てお見送りいただき、お土産の太巻きもご自身の手で腰を低くかがめて手渡しして頂いたことは今でも鮮明に覚えています

数ヶ月後、二度目に行った際には私の顔を見た瞬間に、名前で呼んで頂いた事もよく覚えております。ミシュラン三つ星を獲得し、海外からのお客さんからの問い合わせも増え、「すし匠 齋藤」さんと間違えてホテルのコンシェルジュが予約を取ってしまった外国人ご夫婦が何も知らずに来店された際に、大とろを一貫ずつだけ無償で握って玄関で渡して差し上げた逸話を伺った際には「サービスかくあるべし」と強く感銘を受けました。

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あなたの職人としてのこだわりも何度か垣間見ました。店内ではいつもニコニコ、お客さんには笑顔で対応されてされておられますが、自転車会館当時、早めに着いてしまい、店の外で暖簾が掛かるまで待っていた時にお弟子さんを厳しく指導する声が聞こえてきた事、車海老を握る際に茹で加減に納得が行かず、何本も捨てておられた(!)事は本当に忘れられません。

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自転車会館からの退去が決まった頃から予約が取りづらくなって来ましたが、食べログアワードベスト3常連になり、アークヒルズに移転、個室の営業も始める様になってから、何かが変わってきました。一斉スタートは仕方ありません。ですが、太巻きが要事前予約になり、お見送りも無くなりました。

そしてある時、生いくらの季節に予約がいっぱいで受けられない事を知った私の残念そうな表情を察したあなたは少し考えられた後、お弟子さんの握る個室の予約を受けてくれました。

個室はそもそもお弟子さんを常連さんによって育ててもらうと言う趣旨でと承っていました。ですので、個室を案内された際はそれなりに認めてもらえたのかなと、ちょっぴり嬉しかったです。ですが、その後個室を挟みつつ数回を経て、個室の予約すら半年以上先になり、最後に個室で頂いた際には、あなたの握るカウンターどころか個室の予約すらも受けて貰えなくなりました。個室も今はすっかり予約をさばく為の場所になってしまった様に思います。予約キャンセルが入ったらすぐに連絡しますとお弟子さんから伺いましたが、その後一度も電話を頂いた事はありません

毎月1日に電話予約を受けることに表向きはなっていましたが、いつも電話はつながらず、応答があっても、今月はもう満席で来月1日にまた翌月以降の予約を受け付ける趣旨の留守電が流れるだけでした。事実上、新規または再度の電話予約は不可能だった一方、食べログやFacebook、Twitterの投稿には

毎月通っている」「今月n回目の訪問

と言う様な投稿、芸能人ブログの定期的貸切イベント記事が数多く飛び交っていたのは一体どう言う事でしょうか。少なくとも出入り禁止にされる様な事をした覚えは全く無いので、何故、どんな理由でこんな差を付けられたのか本当に不可解です。

経営の観点からすれば、太い常連顧客を囲い込む事は安定した経営基盤を築けることは確かでしょう。ですが、毎月の様に(または月に複数回)一人頭3万円も外食に注ぎ込める人はそう多くはないでしょう。またそれだけの財力があったとしても、義務感の様に毎月通うことに価値があるとは私は思いません素晴らしいものだからこそ、季節感を楽しめる程度に通えれば御の字だと思っています。

あなたの握る鮨の質が低下したという声も最近耳にしますが、総合力の高さであなたを超える鮨職人を私は未だに知りません。ですが、あなたのここ数年の予約ポリシーを含むサービスに対する考え方、心意気については私は明らかに低下したと考えています。あなたは有名人や著名食べログレビュアーに持て囃されて明らかに変わってしまった。今の鮨 さいとうはお鮨を楽しむ場というよりも成金とグルメゴロ達が常連として通い続けることをステータスとして誇るためのサロンに変貌してしまった様に思えます。それを良しとされておられる (としか思えない現状である) 以上、私はあなたのお店の評価を「とても悪い」に変更せざるを得ません。

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ミシュランの星を返上し、会員制にされた事はある意味潔いですが、どうか自転車会館時代の精神・心意気に立ち返り、公平な予約ポリシーの下、一人でも多くの方にあなたの握る鮨を楽しんでもらえる様、改めてご検討をお願いします。そう遠くない将来に、またあなたの握る鮨を楽しめる日が来る事を願っています。

草々

2019年11月26日 加筆修正

追伸: アストンマーティンはもうお買いになられましたか。

鮨 さいとう ※会員制
〒106-0032 東京都港区六本木1丁目4−5 アークヒルズ サウスタワー 1F
営業時間: ランチ 12:00~ ディナー17:00~ と 20:00〜 の二回転制

店主: 齋藤 孝司

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