成長の為の学習サイクル(その2)

前回に続いて、成長の為の学習サイクルについて整理します。

今回は、能力の変容(質的に次元の高い変化)を実現する為の学習戦略についてまとめます。

内容は、かなり複雑かもしれません。。。

ただ、そもそもの能力の変容自体が、複雑なプロセスを経て実現するものなので、説明の複雑さは、そのプロセスの複雑さ「そのもの」を表していると考えています。

一方で、まだ説明がこなれていない部分があるので、今後より分かりやすくしていきたいと思います。

まず、設定としては、「完璧主義で他人に頼ることができない」能力が、質的に変化を遂げて、「柔軟に他人に頼ることができる」能力に変容するプロセスを考えてみます。

前回の能力の変化で説明したように、ここでは、「自分は完璧にできる、期待に応えられるはずだ」という期待(Expectation(S))を起点として、「一人で問題を解決する力」が身についた(Growth(S))説明となります。ここで、「S」という記号を使っているのは、本人の強み(Strength)である事を表しています。

次に上図で示すように、「一人で問題を解決した」という成功体験によって、自分が自分へ期待する自己期待が膨張し、また、問題が起きた時に取る選択肢として、「一人で問題を試みる」(Output)という選択肢をとる傾向が強まります。それが「一人で成し遂げる」という成果(Outcome)に繋がる間は、この循環を繰り返します。ある意味、怖いもの無しの「無双状態」かもしれません。。

ただし、次々と難易度が高い問題を解決して、どんどんと難易度が上がっていくにつれて、いつかは壁にぶち当たります

次に、上図にあるように、壁にぶち当たると、一人では問題を解決できないので、「どうしようもない部分は他者に依頼」という選択肢(Output)をとります。

ただし、元来の「完璧主義で他人に頼ることができない」能力が災いとなって、成果(Outcome)としては、他者との協働がうまくいかずギクシャクした結果に終わります。その結果、他者からは「一人で進めるのでついて行きにくい」「勝手に進めて欲しくない」「最初から任せてほしい」といった不満が返ってきます(feedback)

ところが、自己としては、可能な限り他人に頼る事なく、頑張ったのに、他者は「消極的でやる気がない」「自分ばかり頑張っている」と相手に対して問題や不信感を抱く考え(Reflection)に至ります。

このような過去の体験から、ますます「一人で解決する」という目標設定(Goal Setting)や、膨張する自己期待につながります。

しかしながら、このような「対立構図」、、仕事に限らず、人間関係においてよくある光景かもしれません。。

一方で、「相性が合わないからだよ」「一方が悪い、両方が悪い」「性格だから仕方ないよ」といった形で、問題を掘り下げずに終わることはないでしょうか?

ここから、問題を掘り下げてみます。

上図にあるように、「膨張する自己期待」は、自分が自分に期待しているのですが、必要以上に自己期待する背景には、「過去の期待」が起因している場合があります。

例えば、家族などから「しっかりしなさい」「貴方はできるのよ」「諦めちゃだめ」などと強く期待されている場合などです。

私の場合は、子供の頃、芸術家だった母親から、自分があまり関心がなかった領域(芸術的な領域)まで、期待されて完璧を求められているようで、とても嫌だったのですが、やはりそれに応えようと頑張ってしまう自分があります。

実際、ほとんど人は、何かしら幼少期における周囲からの期待に応えようとして、努力し、成長して自我が確立されてきたと思います。

自我が確立する中で、「自分は完璧だ」というある意味での「錯覚」が自分の支えとなります。

ただし、実際には、ここまでに見たように、壁にぶち当たる中で、自分の弱い部分「諦めて他人に頼ろうとする欲求」が起こります。完璧であろうとする自分は、その欲求を抑圧します。この錯覚が強く働きすぎると、「弱い自分を抑圧する」「弱い自分は見たくない」「弱い自分は存在しない」という、あたかも自分が完璧であるような意識になります。

ところが、他者との関わりの中で「安易に他人に頼る」行動をみると、なぜか「苛立ち」「腹立たしい」「怒り」「憤り」などの気持ちが発生します。

それは、自分が、抑圧していた「他人に頼りたい欲求」が他者は許されているように感じて「苛立ち」を感じてしまいます。

この一連の心の働きを心理学では「シャドー」と呼びます。

つまり、一人で問題を解決する能力(Growth(S))が強くなればなるほど、完璧な自分が錯覚され、「他人に頼る」という能力(Growth(W):弱み(Weakness)を表すため、「W」で表しています)が失われていきます。

その結果として、一人で問題を解決するしかないという自己期待に追い込みがかかるわけです。

はたから見ても、辛いやつですね。。

ただ、挫折を味わったり、自分の限界を感じた事がある人というのは、こういった悪循環に陥っていた可能性があります。

多くの場合は、自分の弱さを思い知り、他者との関わりの中で、無様な姿を見せながらも、もがき苦しむ中で、ある時期に一皮むけて変容するという事が起きます。

この先の見えない暗闇の中で、もがき苦しむ事は一定必要だと思いますが、そこに一本の光を照らし、必要なタイミングで暗闇を抜けるためのガイドとして、私は、組織の中で学習可能なプロセスを定義したいと考えます。

次回(その3)は、そのプロセスを整理します。

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