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店員と人力車との違い

子どもにとってのコンビニ

「コンビニは機械的な場所だから」

という言葉を子どもから聞いて驚いた。

子どもの体験としては、
レジにいる人には感情がないように見えるらしい。
だから機械みたいということだった。

親が子どもの頃は駄菓子屋があり、
何かを買う時には、「おばちゃん、これちょうだい」と言う。
おばあちゃんとのやり取りは、対人スキルを磨く機会になっていた。
楽しく話をしていると、「もう1回くじをひいていいよ」
と言ってくれることもあった。温かかった。

今は、このようなやりとりが発生する店が少ない。
よく行く店の店員は、
カゴを置くと、無言でバーコードを通し、
「お支払いはパネルで」と言い、
支払ってレシートが出るくらいで、すぐに「次の人どうぞ」と言う。
機械的な接客のお店だった。

お店にもよるし、出会う店員さんにもよるけれど、
子どもが使うお店では、いつも同じだった。
だから店員さんと会話するお店を知らない。
子どもからの発言で、ハッとさせられた。

そんな世の中を過ごしている子にとって、
レジが機械化されることに抵抗は全く無いらしい。
それが良いのか、悪いのかさえ私にはわからなかった。
これからの将来は未知の領域のように感じた。

人力車の世界との出会い

一方で、人力車に乗ると、本当によく話す。
人力車をひくお仕事をしている俥夫(しゃふ)の方が、
お話を上手に展開してくれる。本当に見事だと思った。

それを体験した出会いは、
子どもが学校のことで悩み、段々と表情が暗くなり、
とうとう部屋に引きこもりになった時だった。

ー無表情になっていた頃

その頃の子どもは、感情を押し殺したような無表情になっていた。
原因は、学校が合わないこと。
意見を言うと、同級生から「あいつ生意気」と言われ、
理不尽なことがあった時に「これって間違っているよね」と言うと、
先生から「そんな言い方はないでしょ」と言われた。
学校カウンセラーに相談しようと、意を決して
「お母さん、面談の申込みポストに紙を入れてくれる?」と言ったけれど、
面談当日に部屋の前に立っていたのは校長だった。
そして、校長から「面談受けるより担任と話したほうがいいですよ」
と言われ、逃げ場がなくなったことだった。
この一連の出来事で、子どもの目から光がなくなった。

この状況をどう打開するのか、
全く話をしなくなった子どもに何をしてあげられるのか、
私も暗闇に包まれた。

ー心を開いた人力車との出会い

そんな時、ようやく部屋の外に出てもいいよという声が聞こえた。
だったら、部屋の外、家の外ではなくて、
この地域の外へ行こう!と京都へ旅行に行った。

見たことがない風景に、キョロキョロとしながら
目に止まったのは、人力車。
何をするものかは想像できたらしいけれど、
乗ってみたいと思ったらしい。
乗ってみると、俥夫のお兄さんが声をかけてくれた。

最初は、相槌をうつ程度だったのが、
お兄さんは、本当にお話が上手で引き込まれていった。
そのうち、お兄さんに質問をするまで会話がはずみ、
「楽しかった!」と言い、車を降りた。
料金は決して安くはないけれど、
私にとっては、とてつもなく大きなプレゼントをもらった気がした。

世の中には温かい人がいる

このたった1回の出来事が
子どもの世界を変えた。
積極的に旅行をしたいと言い、
まだ見たことがない世界を見たいという気持ちにさせた。

そして、大人と話すことを怖がらず、
自分から話しかけられるようになっていった。

地域や学校の外の世界を見て、
人の温かさに触れたことで、

・話を聞いてくれる大人がいる
・相談にのってくれる大人がいる
・目指す大人もいる

ことに気がついた。

社会にはいろいろな人がいる

そして、子どもの中では、
大人は、押し付ける人ばかりではないことを知ったと同時に、
子どもにも、いろいろなタイプがいるんだということを知った。
世の中を客観的に見られる視点を得られた。

その結果、地味に嫌がらせをする同級生や、
自分の欲求ばかりを通そうとする同級生と
しがみつき、努力して付き合っていくのではなく、
関係を断ち切って、さよならした。

いやな思いをして生きていくより、
自分と合う人をみつけて、つきあっていくようになり、
どんどん明るくなった。