高校サッカーのロングスロー論争について思う事
先に予防線を張りたいが、筆者はサッカーのプレーは中学まで、そこからは海外サッカーを見たり代表戦を見る程度の知識しかない。
その上実際根拠に基づいたデータや言質もない。
故に深いことは対して語れないが、「下手くそのサッカー好き」の考えの一つとして受け入れてもらえると嬉しい。
さて、タイトルの通り近年高校サッカーでは「ロングスローからの得点」が取り沙汰されて久しい。
というのも最近の高校年代は科学的アプローチに基づいたトレーニングでフィジカルを効率的に強化できるようになり、三年間鍛え上げればロングスローを投げられる選手が増えてフリーキックやコーナーキックに次ぐ第三のセットプレーとしてロングスローを武器に出来るチームが増えたからだ。
そしてセットプレーの重要さは言うまでもなく高い。
プロアマ関係なくFK・CKは間違いなくゴールチャンスであるし、本来はバイタルエリアでファウルをもらうか攻め込んで攻め込んで相手にボールを出させることで得られるビッグチャンスが、バイタルエリアでボールが出るだけで疑似セットプレーとして使えるのだから、ロングスローを有効な武器として認めて使うチームはそれは多いし、実際使うだろう。
「ロングスローによる得点の多発」についても多くのチームがロングスローを使い、ロングスロー自体が発生しやすいプレーならそれはデータ的にも印象的にも多いように見えるのは至極当然のことだと思う。
ではなぜロングスローがこうも論争を起こすのか、否定派の意見としては
『サッカーは蹴る競技なんだから競技の魅力が薄れる』
『プロでは有効でないプレーを育成期間である高校年代で重要視するのはどうかと思う』
『どこのチームも同じような得点シーンでつまらない』
『育成の、しかも部活動サッカーで得点の追求にこだわった勝利至上主義的な教育をするのはどうなのか』
ざっくりこのような感じではないだろうか。
言わんとしていることは分かる。
まず一つ目の『サッカーは蹴る競技なんだから競技の魅力が薄れる』
例えば今後プロで本格的にロングスローが流行って研究されて、少し前の「試合の流れを変えるカリスマフリーキッカー」みたいなポジションで野球のピッチャーのような重厚な下半身とムッキムキに鍛え上げた上半身を持ついかにも鈍重そうなプレーヤーがどや顔で出てきて、ハーフウェイラインを越えたくらいの位置からダイナミックな投擲!ボールは唸りをあげてペナルティエリアに飛び込み、待ち構えていたFWの頭に当たってゴーール!!やったぜ!!!となったらさすがに「いやいや、それはないやろ……。」と思ってしまうことだろう。
だが例えばだ。ロングスローを受ける選手が往年のイブラヒモヴィッチやロナウジーニョ、今でいえばレヴァンドフスキのようなスキルがあって身体能力の高い選手だったら?
肩で、膝で、ヒールで、アウトサイドで、ワンタッチ目の閃きで、吸い付くようなトラップで、後ろに張り付いた屈強なDFをあっさりかわしてゴールに繋げたら?
果たしてそれはサッカーの魅力を損なっていると言えるだろうか。
セットプレーは一瞬の駆け引きがモノを言う。駆け引きに勝つための閃きやジャイアントキリングは間違いなくサッカーの魅力ではないだろうか。
また、そのような活躍ができる選手を作る土壌が出来上がっていると考えれば、実は悪いことではないのではないだろうか。
次に『どこのチームも同じような得点シーンでつまらない』だが
これについては現在は仕方ないというしかないだろう。
ロングスローの有用性は先ほど述べたわけで、セットプレーは効率よく点をもぎ取れる手段。また高校選手権は試合間隔が短く負けたら終わりのトーナメント戦。決まった得点パターンがあれば勝ちやすく疲れにくい。
この有効性を多くのチームが認め、使用した結果がロングスローの多発に繋がった。
ではこれをルール的に制限すべきなのか。
自分はこれをナンセンスだと思う。
戦術に対しては戦術で対抗するのがゲームというものではないだろうか。
強い戦術があるのに使わないのは愚かだし、強い戦術があるのを知っていながら対策を立てないのはもっと愚かだ。
おそらく次の選手権はセットプレー、とりわけロングスロー対策がより露骨になるだろう。
大型のDFを置き、中盤の底に人数を割いて早いプレッシャーでボールホルダーを囲みボールがラインを割る前に奪いきる。
正に今年100回大会優勝の青森山田だ。
そういう青森山田のようにフィジカルを鍛えてプレス強度を高めるトレンドがくるだろうし、そうなるとフィジカルコンタクトが増えてFKも増えてくる。そうなれば今度は高精度なフリーキッカーが全国に名乗りを上げ、それに伴ってFKを取れるようにゴール前で翻弄するドリブラーも出てくるはずだ。その頃には様々な得点シーンをお目にかかれるだろう。
結局は大きな全体の流れの一つに過ぎない。
だから試合単位・大会単位ではなくもっと広い単位で見て欲しい。なんなら毎年選手権を見て欲しい。そうすればもっと細かいディティールが見えてきてサッカーを面白いと思えるかもしれない。
そういう大局観を持った目の肥えたサッカー好きが日本には必要なのだ。
最後の2点
『プロでは有効でないプレーを育成期間である高校年代で重要視するのはどうかと思う』
『育成の、しかも部活動サッカーで得点の追求にこだわった勝利至上主義的な教育をするのはどうなのか』
この2点だが、これは選手権というより部活動そのもののあり方を問われていると思う。
ロングスローが重要になってしまうのは先ほど述べた通り。そしてそのトレンドは変遷していくことも。
教育の云々をいうなら
「ならもっとメディアも見る人間もクラブユースの大会を取り上げてそっちを盛り上げろよ。」
身もふたもないがそう思ってしまう。
クラブユースの熱が上って注目がそっちに向けば自然的に部活動サッカーは穏やかになるはずなのだ。
選手権が滅茶苦茶注目されて、勝てば学校の評判がよくなって入学人数が増えれば金が生まれるようになる。そのために勝利を目指し、勝てる環境を整えていく。そうやって勝つことで得た資金でさらに良い環境と有望な選手を引き込んで勝てるチームを作る。
近年の高校サッカーに私立高校が増えたのはそういった背景がある。
またそういった生徒は普通科などと異なり部活動中心のカリキュラムで学校生活を送る場合もあり、良くも悪くもユース顔負けのプロ養成機関と化しているのは否めない。
しかし「勝利を目指す」という観点で見ればこれら取り組みはむしろ正解だ。何しろ勝つための努力を個人だけでなく学校全体で行っているのだから。
そこに不健全さを感じるとすればもう部活動サッカーからユースサッカーに注目度をずらすしか方法はない。
部活動に何か神聖さを感じているのなら大学のサークルサッカーや社会人サッカーでも見れば良い。気の合う仲間と本当にサッカーが好きでプレーする理想の部活動の在り方が見れるだろう。
もちろん公立高校と私立高校の資金面・育成面の格差は問題の一つとしてあげられる。その格差も今後どんどん広がっていくだろう。
だがそれは「本人の努力だけでは如何ともし難いことが世の中にはある」ということの証明に外ならない。
より良い環境を手に入れるためには実力・運・金が必要なのだ。
そこから目を背けて「頑張れば報われる」という理想の押し付けが最も悪質ではないだろうか。
というか頑張って色々試行錯誤してチームの総合力で負けていてもワンチャンス勝つ方法としてロングスローにたどり着いていたら、どうするのか。
ロングスローはサッカーじゃないからやめて金のない公立高校は金のある私立に勝つことを諦めろというのか、どうせ部活動サッカーなんて趣味の延長なんだからそこまでこだわる意味はないと一笑に付すのか。
感情で否定することは何よりも簡単だ。
だが彼ら選手は大人よりももっとずっと貴重な青春時代をかけて、大人よりずっと短い人生経験で舞台に立っている。
だから好悪で語るのではなく、舞台に立ったこと、そこで必死で戦っていることを素直に称えたいものだ。
なので自分が言いたいのは、「ロングスローなんてサッカーの1面でしかないんだから、その前に選手の頑張りを純粋に応援しようぜ」
この一言に尽きる。
~終わりに~
思ったよりエキサイトしてしまったことと筆が乗り過ぎてしまったことを反省してます。
データも何もなく言いたいことをダラダラ書き綴ってるだけの駄文でしたが、最後まで読んでいただけていると身に余る幸いです。
ここ10年程選手権をみているサッカー好きの人間の一人はこんなことを思っているんだぞ。という熱い思いで一気に書き上げました。だからなんだよって感じですが。
サッカーの戦術は多種多様なところが魅力の一つだとも思いますので、ロングスローより俺の考えた戦術の方がすごいぜ!聞いてくれよ!とかのほうが面白いかな、と個人的には思います。
何かを否定するなら代案出せってヤツですね。
そういう面白い戦術があったら教えてくれるとすごくうれしいです。
なんかこれ以上書いてると無限に書いてしまいそうなのでこの辺で終わろうと思います。
初noteはサッカーのこんな感じの話になりましたが、何分色々触ってはいっちょ前に思考したりしてるので何か書きたい熱が湧いてきた頃に適当なな話題でお話できたらと思います。
また機会がありましたら、是非。
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