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矢野絢子さんのライブ 「スナック絢子〜自由は土佐の山間より〜」に行ってきました②

いよいよ開演の時間となり、店員さんが照明を暗くしました。
矢野さんはピアノの前に座り、セットされているマイクでご挨拶されました。
一番前に座ったので、すごく近い距離です。
お互いが手を伸ばせば触れられそうな距離に矢野さんがいらっしゃって、素晴らしい演奏を見せてくれます。

1曲目は『スナック絢子のテーマ』という曲でした。
今回の"スナック絢子"というライブは、矢野さんがスナックのママに扮して音楽でお客さんをもてなすという恒例のライブのようで、テーマソングもあるのでした。
これがもうとても良い曲なのです。

"大人のくせに 男のくせに 泣けるなんて 素敵じゃないか"
という歌詞にすぐに泣きそうになりながら、矢野さんのピアノの旋律と歌声を自分の体内に染み渡らせるように聴かせていただきました。
自然と身体がリズムに合わせて揺れる感覚を味わいました。

やはりライブで聴く音楽は良いですね。
家で音源で聴くのとは全然違います。
そもそも僕は好きなミュージシャンであっても音楽ライブに行くことがあまりなかったので、プロのミュージシャンがこの場で演奏して歌っていただけてるということ自体に、新鮮に感動を覚えます。
それが憧れの矢野絢子さんであれば喜びも一入なわけで。

至近距離で演奏を見られるというのは嬉しいのですが、時々目が合ってしまったり、細かい仕草の一つ一つが目について、なぜかこちらがとても恥ずかしかったりします。
でも演奏を聴くというより体感するという意識でいられたのは近い席に座れたからで、開場時間とほぼ同時に入店してきて良かったと、この時点で強く感じました。
照明で矢野さんの耳飾りが照らされて、そのシルエットが首筋に映って揺れるのが美しく幻想的でした。

1曲目が終わって大きな拍手が起こり、会場に一体感が生まれた感覚がしました。
その後も『唄の船』『坊や』『モノクロームダンス』などを歌ってくれました。
『唄の船』は前回初めて行ったライブで最初に歌ってくれた曲で、つまり生で初めて聴いた曲なので思い出深く、再度つよく感動させられました。
リクエストしてくれた方ナイス、と思いました。

『ライオンフラワー』『町の酒場』などは初めて聴く曲でした。
僕もまだまだ知らない曲はあります。
ライブに行くたびに物販でアルバムを買っていって、そのうち全部揃えられたらなと思っているのです。
『ライオンフラワー』がものすごく良かったです。
死刑囚の歌なんですけどね。
なんのアルバムに入っているのかな。

僕のリクエストした『瞳の中に』は後半に歌ってくださいました。
本当に素晴らしいのですこの曲は。
演奏時間は3分にも満たない曲ですが、その中で多幸感が溢れる曲調は見事な展開を見せて、詩的な言葉の表現は矢野さんらしく愛に満ちているのです。
歌詞だけ読んでもポエムとして素晴らしくて、それを素敵な音楽に載せて届けられる才能は非凡だと思います。

ライブ全体の終盤の盛り上がりにこの曲を組み込んでくれたようで、とても気分が高揚しました。
そこから何曲かテンション高めの曲が続いていったのでした。
そうなるとライブの終演は早いもので、ああ、もうすぐ終わってしまう、と寂しい気持ちも湧いてきました。

最後の曲を演奏し終えて、大喝采が起き、当然アンコールが起こりました。
時間はまだ大丈夫なのかと矢野さんが厨房の店員さんに確認して、大丈夫だということで一層店内は盛り上がりました。

お客さんの中に今日が誕生日の方がいるということで、アンコール曲は『Birth』というバースデーソングを演奏してくださいました。
僕も2月8日でまあまあ誕生日が近いので、これは僕にも歌ってくれているのだ、と勝手に思い込んで聴き入りました。
とても幸せな時間でした。

終演して店内が明るくなってからも矢野さんはその場にいらっしゃって、アルバムの販売とお客さん一人ひとりへの対応をしてくださるようでした。
僕は最新のアルバム『彼女について』を買おうと決めていました。
去年の春に発売されたアルバムで、ネットでも買えるのですが、矢野さんの手から直接購入しようと決めていたのでずっと我慢していたのでした。
やっと念願叶って購入できると思って感激しました。

ファンの方お一人お一人に丁寧に対応してくださるので、列でしばらく順番待ちをして、やっと自分の番がきて「『彼女について』をください」と伝えました。
「ありがとうね」と言って盤面にペンでサインを書いてくださいます。
一対一で向き合って会話のやりとりができていることに幸せを感じました。

「また東京に来てください」と心からの気持ちを伝えました。
「うん、また来るよ。絢子は旅の女やからね」と冗談めかして明るく返してくれました。

僕は深々とお辞儀をしてその場を離れ、鞄を持って「ムーンストンプ」から出ました。
まだ店内にご本人がいるのに、自分から出て行かなくてはいけなくて名残惜しかったです。
地下から階段を上がり、地上へ出ると冬夜の寒気が肌に刺さりました。
それが涼しくて心地よいと感じるぐらい僕の心と身体は熱を持っていました。

とても楽しい夜でした。
矢野さんの最後の言葉を信じて、次の東京でのライブを待ちたいと思います。


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