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鳥の歌があるならば

蛙の声かと思った
涼しいからか、吹き抜けの外の天井に飛び乗っていた
あかげら、と言うのだろうか
赤啄木鳥と
艷やかな青い頸の毛と、赤い胸元の毛
コッコッコ
コッキャッキャッ
代わりに近頃烏の姿が見当たらない
少し不安
我が家の庭は鳥たちの遊び場
見えるもの見えなき小さきものの
棲み家

まだ明るい夕暮れ
真っ向からぶつかって来たとんぼに
ハッとしてすぐ振り返るも掻き消えたように
いない
狐につままれたかのような
幽かな粟粒のようなざわめきが皮膚下に生まれる
黒っぽいようなとんぼだったような

水面を遠巻きに見ていると波紋が大きくなり
途端にぞわぞわと影が進軍してくる錯覚
音はないはずだが
風が向こうから吹いているので
水面の表面をさらって追い立てているのだろう
ぞわぞわぞわ
ざわざわざわ
蟹の群れか
なにか小さな水掻きのあるものか
いびつで大小のシミのような影
得体は知らないほうが遠野の話のようで好い

私は人を信じない

ふと間近に見た白鷺
先をケバだたせた白いリボンが
真珠色のラメで煌めくように束になって
腰から尻に咲いている
柔美な貴婦人
いや、舞姫だろう

いつか私の画集に
幻のスケッチはいまだ心の中に

虚しいのか
人に愛されないのは悲しく恥ずかしいことか
人を信じたくもなく
疑り深くありたい私は
夜中に気付いた赤い西の空を
確かめたいとも思わなかった
二十二日夜に近付くごとに
あっと気付いたら苺が熟んでしまったように
心の中いっぱいに、赤い熱帯夜が広がるのだ

このままで良いのかは…
常に変動がそれを許さない
変化は私を片時も安らげてはくれない

私は鳴き歌うのは下手だ
鳴き歌うのが出来ないほうが
書き謡えるからいい
私のために私が書き謡う
Strawberry   Night

寝苦しく
心地よく
枝に爪を絡ませて眠る
だから私は人よりも
鳥に惹かれる


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