「赤と青 または藍より深い青」
【踊り子号殺人事件(仮)】
幼なじみの相棒、桶川拓斗の暗示のような言葉で、いつも江戸川土我こと、ドガの日常はなぜが殺人事件へと巻き込まれてゆく
少女アリスが、ぶつぶつ呟き白うさぎが横ぎって、追いかけて行った先は鏡の国だったように・・
なぜか桶川拓斗の周辺で事件は起こることに気付いたのだ
拓斗によってもたらされる数々の不協和音
事件を呼ぶのは
わたし、変り者JKの江戸川ドガだけの問題じゃないような気がしている、今日この頃
拓斗の闇を感じつつも見たくないふりをする
だって拓斗はヤングホーリーホックの黒いダイヤモンドと言われている逸材だ
飛び散る汗の粒でさえ、女どもは飴玉のように欲しがる
ドリブルシュート一直線のスタンドプレーですら、誰もが桶川拓斗の黒い影に釘付けになる
葵の騎士団の中では高校生ながら拓斗の、勝手に隠し撮りされたブロマイドが、一番人気だと言う
シーズンオフ
はたまたそんなシーズンなのか
ドガと拓斗は、高校生最後の修学旅行へと旅立つことになる
『踊り子号』終焉を飾るレールオンその日から、ドガと拓斗は同じフィールドに立っていることを再確認したのだった
いくつもの貌を持ち、いくつもの線を走り抜ける『踊り子』
神出鬼没
鬼や悪魔の類いは不滅だとでも言うかがふさわしい
「あ~姐さん、またご一緒にあべこの唐揚げうどん、食いたいっすねぇ~。合宿に遠征におデイトに、あたしたちはなぜかいつも取手止まりの愛の逃避行。東京だったら帰れなくなった二人、手と手を取り合って・・」
上を見上げると、桶川拓斗が頭部の座席シートに両肘をついてドガを見おろしている
「なによ、拓斗。あんたあっちの車両でしょ」
「姐さんと離れると、あたしさみしいの」
「うっざ」
「やだっ!姐さんたら暗あぃ!花の修学旅行で読書ですの!?しかも、はるはあけぼの~😱あけぼのどこですの!?木枯らし舞ってません?漢字で書いて曙!なんか強そうですじゃん!なにが悲しくて枕草子なんか読んでいるのよ~。あたしという者がありながら」
「うっさいなあ~。寝る」
「ま、ま。これお飲みなされ」
差し出される紙コップ
温かいぬくもりと湯気
眼の端にすら映らないように、顔をひねってはいるものの、隣近所の女どもの視線は射たい
「は、なにこれ」
「キャラメルラテー❤️」
ふわふわ鼻に甘くてくすぐったい香り
「ヒステリーに効きます」
「うっざ」
背もたれて窓の外を見る
バカヤロー
あたしの席からじゃ海が見えないんじゃね?
きっとあたしは世間の並みのJKの恩恵から全部見放された
どうでもいい、カッコ悪いところしか見られない子なんだ
たぶん蜘蛛の糸の最後尾にしがみつくか指くわえて、ぼ~っとしてて
ぶら下がった瞬間に上から落ちてきた全亡者に押し潰された、惨めな餓鬼
それでも海はわずかな陽の光でも、きらきら輝いているはず
はるはあけぼのの・・
水戸本丸(仮)殺人事件に続く、江戸川ドガ事件ー夜明け編
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?