「たぶん、恋愛小説家」＿その好み、ついていけないかもしんない

拓人は豹柄や獅子柄が似合う

チーターやライオンよりも拓人のほうが似合う

本人も今じゃ自覚しているようだ

いわゆるアニマル柄パンツね

あたしが矯正させたのよ

まだ、マイク（モンスターのやつ）パンツは許せた

昔から思うんだけどさ

どうして女って『鬼ティちゃん』のパンツ、男にプレゼントするのが多いんだろって

どっちの趣味なんだろって疑問

あいつ、キャラクター柄好きなのよ

付き合い始めの頃だ

『ブティック・しま』で

あいつ、あたしに『ゲゲゲの憎太郎』のトレーナーを買え

そう勧めたのよ

はあ？

なんでこのあたしが

『妖幼気・・出てます』

なんてトレーナー買って着なくちゃいけないのよ

「だっさ！拓人の趣味、信じらんない！あんた何年人間やってんのよ！」

「え～。可愛いじゃん。似合うからさ～」

「やだ！ぜぇったいやだ！」

あたしは断固着ない

着ないけど

アヒル？北京ダック？アホウドリ？
そのトレーナーなに
なんのブランドのキャラクターよ
なにを主張してんの
拓人よ、あんたいったいどっから調達してくるわけ？
気になってしまうじゃないのよ

トレーナー

確かに１枚被るだけでさまになる

楽チン

ジャケットと合わせれば、まあまあよそ行きになる

拓人、別にあんたはまだ

キャラクターのトレーナー着てても、似合っているからいい

しかも上下デニムでも

びっくりして見惚れるくらい似合う

きっとあたしがあんたの横で似合っていない

拓人と向かい合って
両手を後ろについて
エッチする

拓人は恥ずかしそうに
嬉しそうに聞く

「どーしたのさ？」

どーもしない

ただ気が向いただけ

あたしはじっとその部分を見た

サイズ

センス

こなれ感

フィッティング

こだわり

なにかがひっかかる

男と女って気が合えば相性はいいってことなの？

小さなことは気にしないのが蜜月の秘訣？

拓人はあたしが拓人好みの服を着なくても
きっと気にはしない
嫌いになんかならない

裸のあたしをありのまま

無防備なあたしを待っててくれる

あたしは拓人の視線を避けるように

後ろにのけぞって顔を見せなかった